デザインが好きで買った服なのに、つい着ないまま放置…。そんな経験はありませんか? もしかしたらそれは、「衣服」と「ファッション」による役割の違いが原因かもしれません。今回は、1年3セットという少ない服で過ごす“制服化スタイリスト”のあきやあさみさんに、自分らしく服選びを楽しむコツを教えてもらいました。

※  この記事は『自問自答ファッション 制服化スタイリストが教える自分らしく生きるヒント』(朝日新聞出版刊)より一部を抜粋し、再編集しています。

「衣服」と「ファッション」はどう違う?

衣服とファッション、この2つは同じように思われがちですが、それぞれ役割が異なります。

まず、衣服とは体を守ってくれるものです。自然環境から体を保護する役割をもちます。快適で、便利で、着心地がよく、機能的で動きやすいものが衣服です。

一方で、ファッションとは、自分の心を守ってくれるものです。自分そのものを表す役割をもちます。「私ってこんな人ですよ」と表現するものがファッションです。

この相反する2つをどの比率で身に着けるかが、その人の個性になります。衣服を重視するか、ファッションを重視するかは、置かれている環境や立場、気分によっても変わるため、「私は今、どちらを優先したい?」と自問自答してみましょう。

どちらをどのくらい優先したいかで、ブランド選びやファッション選びが固まっていきます。

小物づかいで「ファッション」を楽しむ

たとえば、私は「衣服50%」「ファッション50%」の割合で服を選ぶことを意識しています。自問自答を続けるうちに、私にはこの割合がちょうどいいと感じました。

タイトな服や重い服を着ていると体調が悪くなってしまう方がいますよね。そういう方には、「衣服80%」「ファッション20%」と、衣服を優先することがおすすめ。

けれど、「着心地がいい、動きやすい、締めつけがない、走れる服は着ていてたしかに快適だけれど、気分が上がらない」という方もいます。その場合は、小物でファッション要素を取り入れてみてください。常に視界に入る指輪でもいいですし、かわいいハンカチでも、好きな柄のバッグでも、なんでもOKです。

「衣服」と「ファッション」の割合は季節で変えてもいい

一度「衣服50%」「ファッション50%」と割合を決めたら、貫きとおさなくてはいけない…ということはありません! むしろ、季節やシーンで柔軟に変えていきましょう。

たとえば猛暑のなかでは、ファッションよりも衣服を優先することが大事です。おしゃれもしたいですが、命の方がなによりも大事。真冬も、大雪が降るなかでファッションを楽しむのは難しいですよね。

そういうシーンでは、ぜひ衣服優先でいきましょう。比較的、気候が穏やかである春と秋は「ファッション高めにしようかな?」くらいに、柔軟に変えてくださいね。

「パーセンテージ」が決まると失敗が減る

自分自身の衣服とファッションのパーセンテージを決めておくと、お買い物で失敗することが減ります。

たとえば、デリケートな素材なのでお洗濯がちょっと大変なキュプラ100%の服があるとして、「私は衣服80%」と決めていたら、「すてきだけど、私には向かないかな」と判断がつきやすくなります。しかし、パーセンテージがあいまいだと、購入したあとでやっと「これは私には合わなかった…」と気づくのです。

衣服とファッションのパーセンテージが決まると、「自分はどのブランドで洋服を買うのが最適か」が明確になります。

ブランドを選ぶときは、ぜひ公式HPにあるブランドコンセプトを見てください。「このブランドはリラックスウエアをつくっているんだな」「このブランドは社会人のための心を守る服をつくっているんだな」となにを大切にしているかがわかります。

自分に合うブランドを見つけるためにも、ここはぜひ手間を惜しまないでほしいところです。

服を探す前に、自分を探そう

私は、まず自分という人間を深く知り、自分自身を明確にしていくことを大切にしています。そうすることで、服選び、ひいては人生選びまで軸がブレなくなるからです。

そのために必要な作業として、私は「あなたの『なりたい』『好き』『似合う』の3つを考えましょう」とお伝えしています。

「なりたい」「好き」「似合う」の3つが混ざったアイテムを選ぶのがおすすめですが、3つをバランスよく取り入れるのがちょうどいい方もいれば、どれか1つを突出させたい方もいて、そのバランス加減には個人差があります。

今回は「なりたい」についてお話しします。「こういうふうに生きたい」とか、「こんな人に憧れる」などの思いを指します。つまり、あなたにとっての哲学・美学・骨に刻みたい言葉です。一例として、私が服を選ぶ基準の「なりたい(こう生きたい)」を以下に挙げてみます。

・できる限り身軽でいたい

・子どもの頃からの憧れや願いをかなえたい

・やりたいことに没頭していたい

私は「なりたい」を考えた結果、服が少なくなり、「制服化」につながりました!

「なりたい自分像」を表現する

ここでは服を選ぶ基準とは別に、ファッション的に「なりたい(表現したい)」姿についても考えてみることが大切です。私が考える「なりたい自分像」は、こんな感じです。

・ポップでありたい

・飄々(ひょうひょう)としていたい

・文化的でいたい(見た目でもそれを表したい)

・自分の心を支えてくれたブランド&デザイナーの服が着たい

・複雑で、底知れぬ者でいたい

もし、全知全能の神に「お金も才能もあげるから、なにになりたい?」と聞かれたら、あなたはどんな自分になりたいですか? 想像して浮かんできた姿こそが、あなたが心から望む「なりたい自分像」です。

この「なりたい自分像」にのっとって、行動・選択・表現をすることができていると「今の私、とても自分らしく生きているな〜」と感じられて、心が満たされます。

「なりたい」の解釈は人それぞれ

私は「欲しいものを手に入れたい欲」よりも、「身軽でいたい欲」の方が強いため、突発的にお買い物をすることはありません。しかし、「ピンときたものはすぐに買って使う」「欲しいものを買い逃したくない」という哲学をもった友人もいます。

「なりたい」の解釈は、人それぞれあります。私のように「考えてから買う哲学」も、友人のように「買ってから考える哲学」も、どちらもすばらしい考え方で、そこに優劣はありません。

人の内面はとても複雑です。「なりたい」は、自分自身と真剣に向き合って、考えないと出てこないものです。「こういうふうに生きたい」という哲学に、外見から近づけていく方法もありますが(もちろん、その方法もとてもすてきです!)、私は、まず言葉と思考を深掘りしていくことに重点を置いています。