脳科学者の茂木健一郎氏が自身のYouTubeチャンネルで「私たちの抜け出られない「エコーチェンバー」の恐怖」を公開した。動画では、自身が関心のある情報ばかりが集まる「エコーチェンバー」現象について、自覚しながらも抜け出せない現状への強い危機感を語っている。

動画の冒頭で茂木氏は、エコーチェンバーについて他者を上から目線で批判する文脈で使われることが多いと指摘しつつ、「自分自身がエコーチェンバーに入っていて、しかもそれが自分のせいではない状態になっている」ことが本当に怖いと明かした。その背景として、テレビや新聞などの伝統的メディアの役割が低下し、SNSから情報を得る人が増えている現状を挙げる。

SNSでは、アルゴリズムがユーザーの過去の反応に合わせてコンテンツを最適化し、タイムラインを表示している。茂木氏は、かつてはフォローしている友人の投稿が普通に表示されていたにもかかわらず、現在はアルゴリズムの働きによって見えなくなることがあると指摘。自身もX(旧Twitter)の英語アカウントで人工知能関連の投稿にエンゲージメントを示した結果、AIや科学、文化に関連する投稿ばかりが表示されるようになったという。自分の知りたい情報が効率よく得られる一方で、それ以外の情報が排除されている状況を、自分に最適化されたエコーチェンバーだと定義した。

さらに茂木氏は、この状況から「抜け出る方法がない」と語る。他の話題に目を向けようとバランスを取れば、今度は自分が本当に見たい情報が減ってしまうというジレンマがあるからだ。知人と話しても、それぞれが全く違うタイムラインを見ており、誰もが自分専用の空間に閉じ込められている状態にあると指摘した。

最後には、かつてのマスメディア時代にも同様の問題が潜在的にあったと振り返りつつ、現在は個別に最適化された状況がより顕在化していると分析。ワールドカップのような大きな出来事であっても、全員が共通して触れているというのは幻想に過ぎないと説明した。そして「エコーチェンバーに閉じ込められているというホラーストーリーが、希望の物語に変わる道筋ってあるのかな」とつぶやき、最適化された現代の情報社会への深い懸念を示して動画を締めくくった。

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