深夜の視聴者を震撼させた、実験的すぎるテレビ番組『蓋』の手応えをディレクターに聞く
監視カメラやウェブカメラで撮影したような映像、誰かのPC画面のような映像が映ったかと思えば、暗い渋谷の下水道の様子が映し出される。放送事故のようにも見えるが、れっきとしたテレビ番組らしい。
■『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の上出遼平が仕掛ける「実験的蓋番組」
―この『蓋』というテレビ番組は、どういった経緯で生まれたんでしょうか?
上出:1年くらい前に、ヒップホップユニットのDos Monosから「MVをつくってほしい」と声をかけてもらって、そこが始まりです。
―これ、MVだったんですか?
上出:ぼくはテレビ局の人間としてドキュメンタリーばかりを撮ってきたので、つくり込んだ映像が得意ではない。そういう自分がMVをつくってもいいのかと思いましたし、どうせやるならMVの枠にとらわれずに面白いことをやりたかった。
一方でDos Monos側も「どうして音楽をつくったら、それに合わせてMVをつくる「お約束」があるんだろう? もっと別なやり方はないのか」という問題意識があったみたいです。
上出:ぼく自身はテレビマンとして自分の戦場で面白いと思えることを試みたいし、Dos Monos的には新しいプロモーションを模索したいという目論見が一致したので、1年ぐらいの時間をかけて番組制作と楽曲制作を同時に進めました。
―なぜ停波枠(深夜〜早朝の放送休止時間)に番組を放送しようと思ったんですか?
上出:ずっと思ってたんですよ。「停波枠、もったいなくない?」って。テレビ局って番組改編期に企画募集をするのですが、基本的にはレギュラー番組がびっしりつまっていて、若手が新しいことにトライする枠がない。それなのに、番組を一切放送しない時間があるのって謎じゃないですか。
もちろん停波枠とはいえ、スポンサーがつかないと番組を制作できないことは理解しています。ただ、逆にお金さえ持ってくれば停波枠を自由に使えるんじゃないかと考え、Dos Monosと共に、自分たちでスポンサーを探しました。
テレビ番組制作は、編成局に企画書を出して、通ったらタイムテーブルにはめてもらうのが一般的な流れなんですが、今回の場合は「スポンサーがつきました→停波枠が空いてますよね→企画あります→やらせてください」という流れでした。
もちろん1人で進めたわけではなく、先輩が各部署との調整や細かい契約上の手続きなどに奔走してくれたことで実現したのですが、オンエアまで社内のほとんどの人が内容すら知らなかったと思います。
■じつはそんなに「驚き」がないインターネット
―とはいえ、実際の番組では、Dos Monosのメンバーが登場するわけでもなく、まったく関係ない不思議な映像を流したのはなぜですか?
上出:不可解な映像を無理やりお茶の間に届けたかったんですよね。異物が突如家に侵入してくる感じ。
―実際、視聴者からは狙い通りの反応が来ていたように思います。
上出:視聴者に驚いてもらいたかったというのが大きいです。それがテレビの醍醐味だと思っているので。
