縮小傾向の市場で売上を拡大するためには、ユーザーがどのように自社商品を利用しているのかを知ること、そして少数意見を軽視しないことが重要だとするのは、MBAホルダーの青山烈士さん。青山さんは今回、自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、その重要なポイントを見事に突き話題となっている「ちくわ」を生み出した企業の戦略・戦術を分析しています。

少数意見をどう捉えるか

今号は、注目を集めている「ちくわ」を分析します。

● 練り製品業界のトップクラスのシェアを誇る「一正蒲鉾」の「スポちく」

戦略ショートストーリー

運動が好きな方をターゲットに「ちくわなどの練り製品の製造ノウハウ」に支えられた「手軽にたんぱく質を補給できる」等の強みで差別化しています。

運動後にたんぱく質を補給する新しい選択肢として、「ちくわ」の新たな食べ方を提案することで注目を集めるとともに、運動をする方から支持されています。

■分析のポイント

スポーツの後に、「ちくわ」を食べるというのは新しい発想ですし、とても斬新な提案だと思います。

このような商品がどのように開発されたのかというと、きっかけとなったのが、「ジムでちくわを食べている人がいる」という情報だったようです。恐らく、一正蒲鉾の開発担当の方は、この情報に対して、「なぜだ?」という思いを抱いたのでしょう。

その理由を調べていく過程で、運動後にたんぱく質を補給するために「ちくわ」を食べているということが明らかになり、そういった方のために高たんぱくな「スポちく」を開発したわけです。

このことは、自社商品が、ユーザーにどのように利用されているのかを知ることの重要性を示していますね。

そして、そういったユーザーの利用シーンの情報を入手することも大切ですが、入手できても、受け手によって活用できることもありますし、活用できないこともあります。

その差がなぜ生まれるのかと言うと、受け手が「情報に疑問を持てるか」ということと、「少数意見を軽視しない」という姿勢を持てるかどうかが要因であることが多いです。

例えば、今回の事例で言えば「ジムでちくわを食べている人がいる」という情報を得た時に、疑問を持つことはもちろん、恐らく、ジムで「ちくわ」を食べている方は、かなりレアケースだと思いますので、そういった方にフォーカスを当てられるかどうかが大きな成果の差につながるということです。

また、「ちくわ」をいままでの延長線上で改善していくのも大切ですが、縮小傾向の市場の中で、売上を拡大するには、「ちくわ」の新たな用途(使い道)開発がひとつのセオリーとなります。ですから、いままでと異なるスポーツシーンでの用途を開発できたことは、一正蒲鉾にとっても非常に大きな機会につながる可能性があります。

スポーツ後にたんぱく質を補給するといえば、「プロテイン」が有名ですが、「プロテイン」が苦手な方や面倒に感じる方もいますし、さすがに毎回「プロテイン」では飽きてきたという方もいるようですから、ユーザーにとっては、ヘルシーかつたんぱく質を補給できる「スポちく」は新たな選択肢として注目を集めそうです。

今後、「スポちく」が、どのような存在になっていくのか注目していきたいです。

◆戦略分析

■戦場・競合

戦場(顧客視点での自社の事業領域):たんぱく質を補給できる食品競合(お客様の選択肢):プロテイン、サラダチキンなどのたんぱく質量の多い食品状況:魚肉ねり製品の国内市場は縮小傾向にあるようです

■強み

1.手軽にたんぱく質を補給できる

高たんぱく(1本45gあたり7.3gのたんぱく質量)低脂肪、低カロリー袋を開けて、そのままワンハンドで食べられる

2.美味しくヘルシーで満足感がある

魚の旨みを感じられる食べ応えがある青魚のサラサラ成分のDHA、EPA入りでヘルシー罪悪感なく食べられる

★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

ちくわなどの練り製品の製造ノウハウ(1965年創業)

→サプリメントの製造も手掛けている

上記のような、ノウハウなどが強みを支えています。

■顧客ターゲット

運動が好きな方ダイエットをしている方運動後にたんぱく質を補給する方プロテインやサラダチキンに飽きた方、苦手な方

◆戦術分析

■売り物

「スポーツちくわ(スポちく)」

・2種類を展開

スポちくBCAA入り(筋たんぱく質合成を促進するBCAA入り)スポちくビタミンB1入り(糖質を効率よく利用してくれ、疲労回復に効果的とされるビタミンB1入り)

■売り値

1本(45g):158円(税抜)

■売り方

目を引くパッケージ「ちくわ」と「スポーツ」を掛け合わせることで注目を集める

■売り場

いちまさオンラインショップ、いちまさ楽天市場店、スーパーなど

※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

image by: Twitter(@いちまさ(一正蒲鉾))

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