【永田 耕作】宝くじ「高額当せん連発!」のチャンスセンターに潜む罠…普通の人が”件数”にダマされてしまう理由

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宝くじで分かる「数字の見方」

今月の頭、5月1日から、「ドリームジャンボ宝くじ」と「ドリームジャンボミニ」が全国で発売されています。ドリームジャンボ宝くじは、1等3億円、前後賞各1億円で、1等・前後賞合わせて5億円。つい先日は一粒万倍日もあったことで話題となり、すでに購入をした、という方も多いでしょう。

宝くじは、日本人にとって非常に身近な存在です。日本宝くじ協会の調査によると、宝くじを過去に1度でも購入したことがある人は80.6%、推計で約8,398万人にのぼります。また、最近1年間に1回以上宝くじを購入した「宝くじ人口」も44.4%、推計で約4,628万人とされています。

そんな宝くじを買うとき、私たちは何を基準に売り場を選べばよいのでしょうか。

ここで1つクイズです。

あなたは宝くじを買おうとしているとします。

そしてあなたの目の前には、以下の2つのチャンスセンター(宝くじ売り場)があります。

A:これまでに1億円以上の高額当せんが5件出ている売り場

B:これまでに1億円以上の高額当せんが1件出ている売り場

さて、あなたならどちらを選ぶでしょうか。

いかがでしょうか。おそらく、多くの人はAを選ぶはずです。

「5件も出ているなら、なんとなく縁起がよさそうだ」

「有名な売り場なのだから、当たりやすいのではないか」

そう感じるのは、ごくごく自然なことです。

実際、「高額当せん連発」と掲げる売り場には行列ができていることが多いです。宝くじに限らず飲食店の例などでも分かるように、人は、実績の大きさに引き寄せられるものなのです。

ですが、ここには大きな落とし穴があります。それはズバリ、私たちが見ているのが“件数”だけで、その後ろにある“分母”を見ていないことです。

答えは「分母」にあり

たとえば、Aの売り場では1000万枚売れていて、そのうち高額当せんが5件だったとします。Bの売り場では100万枚売れていて、高額当せんが1件だったとします。このときAは「1000万枚中5件」、Bは「100万枚中1件」です。数だけで見ると確かにAの方が当せん件数は多いのですが、割合で見ればAは200万枚に1件、Bは100万枚に1件。むしろBのほうが高いことになります。

もちろん、実際の販売枚数は分からないことが多いため、どちらの売り場の方が当たりやすいかは簡単には判別できません。しかし、「5件出た」という派手な数字に飛びつく前に、「そもそも何枚売れて、そのうち何件当たったのか」と一歩立ち止まることは非常に重要です。

数学というと、つい難しい公式や考え方を思い浮かべがちですが、実際にはこういう場面でこそ力を発揮します。数字をそのまま信じるのではなく、「それは何に対して多いのか」を問い直す力。この「分母を見る力」が日常生活においてはとても重要になるのです。

ここで厄介なのは、私たち人間がこの「分母を見る」という作業を、意外なほど苦手にしていることです。心理学では、こうした傾向を base-rate neglect、日本語で言えば「基本率の無視」と呼びます。ざっくりいえば、全体の中でどれくらい起きるかという土台の確率を軽視し、目立つ情報だけで判断してしまうクセのことです。

宝くじで「5件当たった売り場」に惹かれるのも、その典型といっていいでしょう。

この罠は、宝くじだけに潜んでいるわけではありません。

たとえば、飲食店選びです。

ある店は「星4.8、レビュー5件」。

別の店は「星4.3、レビュー500件」。

さて、どちらを信じたくなるでしょうか。

ぱっと見では、星4.8の店のほうが魅力的に見えます。ですが、5件の評価で4.8になることと、500件の評価を集めたうえで4.3を維持することでは、重みがかなり違います。レビューというのは、星の高さだけでなく、どれだけの人がその評価に参加しているかも重要です。実際、多くの利用者は単なる星だけでなく、内容の具体性や信頼できるレビュー情報を重視しています。直観的に分かりやすい数字だけを見ると判断を誤りやすいのは、皆さんの実体験でも理解しやすいでしょう。

これは、ビジネスの営業成績においても同じです。

Aさんは10件成約、Bさんは5件成約。

これだけ聞くと、Aさんのほうが優秀に見えるかもしれません。

でも、Aさんが100件提案して10件成約、Bさんが20件提案して5件成約だったらどうでしょう。件数ではAさんが上でも、成約率ではAさんが10%、Bさんが25%です。どちらが「打率の高い営業」かといえば、見え方は一気に変わります。

もちろん、一件の成約で非常に大きな利益を上げることができる商品なのであれば、件数を大きく増やして、少しでも多く制約件数を獲得した方が良いでしょう。しかし、多くの場合提案にもコストがかかるため、「成約率」という指標は重要となっていきます。

一つの数字だけで判断するのではなく、総合的な評価ができる指標をいかに設けられるかが大事になるのです。

家計簿で考える

ではここで、もうひとつ、まったく別のクイズで考えてみましょう。

あなたは、節約のために家計を見直そうとしています。

そこで、まずは1か月の支出を確認してみました。

すると、以下の2つの支出が目に入ります。

A:コンビニでの買い物 月12,000円

B:動画配信サービスのサブスク 月1,500円

さて、あなたなら、どちらから見直すべきだと思うでしょうか。

パッと見ると、Aのコンビニ代のほうが大きく見えます。

月12,000円と月1,500円ですから、金額だけでいえばコンビニ代はサブスク代の8倍です。節約するなら、まずコンビニでの買い物を減らすべきだ、と考える人も多いでしょう。

しかし、ここで大切なのは、金額だけで判断しないことです。

たとえば、コンビニでの買い物は月20回あり、その合計が12,000円だったとします。

この場合、1回あたりの支出は600円です。昼食や飲み物を買っているのであれば、ある程度は必要な出費かもしれません。

一方、動画配信サービスは月1,500円です。金額だけ見れば小さく見えます。

しかし、もしそのサービスを1か月に1回しか使っていなかったとしたらどうでしょうか。

この場合、1回あたりの利用料は1,500円です。

金額の合計ではコンビニ代のほうが大きいのに、1回あたりのコストで見ると、サブスクのほうが高いことになります。

つまり、本当に比べるべきなのは、支出の合計額だけではありません。

「何回使ったうちの金額なのか」

「1回あたりいくらなのか」

という分母を見る必要があるのです。

もちろん、家計を見直すときには、合計金額の大きな支出から確認することも大切です。

ただし、合計金額だけを見ると、「よく使っているから高くなっているもの」と「ほとんど使っていないのに払い続けているもの」を同じように扱ってしまいます。

数字は、大きいものほど目立ちます。

月12,000円と聞くと、「高い」と感じます。

月1,500円と聞くと、「まあいいか」と思ってしまいます。

けれど、その数字が本当に高いのか安いのかは、自分がそれをどれだけ利用しているかで変わります。

合計金額だけを見るのではなく、「1回あたり」「1時間あたり」「1日あたり」で考える。これだけで、数字の見え方は大きく変わるのです。

終わりに

宝くじ売り場の話に戻りましょう。

もちろん、宝くじは夢を買うものでもあります。有名な売り場に並ぶこと自体を楽しむ人もいるでしょう。それはそれで、ひとつの買い方です。

ただ、「どちらが当たりやすいか」を冷静に考えるなら、「高額当せんが何件出たか」だけではなく、その数字の後ろにどれだけの販売数があるのかを見ることが重要となるでしょう。

数字は、大きく見えるほど説得力を持ってしまいます。

しかし本当に大切なのは、その数字がどんな分母の上に成り立っているかを考えることです。

「何件出たか」だけでなく、「どれだけ売れたうちの何件なのか」を見る。

そうすることで、数字に振り回されず、より冷静に判断できるようになるでしょう。

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