クルマの本当の寿命は交換できない車体の寿命

 一般的にクルマの最終的な寿命は、パワートレインや駆動系、足まわりなどのように交換が利かないボディ&フレームのヘタリだと言われる。極端に強度と剛性が低下したボディ&フレームでは、走る・曲がる・止まるといったクルマ本来の機能は期待できない。

 そのため、自動車メーカーでは剛性を高め、維持する目的でボディおよびフレームの結合に特殊な溶接/接着方法を用いるなどしているが、それでも経年劣化は避けられない。それはそうだろう。いまや軽自動車でも車重は1トン程度、大型のSUVともなれば2トンも超えてしまう。それが、ときに100km/hを超える速度で走り、曲がって、止まるのだ。さまざまな部位に大きなストレスが加わるのは避けられない。

 競技車両であれば、溶接箇所の打点増しや車内にロールケージを組むなどして対策するのだが、一般車両ではそうもいかず、足まわりや、ボディ&フレームに大きいストレスを与えるハイグリップタイヤの装着を控え、また日頃の運転で工夫するのが唯一の対策だ。

 具体的には、路面の凹凸や段差を乗り越える際は、減速はもちろん、状況に応じてアクセルのオン・オフによるサスペンションの伸縮も積極的に利用。また、足まわりやブレーキ、操舵系への負荷も大きい急発進&急ブレーキ、急ハンドルなど”急”のつく操作は極力避ける。「当たり前」と思われるかもしれないが、気にしていない人が大半だ。

 同車種で、つねに車体に加わる負荷に気を配って運転したクルマと、乱暴に扱われてきたクルマを比較すると、ほぼ同じ走行距離でも新車とヤレた中古車くらいの差を感じ取ることができる。

酷使されるATFのヘタな交換は故障のモト

 クルマは機械の集合体であり、定期的にメンテナンスを実施することでコンディションが保たれ、ランニングコストが抑えられ、寿命を延ばすことにもつながる。なにより重視すべきは消耗品、とりわけエンジンやトランスミッションなどにとって”血液”とも言えるオイルに尽きる。

 エンジンでは適切なオイルを使用している限り、滑らかな回転フィールやアクセルレスポンス、さらに内部パーツの摩耗を抑えることで、つねに新車時と同等の性能を引き出すことが可能。それは、ミッションオイルで各ギヤを潤滑、ギヤを正しく噛み合わせ、操作どおりのスムースな変速をもたらすMT(マニュアルトランスミッション)やDCT(デュアルクラッチトランスミッション)しかりだ。

 ただし、現在の2ペダルミッションで多数派のトルコン式ATは少々事情が異なる。使用されるのはATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)。正確にはオイルではなく、動力の伝達・遮断のほか、ギヤの潤滑や切り換え機能も担うフルード=作動液なのだ。当然、徐々に劣化し、酸化もする。性能低下は否めない。

 ところが、基本的に全量交換は不可能で、長期間交換していないATFの場合、スラッジ=不純物が変速回路などに混入して不具合を生じたり、新しいATFが、劣化の進んでいる内部パーツに(それまでより)強いテンションを加えることで、最悪AT自体を壊しかねず、メーカーによっては「無交換」を推奨していることもある。

 新車時と変わらない作動やフィーリングをキープするなら劣化が進む前の短いサイクル、2〜3万km走行ごとの交換が求められるようだ。

ガソリンの消費期限は3カ月〜半年

 オイルと比べると冷却水は軽視されがちだ。ラジエータに封入されていて、風を当てることで冷却。エンジン外壁のウォータージャケットのなかを循環させることで、エンジンから熱を奪う仕組み。

 真水ではなく、アルコールを主原料とするLLC=ロングライフクーラントとの混合水。「不凍液」とも呼ばれるように、外気温が氷点下になっても凍結させないことが主目的で、防錆や防泡、さらに冷却といった役割も担っている。

 これも長期間高温にさらされるうちに徐々に劣化。なかでも冷却性能の低下はシビアで、最悪エンジン自体の破損に至るオーバーヒートのリスクが急激に増す。

 冷却水(LLC)の劣化を視認することは非常に難しく、メーカーが指定したサイクルで定期的に交換するのがトラブル回避の最善策だ。

 最近ではS-LLC=スーパーロングライフクーラントと呼ばれる長寿命タイプもあるので、選択肢のひとつとして検討してもいいだろう。

 最後にガソリン燃料について付け加えておきたい。じつはガソリンは空気と触れた瞬間から劣化(酸化)が始まっている。その酸化劣化物には燃料系統の金属部品を腐食させる作用があり、燃料タンク、燃料配管などが腐食すると燃料漏れや部品の早期劣化の原因に。

 さらに問題となるのは劣化ガソリンから生成される粘着性物質で、インジェクターなどの燃料系に付着して目詰まりが生じる。エンジンの不調や出力低下を誘発するだけでなく、エンジン自体に大きなダメージを与える可能性もあるという。ガソリンの消費期限は明確にされていないものの、「3カ月から半年」が一般的とされている。

 このガソリンの話に限らず、多くの人がしているかもしれない、クルマのアンチエイジングを考えての”走らなすぎ”が、逆に寿命を縮める原因になりかねないとは……怖い話だ。

※本記事は雑誌「CARトップ2025年9月号」の記事を再構成して掲載しています