「優しすぎてプロとしてやっていけるのか…」浦和移籍、酒井宏樹の若手当時を知る柏レジェンドの記憶
オーバーエイジ枠で出場したU-24日本代表の国際親善試合でのプレー同様、約30分の会見から伝わったのは「誠実さ」「たくましさ」、そして「自分への期待の高さと厳しさ」だった。
実際はどうなのか? 長く酒井を知る記者は「人見知りでおとなしく、とにかく優しい」と人柄を語った。
「基本、メッチャ良いやつ。優しすぎてプロとしてやっていけるのか、心配になったほど良いヤツ」
そう話すのが柏レイソルのレジェンドで、先輩・北嶋秀朗だ。
1997年、柏でプロキャリアをスタートした北嶋は、2003年に清水エスパルスへ移籍し、06年柏に復帰。12年5月、ロアッソ熊本に移籍し、翌13年に現役引退。その後、熊本、アルビレックス新潟で指導者経験を積み、昨年から大宮アルディージャのトップチームコーチに。目下、就任したばかりの霜田正浩監督のもと、チームの巻き返しを担っている。
北嶋と酒井は09年から12年の4シーズン、ともに戦った。その北嶋が酒井を意識し始めたのは10年。この年、ネルシーニョ監督のもと、柏がJ2を戦ったシーズンだった。
当時の酒井について北嶋は「練習中、ミスすると謝ってばかりだった」と話す一方、「戦える部分はものすごくあった」と振り返る。
こんなエピソードがある。
練習中、酒井が北嶋に対し、激しく削りにいった。危ないと思った北嶋は「おい!!」と叫んだが、酒井は「いまのはしょうがないっしょ」とまったく意に介さなかった。
これに今度は北嶋が酒井に激しく削りにいった。これに「おい!!」と思わず叫んだ酒井に、北嶋は「いまのはしょうがないっしょ」と、仕返しとばかりに言い返したそうだ。
練習後、お互いに謝り、仲良く肩を組んでピッチを出たが、年代から推察するに酒井は20歳、北嶋は32歳。キャリアに関係ない、この意地の張り合いは、試合以上に激しさを求めるネルシーニョ監督のトレーニングによるもの。これが功を奏し、2010年にJ2優勝。その余勢を駆って翌11年にJ1優勝を成し遂げた。
北嶋は「すべての歯車が噛み合って、うまくいっていた」と当時を振り返る。
酒井がブレイクしたのは11年。デビュー当時はセンターバックだったが、右サイドバックで起用されると本来の能力が一気に開花。この年、リーグ27試合に出場した。また酒井の特長であるクロスから北嶋は得点を挙げている。
「クロスは完璧で注文通り。ゴール前のスペースに入れば、そのまま額に当たるくらい。ホントに当てるだけだった」と北嶋。
正確無比のクロスとともに、出し手と受け手の相性の良さが伝わる。
そしてゴールを決めた北嶋とアシストした酒井はゴールシーンの映像に一緒に映ることを楽しみにしていたそうだ。
冒頭で紹介した「優しすぎてプロとしてやっていけるのか、心配になったほど良いヤツ」
これには続きがある。
「でも、いまはそれらを超越したところにいる」
そうさせたのは入団会見で感じた酒井の「誠実さ」「たくましさ」であり「自分への期待の高さと厳しさ」なのかもしれない。
いま北嶋がいる大宮。酒井のいる浦和はともにさいたま市にあるクラブ。フランス・マルセイユに比べ、目と鼻の先の近さになった。
「まだ挨拶がないなぁって、伝えておいてください」と笑う北嶋。
弟分・酒井宏樹の日本での活躍を楽しみにしている。
取材・文●佐藤亮太(レッズプレス!!)
