名刺は組織における今の「あなた」を伝えている。あなたの世界はそれだけだろうか?
―今でこそ、企業の外でも活躍できる社会感度の高い人材を育てる意義が叫ばれますが、廣さんが商社勤務の傍ら、活動を始めた当時は社会の受け止めも異なったのでは。
「2009年当時、僕らのプロジェクトの参加者は、社会貢献への意識を持つとともに、会社での閉塞感を感じ始めていた若い世代が中心でした。ところが現在は、『人生100年時代』の影響か、『自分も仕事以外で何かできないか』と考える人が増えているように感じます。特に40代、50代が企業の中で積み上げてきたキャリアとは異なる可能性を追求する姿が目立ちます」
―社会人が本業以外の2枚目の名刺を持って活動し、自身の価値観やスキルを社会に還元する―。そんなスタイルを提案してきたそうですが、具体的にはどう活動しているのですか。
「社会課題の解決に取り組むNPOと、これに関心を寄せる社会人をつなぐのが僕らの役割です。NPOの関係者を招いて活動内容や直面する課題について話をしてもらい、興味を持った社会人とプロジェクトチームを組成するといった流れです。内容はまちづくりや人材育成、途上国支援などさまざまで、これまで9年間で90件のプロジェクトを実施、延べ540人程度が参加してきました」
―「新しいこと」に踏み出す一歩にしてもらうんですね。
「そうです。僕らの活動は、こうすべきという価値観を強制するものではなく、あくまでも自身で手を挙げて活動に参加し、そして社会に変化を生み出すとともに、自身の変化の『きっかけ』にしてもらうことが狙いです」
― 一歩を踏み出してもらう上で、社会性のあるテーマを選ぶのはなぜですか。
「社会課題に向き合っているNPOなどのリーダーには、使命感や情熱がある。僕らも本来、それぞれが社会の中で成し遂げたい思い、会社などで実現したいことを持って入社したんだと思いますが、組織の色に染まる過程で、いつしか夢や情熱を押し殺し、そのうち、何がしたかったのか分からなくなっていく―。思いを貫くリーダーの姿に接することで、心の奥底にある思いや可能性を呼び覚ましてほしいと考えるからです」
「また社会課題への挑戦では、正解のない課題に試行錯誤しながら立ち向かうことになります。前例やマニュアルに従い正解探しばかりするような組織への『過剰な適応』から抜け出し、自分の頭で考え、動き出すきっかけにもなるのです」
もっと面白い奴だったのに
「同世代を見ても、入社から数年たつと皆、立派な会社人になっている。こいつもっと面白い奴だったのにともどかしさを感じることがあります。僕自身が飛び抜けて人と違う何かを持っているとは思いません。ただ、海外留学時代に会社の名前に頼らず、組織の枠を超えて取り組んだプロジェクトで、たくさんの失敗や予期せぬ出会いを経験したことが、自身に大きな変化をもたらしました。組織を『半歩』、あるいは『一歩』飛び出す『2枚目の名刺』は、『会社人』を『社会人』に変え、活躍の場を広げ、そして社会に面白いことを生み出す―。そんなサイクルを創り出す力を持っていると感じます」
―社員の社外活動に対する企業側の姿勢に変化は感じますか。
