【西脇 章太】「寄生虫騒動」で20%急落のスシロー株に億り人が抱いた”確信”…素人が見落とした《絶好の買い場サイン》

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不況下の中国で「スシロー」が10時間の行列を生むほど支持されている。

前編『【ダフ屋出現】食事代より高い「入店権」がバカ売れ…中国人がスシローに「10時間待ち」する異常事態』では、その現地での人気の理由について見てきた。

こうした中国でのブームは、日本の株式市場ではどう評価されているのか。

2026年3月上旬、中国のSNS上で拡散された寄生虫騒動を受け、運営会社FOOD & LIFE COMPANIES(3563)の株価は一時大きく下落した。

一見すると、海外事業への不安が広がったようにも見える。だが、その後の株価推移や競合との比較を見ていくと、スシローの評価はむしろ底堅い。

そこで今回は、運営会社であるF&LCの株価を便宜上「スシロー株」と表記しながら、くら寿司との株価パフォーマンス、ROE、営業利益率、PERを比較し、投資家がスシローをどう見ているのかを確認していく。

20%下落後に見えたスシロー株の底力

この騒動は、日本の株式市場にも波及した。騒動前には1万500円前後で推移していたスシロー株は、一時8,500円前後まで急落。下落率は約20%に達した。

ただ、この急落を「中国事業の失速」と見るのは早計かもしれない。

投資スクール「Financial Free College(FFC)」を運営し、自身も総資産額1億円超の松本侑氏は、今回の値動きをこう分析する。

短期的にはかなり強く売られましたが、結論から言うと、投資家にとっては絶好の買い場だったと見ています。現地当局の調査で安全性が確認されたこともあり、株価は4月8日時点で9,600円前後まで戻している。事業そのものが崩れたわけではない、という見方が市場にも広がったのだと思います」(松本氏、以下「」も)

株価チャートをテクニカル分析の視点で見ると、市場の心理がより明確に浮かび上がる。騒動の渦中、スシロー株は投資家の心理的節目とされる50日移動平均線を一時的に割り込んだ。

大事なのは、移動平均線を割り込んだ後にどう動いたかです。スシローのチャートを見ると、下値ではしっかり買いが入って、きれいに反発しています。1カ月ほどで騒動前の水準に近づいているので、市場は今回の件を長引く悪材料とは見なさなかった。短期的なニュースと、企業が本来持っている稼ぐ力は分けて見る必要があります

半年、1年、5年…全期間で「くら寿司」を上回った

企業の真の実力は、競合との相対比較でより浮き彫りになる。国内のライバルである「くら寿司(2695)」と株価の騰落率を比較すると、両者のパフォーマンスには圧倒的な差がついている。

半年間の推移を見ると、くら寿司が5%の上昇にとどまるのに対し、スシローは37%の上昇を記録している。さらに期間を広げるとその差は顕著だ。

1年スパンではくら寿司の15%に対し、スシローは120%と2倍以上に跳ね上がっている。飲食業界全体がコロナ禍の直撃を受けた過去5年間の推移で見ても、くら寿司が13%の下落に沈むなか、スシローは87%のプラス成長を維持しているのだ。

半年、1年、5年のどこで切っても、スシローの株価パフォーマンスはくら寿司を大きく上回っています。これは、投資家が目先のニュースだけで判断しているのではなく、スシローの中長期的な成長力や収益力をかなり評価しているということです

このパフォーマンスの差は、両社のビジネスモデルとターゲット戦略の違いに起因している。くら寿司は、食べ終わった皿を自動回収するシステムや配膳ロボット、ゲーム要素の「びっくらポン」など、オペレーションの自動化とエンタメ性に強みを持つ。

くら寿司は、仕組みやエンタメ性でファミリー層をしっかり囲い込む戦略です。国内ではこれが強みになりますが、一方で、スシローはネタの品質や味といった商品力に投資し、より広い年齢層を取りにいっています。

前編にありました中国市場のように、新しい食体験として受け入れられる段階では、味や品質で正面から勝負できるスシローのほうが、海外展開との相性はよいと考えています。この海外成長力の差が、株価のパフォーマンスにも表れているのでしょう

くら寿司の4倍稼ぐ、スシロー株の実力

定性的な戦略の差は、定量的な財務データにも如実に表れている。企業の稼ぐ力を示すROE(自己資本利益率)や各種利益率において、スシローは飲食業界全体の水準を大きく超える数値を叩き出している。

直近のデータでは、スシローのROEは26.9%、営業利益率は8.4%、当期純利益率は5.0%に達する。対するくら寿司は、ROEが6.1%、営業利益率が2.2%、当期純利益率が1.5%だ。いずれの指標においても、スシローが約3〜4倍の差をつけて圧倒している。

飲食業は、もともと利益率が高くなりにくい業種です。その中でROE26.9%、営業利益率8.4%という数字は、かなり高い水準だと思います。自己資本に対してしっかり利益を出せているということなので、企業としてのお金の使い方、事業の回し方が非常にうまいと言えます

圧倒的な収益力を誇る一方で、株価の割安感を示す予想PER(株価収益率)を見ると、興味深い逆転現象が起きている。現在の予想PERはスシローが38倍、くら寿司が49倍だ。

これだけ収益力に差があるにもかかわらず、PERで見るとスシローのほうが低い。相対比較では、スシローに割安感があると言えます。ただし、PER38倍という数字自体は決して低くありません。市場はかなり高い成長期待を織り込んでいるので、その期待に応え続けるには、海外事業の成長が欠かせません

その成長期待の根拠となるのが、前編で詳述した中国市場での大躍進だ。F&LCの直近決算では、中国を含む国際業務の売上成長率が前年比41%増、利益面では98%増と、海外事業が業績を力強く牽引している。

中国での1日6〜10回という高い回転率や、現地サプライチェーンの構築によるコスト削減が、しっかり決算にも表れています。SNSでの広がりも含めて、スシローはすでに国内の回転寿司チェーンという枠を超えつつある。グローバルで稼げる外食企業として、投資家の資金を集めているのだと思います

ただし、成長株には特有のリスクもある。現在の高いバリュエーションは、右肩上がりの成長ストーリーが崩れた瞬間に、大きな売り圧力へと反転する危険性を孕んでいるのだ...。

中国での出店スピードは非常に速いですが、北京や上海といった一線都市で成功したモデルが、二線・三線都市でも同じように通用するかはまだわかりません。所得水準も違いますし、消費者の感覚も変わってきます。

また、食の安全に関わる問題がふたたび起きれば、SNSを通じて一気に中国全土へ広がるリスクもあるでしょう。今のブームが落ち着いた後も、高い回転率と客単価を維持できるか。ここが今後の大きな焦点になると思います

悪材料を凌ぐ、スシロー株の「稼ぐ力」

株式投資において、目先のニュースに右往左往することは機会損失に繋がりかねない。今回のスシロー株の株価推移は、データ分析の重要性を物語っている。

短期的なネガティブニュースだけで売買を判断するのは危険です。チャートで需給の節目を見て、競合他社との比較を行い、ROEやPERといった指標で収益力と市場評価を確認する。ファンダメンタルズとテクニカルの両方から見ると、今回の急落は一時的なものであり、むしろ投資するチャンスだったと判断できます

スシローの強さは、中国で行列ができている話題性だけではない。商品力を軸に幅広い客層を取り込み、高い回転率で収益を生み、海外展開を力強い成長ドライバーに変えている。

もちろん、中国市場での急拡大にはリスクも伴う。出店エリアの拡大、食の安全、SNSでの評判リスクなど、乗り越えるべき課題は少なくないかもしれない。

それでも、今回の騒動後に株価が反発した事実を見る限り、投資家は表面的な悪材料だけを見ているわけではない。スシローという企業が持つ「稼ぐ力」そのものを、冷静に評価しているのだろう。

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