アマゾンの部族が急にデジタル化した結果とは?

人口のほとんどがスマートフォンを所有していたり、大抵の地域でインターネットを使用することができたりする国がある一方で、世界にはインターネットどころか電気も通っていないような地域も残っています。ブラジルの熱帯雨林の先住民族が突如デジタル化した結果発生した問題とその結末について、経営思想家でテクノロジストのファイサル・ホーク氏が解説しています。
A Digital Invasion Sets Off Tech Trauma | Psychology Today

CNNは2025年4月にオリジナル番組「The Whole Story with Anderson Cooper」で、アマゾンの奥地で初めてインターネットに触れる先住民族・カナマリ族の様子を取材して公開しました。インターネットはStarlinkを介したもので、活動家グループによって導入されました。

グループに同行したCNN国際安全保障チーフ特派員のニック・パトン・ウォルシュ氏によると、若者たちがWhatsAppやFacebook、特に中国版TikTok風アプリのKwaiに急速な順応を見せた一方で、村の年長者たちは若者たちがインターネットに魅了されすぎるのを防ぐために働きかけていたとのこと。ウォルシュ氏は「これらのコミュニティが、インターネットが自分たちの生活へいかに悪影響を及ぼすかを素早く気付いたことに、私たちは驚きました。確かに、昔ながらの生活からオンラインの世界へ切り替えることによる飛躍は大きいものでした。しかし、子どもたちの安全を守るためにはインターネットを遮断する必要もあるのだと、彼らはすぐに気づきました。今やほぼすべてのことに頼っているテクノロジーによって、私たちの生活がどれほど加速され、侵略されてきたかを痛感させられます」と語っています。
同様にStarlinkでアマゾン奥地の部族がインターネットを導入するケースは、2024年にThe New York Timesが報じています。2023年9月に初めてインターネット環境を手に入れたブラジルのアマゾンで暮らすマルボ族は、初めは皆が喜んでインターネットを歓迎したものの、しばらくして状況は悪化し、若者が怠惰になったり貞淑(ていしゅく)な部族だったのにポルノが流行したりと、好ましくない変化が起きたことが報告されています。
Starlinkでアマゾン奥地の部族がついにインターネットに接続するもSNSやポルノに触れて変わっていく若者たちを長老が不安視 - GIGAZINE

ホーク氏は「CNNの番組内で繰り広げられたのは、単なるインターネットアクセスに関する物語ではなく、それは私たちが生きるこの時代を象徴する寓話(ぐうわ)でした」と述べています。Starlinkが導入されるまで、カナマリ族は完全にオフラインで暮らしていましたが、ほぼ一夜にしてデジタル化し、違法な森林伐採を通報したり、遠方の親戚と連絡を取ったり、膨大な情報にアクセスしたりする強力なツールを獲得しました。
しかし、デジタル化による反動もすぐに訪れたとホーク氏は指摘しています。コミュニティが違法な森林伐採を通報するために利用できるネットワークそのものが、犯罪の実行犯を引きつけるための衛星電話とGPSデータとして有効活用されました。また、インターネットに慣れた国民が何年もかけて慣れていった、SNSのようなドーパミン刺激コンテンツへの依存、デジタル的にはつながる一方で孤立したスクリーンタイムが発生すること、インフルエンサー文化によってゆがんだ価値観が形成されることなど、デジタル社会特有の問題がカナマリ族の間で急速に確認されています。
最終的にカナマリ族は、デジタル依存およびそれに伴う問題を抑えるため、夜間にインターネットを遮断することを決定しました。ただし、デジタルの影響力と経済的プレッシャーが高まる中で、カナマリ族が毎晩のインターネット遮断を維持できるかどうかはわからないとホーク氏は指摘しています。
デジタル化による広い世界へのアクセスは、膨大な情報へのアクセス権と、情報の洪水にさらされるという二面性を持っています。また、最新技術に適応することは、重要な伝統文化が失われてしまうことにもつながる可能性があります。ホーク氏は「テクノロジーを放棄する必要はありません。しかし、私たちはテクノロジーに対して、文化の深みへの配慮をふまえた識別力を持って向き合う必要があります。カナマリ族の例は、私たちにインターネットとの間に防衛線を引くことの重要さと難しさを教えてくれます」と語っています。
