深夜の視聴者を震撼させた、実験的すぎるテレビ番組『蓋』の手応えをディレクターに聞く
テレビ番組制作は、編成局に企画書を出して、通ったらタイムテーブルにはめてもらうのが一般的な流れなんですが、今回の場合は「スポンサーがつきました→停波枠が空いてますよね→企画あります→やらせてください」という流れでした。
もちろん1人で進めたわけではなく、先輩が各部署との調整や細かい契約上の手続きなどに奔走してくれたことで実現したのですが、オンエアまで社内のほとんどの人が内容すら知らなかったと思います。
―とはいえ、実際の番組では、Dos Monosのメンバーが登場するわけでもなく、まったく関係ない不思議な映像を流したのはなぜですか?
上出:不可解な映像を無理やりお茶の間に届けたかったんですよね。異物が突如家に侵入してくる感じ。
―実際、視聴者からは狙い通りの反応が来ていたように思います。
上出:視聴者に驚いてもらいたかったというのが大きいです。それがテレビの醍醐味だと思っているので。
―驚かせられるのがテレビの魅力、ということですか?
上出:そうです。「テレビはネットに食われてる」と言われてますけど、じつはネットで驚く体験ってあまりないなと思ってるんです。ネットって自分で情報を取りに行くものだから、ある程度結果が想像できるし、サムネイルを見ただけで内容も予想できちゃうじゃないですか。ネットは確認するための作業が多い。
でも、地上波のテレビって、ふいに殴られるというか……テレビ画面を通して突然侵入される感じがする。
―惰性でテレビをつけていたら、突然変な映像が流れたらびっくりする、みたいな?
上出:そうですね。あと、この番組は宣伝もできないし、そもそも放送時間は朝4時だし、どうやったら注目してもらえるのかと考えたときに「事故」だなと。事故の瞬間を目撃した人って、それを広めたくなりますよね。だから放送事故を思わせる演出を随所に施しました。
―事故っぽい映像?
上出:簡単に言うと、現実かフィクションなのかよくわからない、その境目のモキュメンタリー(フィクションを、ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法)にしました。
ハッカーがテレ東の停波枠と渋谷中の監視カメラをハックしたという設定で番組を進める。監視カメラ風の映像は、GoProに長い一脚を取り付けて撮影しました。
―実際、監視カメラのハッキングって可能なんですか?
上出:他人のPCのウェブカメラにアクセスして、覗き見ることって余裕らしいんですよ。監視カメラも無防備なものは外部からアクセスするのは簡単みたいです。実際、世界中の監視カメラ映像を垂れ流してるサイトもありますし。こういう現実にある話をベースに映像をつくっていきました。
