AI関連銘柄が軒並み値を上げる相場の中で、実力に見合うだけの評価を得られずにいるのがQualcommという半導体メーカーだ。スマートフォンやパソコンなど身近な機器の頭脳を支える企業でありながら、株価だけが取り残されているという奇妙な現象だ。実業家のマイキー佐野氏が、この矛盾の正体を丁寧に読み解いている。
 
Qualcommが磨き上げてきたのは、通信を介さず端末そのもので処理を完結させる技術だ。独自設計のCPUコアへと舵を切ったことで処理性能が大幅に向上し、消費電力も抑えられたという。AI処理専用のプロセッサーと画像処理を担うチップが役割を分担し、通信を使わずに音声や画像の処理を高速化する仕組みも整えた。パソコン向けの分野でも省電力性能を武器に存在感を示し、一時は他社を出し抜く形で基準をクリアした実績も持つ。
 
とはいえ盤石とは言い難い。台湾の有力半導体メーカーはパワー重視の設計で瞬間的な性能を競い、大手IT企業も自前の通信モジュール開発を進めているとされ、供給関係そのものが揺らぎかねない緊張が漂う。パソコン向けでは競合のCPUメーカー各社も性能を次々と引き上げており、優位性を維持し続けられるかは予断を許さない状況だ。
 
業績を支える柱はスマートフォン向け事業だが、この部門の売上は前年から二桁近く落ち込み、利益率の高い製品の縮小が全体の収益力を押し下げている。一方で世界のAI投資マネーは巨大データセンターへと吸い寄せられており、Qualcommが主戦場とする端末側の技術は、その潮流の外側に置かれた格好だ。買い替えを後押しする決定打的な用途がまだ乏しいことに加え、メモリー価格の高騰が製造コストを押し上げ、状況を一段と厳しくしているのが実情だ。
 
それでも佐野氏は、この停滞を実力不足ではなく巡り合わせの問題だと言い切る。特許を巡る対立が続く一方で、新技術への布石となる買収を重ね、これまでとは異なる市場への参入を進めてきた。評価が一変するタイミングがそう遠くない可能性も浮かび上がる。半導体業界の勢力図に関心がある人にとって、次の転換点がどこにあるのかを考えさせられる内容だ。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営