ゲームを見るならTwitchより YouTube 。米国の10代に見るメディア習慣
最新の報告書によれば、米国の10代はゲームコンテンツを視聴するとき、TwitchなどよりYouTubeを好むようだ。この調査結果は、YouTubeが子どものプライバシー保護やある種のインベントリの分析、透明性に関する問題で脚光を浴びているタイミングで発表された。
プリサイスTV(Precise TV)とジラフ・インサイツ(Giraffe Insights)が動画の消費習慣とゲームおよびデジタルプラットフォームの嗜好(しこう)を調査した報告書によれば、Z世代の10代が最も好きなプラットフォームはYouTubeで、TikTok、Facebook、インスタグラム、Snapchatと続く。
調査の対象となったのは、13〜17歳のティーンエイジャーとその両親を含む米国の家族1000組だ。さらに、YouTubeのゲームコンテンツはリーチ、広告想起、購入を促進する上で最も効果的だと判明した。
意識されない最大のプラットフォーム
R/GAのバイスプレジデント兼メディアおよびコネクション担当エグゼクティブディレクター、アンドリュー・ラフォンド氏は、YouTubeが若いオーディエンスを引きつけている一方で、メタ(Meta)のコア層はFacebookで高齢化していると述べている。
「YouTubeがゲーマーにこれほどリーチしているのは驚くべきことではない。人々が意識していない最大のプラットフォームのひとつだ」とラフォンド氏は話す。「また、メディアバイイングの観点からも、YouTubeは強力なプラットフォームのひとつだ。フルファネルの目的に対応し、柔軟なクリエイティブの選択肢を用意している」。
YouTubeはTwitchに対抗するため、2015年にスタンドアローンのゲームアプリを公開したが、2019年に提供を終了し、ゲームアプリは再び動画プラットフォームの一部になった。さらに、近年はライブストリーミングや短編動画にも投資し、TikTokやインスタグラムと競い合っている。
ゲームの影響と消費習慣
YouTubeは現在、10代の半数近くが新しいビデオゲームについて学んでいる場所だ。ビデオゲームの情報を友人から入手している10代は39%、Facebookで情報を得ている10代は32%だった。さらに、報告書によれば、他のゲーマーの動画を視聴している10代は、Facebookを使っている人が40%、Twitchが34%に対し、YouTubeを使っている人は約2倍(76%)に達する。
プリサイスTVによれば、10代の3分の2が少なくとも週1回はビデオゲームをプレイしており、10代男性の半数近くが毎日プレイしている。10代が最もプレイしているビデオゲームはマインクラフト(Minecraft)、コール・オブ・デューティ(Call of Duty)などのメジャー作品とロブロックス(Roblox)やフォートナイト(Fortnite)だ。ゲームコンテンツの視聴には、そこに登場する人物も関わっており、ミスタービースト、ピューディパイ、デュード・パーフェクト、ジェイク・ポールが10代にとって最大のゲームインフルエンサーとなっている。
独立系メディアエージェンシー、メディア・プラス(Media+)のバイスプレジデント、カトリーナ・シュトロー氏も、YouTubeがゲームを支配していることにあまり驚いておらず、YouTubeは「TikTok、Twitch、Netflixの融合」に成功していると考えている。シュトロー氏はさらに、YouTubeは動画の検索エンジンになり、今やテキストベースの検索結果に勝っていると指摘する。
ただし、シュトロー氏は、エージェンシーは今すぐTwitchよりYouTubeを優先すべきだとは考えていない。「両方が役割を持つメディアプランが最も理にかなっていると思う」とシュトロー氏は説明する。「10代のゲーマーにより多くリーチしているのはYouTubeだが、TwitchはYouTubeのユーザー層に比べて、若いユーザーの割合がはるかに高い」。
データと収益化
PMGのクライアント戦略担当ディレクター、ティン・ジェン氏は、投資の観点から、YouTubeは収益化の方法がより合理的で、ゲーム関連のクリエイターを引きつけていると分析する。
「ブランドがTwitchでアクティベーションしたければ、コンテクストを強く意識することを常に求められる。一方、YouTubeはより大きなコンテンツエコシステムであり、ブランドと作品の収益化を目指すコンテンツクリエイターにとって、より多くの広告機会がある」。
また、YouTubeは広告主にとって、Googleのユーザーデータをターゲティングに活用できるという利点もある。これは、他のプラットフォームではできないことだ。電通傘下のミュートシックス(MuteSix)で有料検索担当バイスプレジデントを務めるエルマー・アガ氏は、「TwitchよりYouTubeの方が10代のゲーマーにリーチできるため、広告主はGoogleの膨大なファーストパーティデータにアクセスし、ターゲティングに活用できる。また、Googleのエコシステム内では、AIや機械学習によるターゲティング最適化にも使用されている」と説明する。
広告想起とリーチ
調査結果によれば、YouTubeは他のプラットフォームに比べて、ゲーマーの広告のリーチが2倍に達している。また、プリサイスTVによれば、YouTubeはTikTokに比べて、10代が新しいビデオゲームの広告を覚えている確率が2倍高い。
10代の10人に6人は、YouTubeの広告をスキップするのではなく見ようと考える。また、45%がYouTubeで見た広告を覚えている。Facebookは28%、TikTokは23%だった。
ノバスメディア(Novus Media)のバイスプレジデント兼デジタル責任者、ポール・ディジャーナット氏は、YouTubeが好まれるのは、保護者のあいだで人気があるプラットフォームだからかもしれないと補足する。だからこそ、ゲームのストリーミングと動画を1カ所で楽しむ場所として好まれているのだろう。
「YouTubeは単純に、10代のゲーマーが利用しやすい場所になっている」とディジャーナット氏は話す。「保護者はYouTubeをよく理解しており、一般的に、受け入れられやすくなっている」。
報告書によれば、保護者はエンゲージメントを左右する存在になっている。60%の保護者が少なくとも月1度、10代の子どもにビデオゲームを買っているためだ。また、10代の10人に8人が毎月の小遣い(平均45ドル)をもらっており、37%がビデオゲーム、36%が飲食に使うと回答している。保護者によくねだるブランドはプレイステーション(PlayStation)、ナイキ(Nike)、マクドナルド(McDonald’s)、アディダス(Adidas)だった。
欠点と課題
YouTubeはより多くのオーディエンスにリーチできるかもしれないが、Twitchのようなプラットフォームはよりニッチでぴったり合うオーディエンスを提供してくれるという意見もある。クリスピン・ポーター・ボガスキー(Crispin Porter Bogusky)のデリバリー担当マネージングディレクター、フレディー・ダバギ氏は次のように説明する。「Twitchはもっとニッチで、YouTubeもプログラマティック経由のオンライン動画と異なり、一貫性のある広告体験を約束している。しかし、私たちがTwitchで成功するのは、クリエイティブやメッセージをゲームコミュニティーと融合させ、プラットフォームのニッチなオーディエンスを深く理解できたときだ」
ダバギ氏によれば、Twitchはプラットフォームのクリエイターを活用し、eスポーツとの統合やディスプレイ広告に投資する手段を用意しており、YouTubeのプレロールや動画ではない代替的なメディアになっているという。
プライバシー保護に関して言えば、どちらのプラットフォームも最終的に、10代に安全な広告を見せるという問題にぶつかる。どちらのアプリもコンテンツや広告の機会は多彩だが、業界はコンプライアンスを確保するため、クリーンルームの利用を模索し続けるべきだという声もある。
コンサルティング企業スラローム(Slalom)のメディア、エージェンシーサービス担当グローバルディレクターであるニック・ミラー氏は、「これは広告主にとって新しい話ではないが、この2つのプラットフォームに10代のゲーマーがいることを考えると、私たちは広告業界のプロとして、その重要性を再確認すべきだと思う」と話す。
YouTubeもTwitchも潤沢な資金を持つ巨大企業(前者はGoogle、後者はAmazon)の傘下にあるため、データクリーンルームを使うことに問題はないはずだとミラー氏は指摘する。「プラットフォームのリーチが広告主にもたらすものは大きい」とミラー氏は言う。「メディア投資を成功に導くのは、効果的にターゲティング、アクティベーション、測定し、メディアバイイングを最適化する能力なのだ」。
[原文:Teens prefer YouTube over Twitch for gaming despite the platform’s recent privacy challenges in the spotlight]
Antoinette Siu(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)