エステーのCM「震災を利用した」の思いを今年は脱却する

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こんにちは。エステー特命宣伝部長の高田鳥場です。ご無沙汰しておりました。昨年は、いろいろと企業のコミュニケーションについてこの場で語らせていただきました。当初は「震災後のコミュニケーション」ということがテーマで、それから2011年の空気に合う広告をいかにして作るかがテーマとなりました。

昨年のエステーのコミュニケーションはポルトガルの少年・ミゲルが歌うCMを核としたところがありますが、2012年、エステーはそこから一歩先に進み、「歌の力」をテーマにコミュニケーションをしていきます。

【昨年のテーマは「震災」ミゲルを経て今年は「歌の力」へ】

今回のCMは、フジテレビ月9ドラマ『ラッキーセブン』の放送に合わせて、消臭力、自動でシュパッと消臭プラグなど様々な商品を同じ設定のもと、流していくシリーズです。場面はとある宴会場のような場所。ここには多数の男女が参加しています。そこに「吉田治」というハッピを着た人物が登場し、サックスを吹き始める。

そして、壇上のスクリーンに「思い出」の写真が投影されます。これらの写真は、過去のエステーCMに出た映像の静止画やメイキング写真などですが、これに合わせ、吉田さんがCMソングをサックスで吹いて皆が一緒に歌う、というもの。最後は太目の誠実そうな男性が応援団長のようにハッピを着て謎の行動を取りCMは終了します。

今回、ミゲルは主役ではありません。商品が「消臭力」の場合は時々スクリーンには映りますが、それだけです。昨年ミゲルのCMを作る時は、地震でダメージを受けた日本のことをなんとしても「少しでも日常に戻り、また皆で立ちあがろう」と呼びかける一つの存在になることをイメージしましたが、今年のテーマは「歌の力」です。だから、ガラリと変えました。


昨年は確かにミゲルにすがった部分があります。でも、今年はミゲルからもらった「歌」の力が何をもたらすか?を考えた結果、ミゲルという個人ではなく、「歌」でストレートに企業・商品のPRをしていきたいと考えました。

【「震災を利用した」という罪悪感を今年は除去していきたい】

CMに出てくる歌って、人の記憶に残すための、いわば「商業ソング」「コマーシャルソング」です。しょせん。しかし、今年の私はコマーシャルを超えた「歌の力」をCMを通じて訴えかけたいと思ったのです。

そう思った理由のひとつは、なんだかんだいって、消臭力のCMがメディアから「震災後を代表するCM」という冠で取り上げていただいただけに、私の心の中で「結果的に震災を売り物にすることになってしまった…」という罪悪感も存在するからです。ミゲルの歌は消臭力とエステーのコミュニケーション上は重要でしたが、震災を利用してきた、という消せないものがあるのは事実です。

ただし、あれだけ話題になったし、多くの方がネットでオマージュ的に動画を作ってくれたり「消臭力の歌を歌ってみた」などとやってくれたり、T.M.Revolution西川さんがコンサートで歌ってくれたことについては皆さんに深く感謝いたします。そして、歌が人々を明るい気持ちにしたり、熱狂させたり勇気づける重要なものであったことをつくづく実感しました。

だからこそ、今年は震災を「利用」せずにピュアに「歌の力」を言えればいいなぁ、と思ったわけです。これからエステーは月9CMをはじめとし、どんどんCMを作っていきますが(そんなに多くは予算の関係上流せませんが…)、CM内の「歌」がどんな作用をもたらすか、企業コミュニケーションにどんな影響を与えるのかを見極めていきたいです。

ところで、2月6日から始まる「思い出の会」CMシリーズでサックスを吹く「吉田治」さん。ハッピを着た人のよさそうなおじさんに見えますが、彼の演奏は聞けば聞くほど「この人の演奏、無駄にいい!」と思うことでしょう。あの音が本物である、ってことは分かると思いますよ。彼が誰かはぜひ、検索して調べてみてください。実はすごい人ですよ。

2月6日からはエステーの第二章が始まります。ここが、「日常に戻ろう」と言いつつも、まだ日常に戻れない方への応援歌になればいいな、と思っています。

文/高田鳥場(エステー特命宣伝部長)

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