首位と3打差の3位につけた渋野日向子【写真:荒川祐史】

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重圧かかる女王争い中も普段通り「宮崎牛食べた」、世界が駄菓子に注目した全英彷彿

 女子ゴルフのツアー最終戦・LPGAツアー選手権リコー杯は29日、宮崎CC(6535ヤード、パー72)で第2日が行われ、首位と3打差の3位で出た賞金ランク3位の渋野日向子(RSK山陽放送)は3バーディー、1ボギーの4アンダーで3打差の3位で終えた。10位で出た賞金ランクトップの鈴木愛(セールスフォース)、賞金2位の申ジエ(韓国)は1オーバーで17位。7アンダーのテレサ・ルー(台湾)が首位をキープ。重圧のかかる賞金女王争いだが、全英覇者の頭には“ご当地名物”があった。

 前週に国内4勝目を挙げた21歳は賞金レースで逆転すれば、最年少賞金女王となる。2日目を終え「(大会が)始まる前にも言っていたけど、一日2アンダーくらいかなと言っていて本当に2アンダーなので、なんとか読み通りなのかなって思います」と振り返った。プレッシャーのかかる最終戦。出だしから集中力を試されるラウンドだった。

 澄みきった青空のように、晴れやかなスマイルでスタートした。1番パー4の第1打はドライバーでフェアウェー左へ。歩き出すと「渋野、頑張れー!」「しぶこちゃん、かわいいよー!」とコースのそこかしこから声援を受け、キョロキョロと左右を向いて笑顔で会釈を繰り返した。

 第2打はグリーン手前のエッジに置き、ピンまで10メートル以上を残した。第3打はウェッジでアプローチしたが、カップまで5メートル届かないピンチ。それでも、パーパットをねじ込んだ。出だしのボギーを免れたナイスパー。ラウンド後の会見でパーパットの距離を問われ「5メートルくらいでしたね」と、さらりと振り返った直後だ。

「あぁ、そういえばピンチでしたね(笑)。そうでした、そうでした(笑)」

 約5時間前の1番は“はるか昔”。それだけ目の前のプレーに集中してきた証拠だろう。4番をボギーとしたが、その後はショットが乱れても好アプローチなどでパーを並べた。迎えたフェアウェーからの6番パー4第2打。アドレスに入ったところでギャラリーからシャッター音の連写が聞こえた。素振りから仕切り直すと、ピン手前2メートルにピタリ。バーディーパットを沈めて大歓声を浴びた。

 バーディーを奪いやすいパー5。後半11、13番を残し「2つとも2オンできるので『やったろう!』って思った」と気合を入れて臨んだ。「けど、まさかの11番で4オン。『なさけねぇ』って思って。でも13番でちゃんと獲れてよかった」。11番は4オン1パット。13番は残り240ヤードをスプーンで強振し、狙い通りの2オン2パットでバーディー。14番パー4は残り133ヤードから8アイアンで7メートルにつけて伸ばした。

ライバルは気にしない「ノンプレッシャーでするのが私にはいいのかな」

 気持ちの起伏もあったが、高い集中力でカバー。鈴木、申との女王争いでも「人のことを気にするより自分のことが大事なので、あまり気にしてはなかったです」と淡々と語る。そんな全英女子オープンを制した21歳には、ご当地名物が“存在感”を見せていた。

 宮崎での食事について聞かれると「楽しんでます、もちろん」と口角を上げて返答。「昨日も宮崎牛、食べました」と元気いっぱいに満面の笑み。この日は11月29日だっただけに「“いい肉”の日。さっきサインを書いている時に何の日かなって思っていて。でも、今日の夜は水炊きの予定なんですよね(笑)」。すでに地鶏やチキン南蛮を食し「満喫しています。絶対に太って帰る」と報道陣を笑わせた。

 快挙を成し遂げた8月の全英女子オープンでも、優勝争いの真っただ中にも関わらず駄菓子を食べるなどリラックス。初の海外メジャーにも臆することなく、カメラ目線で笑顔を見せて世界中のハートを打ち抜いた。今大会もラウンド中にいつも通り菓子を頬張っている。全英の快挙を彷彿とさせる普段の精神状態を貫き、メンタルの強さを発揮している。

「(他人の順位は)まだあまり考えていないですよね。明日もいいゴルフでいて、いいプレーをしたら考えちゃうかもしれないですけど、ノンプレッシャーでするのが私にはいいのかなとは思うので、なるべく考えないようにします」

 優勝して鈴木が2位タイ以下となれば逆転賞金女王。単独2位でも鈴木が10位以下、申が3位以下でひっくり返すことができる。不利な状況で迎えた最終戦だが、自らの好プレーで周囲の期待を膨らませている。数十人に取り囲まれた会見場。最後の質問に答え、マイクを置いた瞬間に思わず言葉が飛び出した。

「あ〜、おなか空いたぁ」

 その場は笑いで柔らかな空気に包まれた。素顔のまま女王争いを演じている。いい意味で自由奔放なシンデレラの魔法は、最後までとけないかもしれない。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)