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マツダのミニバン、なぜなくなった?

text:Kenji Momota(桃田健史)editor:Taro Ueno(上野太朗)

2020年末時点で、マツダにミニバンがない。

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マツダのミニバンといえば、2016年までMPVがあったが、その後継の噂が広島方面から聞こえてくることは、これまでなかった。


マツダMPV

これまで筆者は、様々な機会にマツダ幹部数人に「なぜ、マツダにミニバンがなくなったのか?」とストレートに聞いてきた。

回答は、人によってニュアンスの違いは多少あったが、言いたいとすることはほぼ同じ。

「ミニバンは競争が激しく、マツダとして戦く体力がない」というものだった。

結果的に、ミニバンのように使える3列シートSUVとして「CX-8」が登場したが、マツダラインナップでは最上級に位置するモデルであり、庶民にとっては高値の華に感じてしまう。

そもそもMPVは「マルチ・パーパス・ヴィークル(多目的車)」であり、ワンボックスカーとかミニバンというカテゴリーとして生まれたモデルではない。

それが、2000年代以降に日本でミニバンが登録車の主力カテゴリーとなり、さらに北米市場を並行して考えた結果として、スライドドア式のミニバンに進化した。

さらに3代目になると、上級な車格に、CX-7などで採用していた2.3L直4ターボというスポーティなアレンジとなった。

筆者個人としては、とても気に入っていたクルマだったが、マツダ第6世代という新戦略のなかで、MPVは消滅する……。

マツダMPV、延命措置が施された

3代目MPVの2016年ディスコン(生産中止)というのは、マツダ商品企画を俯瞰すると、かなり遅い印象がある。

本来はその4年前、2012年にその使命を終えていても不思議ではない。


マツダCX-5(2012年)    マツダ

理由はマツダ第6世代におけるミスマッチだ。

この第6世代という表現はマツダ社内用語であり、それがメディアを通じて一般ユーザーにも広まった。

第5世代までは、ラインナップ全体の世代という認識がマツダ社内でも薄かった。

それぞれのカテゴリーで、個車としてモデルが世の中のトレンドを追いかけるような形となり、マツダブランド全体としての統一感に欠けていた。

その結果、リセールバリュー(下取り価格)の評価を下げ、それが新車で大幅値下げを強いられるという、いわゆるマツダ地獄に陥った。

こうした負の連鎖を断ち切るため、第6世代という世代交代を掲げた。

具体的な戦略としては、魂動デザイン、スカイアクティブ・パワートレイン技術、さらに製造部門の大変革を三本柱とした。

マツダ史上、最も大きな事業転換といえるこの2012年、CX-5から始まった第6世代。そのタイミング、または1〜2年後にMPVがフェードアウトしてもおかしくはなかったはずだ。

だが、第6世代ラインナップ構想が確定した時点でMPV後継のミニバン導入は描かれておらず、販売店からの要望もあり、MPVは2016年まで延命する。

ディーゼルミニバンがあれば売れる

販売店からの要望というのは、単に「MPVを止めないで欲しい」ではなく、「スカイアクティブ技術を搭載したミニバンを造って欲しい」という気持ちが強かった。

実際、全国各地のマツダ販売店関係者と直接話をすると「三菱デリカD:5があれだけの定着した人気があるのだから、スカイアクティブD搭載でスライドドア式ミニバンがあれば、我々として絶対に売る自信がある」という声を各地で聞いた。


三菱デリカD:5    三菱

だが、広島本社では前述のように、トヨタ、日産、ホンダなど主力メーカー・販売店のミニバン開発力と販売力と真っ向勝負するのは、マツダとして得策ではない、という考えが優先した。

また、商用的な発想以外で乗用ミニバンは事実上、日本専用車であり、マツダの世界戦略の中では合致しないという考えも強かったように思う。

結局、MPVがけん引してきたマツダミニバンは、マツダ第7世代の幕開けとなった2017年の前に消滅し、その後の商品企画案から姿を消したように思えた。

筆者としても、すっかりMPV後継のことが頭から離れていたのだが……。

あるきっかけで
「これならば、いけるのでは?いまこそ、MPV後継が欲しい」と思う瞬間に出会った。

それはCX-5の商品改良である。

マツダ第8世代への「淡い期待」

2020年末、マツダR&D横浜(横浜市神奈川区)を起点として行われた、CX-5の商品改良車の試乗会。

用意されたのは、全車がスカイアクティブD。最高出力は190psから200psへ上がり、またトルク特性もより扱いやすい方向となった。


マツダCX-5(2020年)。クルマ全体の一体感が一気に増していると筆者。    上野和秀

アクセルペダルのセッティングなど、人中心の細かい変更が、クルマ全体の動きを大きく変えたことに驚いた。

とにかく、クルマ全体の一体感が一気に増しているのだ。

それを、新旧AWD車を乗り比べて、極めて強く感じた。そして思った。この乗り味/走り味ならば「多人数乗車のAWDミニバンにベストマッチするのでは?」と……。

ただし、現実的には現行プラットフォームでの採用は不可能だろう。

なぜならば、マツダがラージ商品群と呼ぶマツダ6、CX-5/CX-8は2022年以降にプラットフォームが刷新されるからだ。

現行のFFから、FRになることが確実視されている。

駆動方式は変わっても、それまでに積み上げていくマツダの開発技術力によって、FRで走行性能が高いミニバン、いやMPVが生まれてくるはずだ。

そうした次世代ラージ商品群、つまりマツダ第8世代ラインナップの中で、スカイアクティブDのみならず、導入が決定していることをマツダ幹部も決算会見で認めたPHEV(プラグインハイブリッド車)を搭載する次世代MPVの登場を、大いに期待したい。