イラク戦の本田は、彼らしいインパクトのある働きは見せられなかったが、守備面やセットプレーでチームに貢献。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 最高の結果は得られなかったが、最悪の結果は免れた。それがイラク戦を受けての率直な感想だ。
 
 おそらくは選手も監督も同じ気持ちだろう。もちろん理想は勝点3を手にして日本に帰ってきたかったが、イラク戦の後半、日本は1点リードしていながら、ほとんどいいところを見せられなかったことを考えると、韓国のように敗戦のケース(最下位のカタール相手に2対3で敗れた)もあり得たのだから、妥当なドローと言えるだろう。
 
 日本が後半失速したのにはいろいろな理由が挙げられる。親善試合のシリア戦から香川、山口と立て続けに主力選手の負傷離脱が続いたうえ、気温35度を超える過酷な条件下でプレーを強いられた。これだけチーム・コンディションが悪ければ、苦しい戦いを強いられるのは当然だろう。
 
 イラク戦のスタメンを見ると、シリア戦での山口の1ボランチから、遠藤、井手口の2ボランチに変更した。山口が怪我をしていなければ、慣れ親しんだ1ボランチのシステムで臨んでいたのだろうが、絶対に失点したくないというハリルホジッチ監督の気持ちの表われだろう。
 
 1点リードして安心したのか、それとも構えてしまったのか。あれだけ引いて守っていれば、イラクの攻撃をゴール前で受け止めるシーンも多くなるもの。67分の失点シーンを振り返っても、ゴール前への侵入を許したのが、そもそもの発端だ。負けたくないという気持ちが裏目に出てしまったのかもしれない。
 攻撃陣のスタメンは、香川の代役として原口がトップ下を据えて、本田が右サイドに入り、久保が右サイドから左サイドへ回った。いろんな議論があると思うが、この急造布陣も機能していたとは言い難い。
 
 久しぶりにスタメン出場した本田もアグレッシブにプレーしていたが、苦しんでいるように見えた。それでも守備では最後まで貢献していたし、セットプレーから1アシストもマークした。前線でタメを作ることもできていた。最低限の仕事はこなしていたと思うけど、“本田らしい”絶対的なインパクトは残せなかった。ロスタイムのシュートが決まっていたら、評価は違っていたとは思うけど、さすがにそこまでうまくいかなかった。
 
 ただチーム全体を見渡せば、本田のパフォーマンスはそこまで悪いものではなかった。この日の日本で、合格点をつけられる選手を挙げるとしたら、1トップの大迫ぐらいではないだろうか。本田はそれに次ぐパフォーマンスを見せていたが、それ以外の選手は採点で表わしたら、軒並み4.5〜5.5といったところだろう。
 
 ハリルホジッチ監督の采配も含めて、日本のサッカーがハマったとは言えない。攻撃が停滞していたからこそ、バルセロナから2ゴールを奪って好調をアピールしていた乾をここで使っても良かったのではないか。
 
 グループ首位に立っているにもかかわらず、どこか悲壮感が漂っているのもおかしな話だ。ワールドカップ出場の望みが絶たれているイラク相手に、ほとんど互角の戦いを演じてしまったのは正直、ただただ残念と言うしかない。
 
 このイラク戦を評価すれば、まったくもって凡戦だ。ただ言い方は悪いかもしれないけど、最終予選なんて、そんなものだと思っている。最終予選は結果がすべてだし、勝点を積み重ねるゲームなんだ。試合内容を求めるならば、親善試合のシリア戦のほうがむしろ議論されるべきだろう。イラク戦は内容を求めるには、コンディション・気候など、明らかに条件が悪すぎた。
 
 もっとも、前回のコラムでも話したとおり、日本は2位のサウジアラビア、3位のオーストラリアとの試合を残しているだけに、このイラク戦は勝たなければいけない試合だった。しかし、前向きに考えれば、今回のイラク戦で日本はポイント1を積み重ねて、ワールドカップ出場に王手をかけることができたんだ。