小競り合いの中、森脇の発言は誰に向けられ、何を意図していたのか。写真:田中研治

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 5月4日のレッズ対アントラーズの試合で、選手の不適切な発言を巡る問題が起こったね。
 
 70分過ぎの両チームの小競り合いのなかで、レッズの森脇の「臭い」という趣旨の発言が取り沙汰された。このセリフは、アントラーズの小笠原に対して発せられたのか、ブラジル人のレオ・シルバに向けられたものなのか。両者の言い分は食い違いを見せ、Jリーグの規律委員会の選手への聞き取り調査の末、森脇に2試合の出場停止処分が科された。
 
 問題の核心が見えにくい部分があるけど、ただこうした小競り合いはサッカーではよくあることとも言える。ビッグクラブ同士の対戦で、激しいゲームだったし、お互いに熱くなっていたんだろうね。子どもの口喧嘩でも、もっとひどい言葉が飛び出してくるよ。
 
 もちろん、差別的な発言がOKと言っているわけではない。それは絶対に言ってはダメ。そんなことは、あえてここで僕が言うまでもない。
 
 ただし、疑われるような言動があったから、ここまで大きな問題になったとは思うけど、小競り合いの時、あれだけ多くの選手がいたんだから、誰かが真相を知っていてもおかしくないよね。
 
 僕が一番、問題視しているのは、レフェリーは何をしていたのかということ。件のシーンで、ボールをキープする土居を突き飛ばした興梠にはイエローカードが出されていると思うけど、それ以外の“お咎め”はなし。主審も副審もすぐ近くにいたはずなのに、いったい何をしていたのかな。
 
 ピッチ上で起こったことを裁くのがレフェリーの仕事だ。それなのに、後日に処分が下されるような事態があって、それを目の前で見ていたはずの彼らの仕事ぶりに、僕は納得できないね。規律委員会には、審判員からの報告書も提出されたという。そこに何て書いてあるのか興味深いよ。
 
 2試合の出場停止という処分も、釈然としないね。処分の理由は、Jリーグの公式HPに「他の競技者、その他の競技に立ち会っている人々に対する侮辱」と記されてはいるけど、曖昧な部分が少なくないよ。何を根拠にしているのか。どんな証拠があったのか。そこが明らかにされていない気がするんだ。

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 ジダンが頭突きをしたとか、スアレスが嚙みついたとか、それなら分かりやすいよね。でも、今回はある意味、「言った・言わない」が問題になっているから、判別しにくいのは理解できる。
 
 誤解を恐れずに言えば、「臭い」という言葉自体、差別的な発言とは言い切れない。でも、シチュエーションによっては差別を表わすこともある。そこが今回の論点のひとつだと思うけど、うやむやなまま、決着がつきそうな気配だね。
 
 処分は森脇だけに下されたけど、それだけでいいのかという考えもある。ガンバサポーターによる不適切なフラッグ問題について、ガンバには制裁金200万円が科されたけど、レッズには何のペナルティもないのかな。
 
 森脇はレッズに所属しているよね。問題を起こした選手を雇っているクラブにも責任はあると思うし、Jリーグではなく、むしろクラブが森脇を罰してもおかしくはない。
 
 レッズにもブラジル人選手はいる。ラファエル・シルバがゴールを決めれば、みんな抱き合って喜んでいるよね。それなのに、今回のような問題が起こること自体、残念な気がしてならないよ。