《「5時間も睡眠を取れた」投稿が大炎上》高市早苗首相“自己犠牲型のリーダー”にあるあるな「時間労力バイアス」と、世論の変化に気づけない「視点取得の欠如」
報道各社が行っている世論調査による内閣支持率は下落が目立ち始めた。毎日新聞の調査では支持率41%に対して不支持率が44%と、不支持が支持を上回ったことが話題になっている。
その結果が公表されるなか、高市早苗首相が7月20日夜にX(旧ツイッター)へ「0時間から3時間睡眠が常態化」などと投稿し、炎上した。臨床心理士の岡村美奈さんが、高市首相が多忙アピールを繰り返す理由について分析する。
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約600字にもおよぶ「忙しい」投稿には、7月に入ってから土日は公邸で深夜まで資料を読み、国会答弁の準備やメールの処理に追われていたことが書かれている。平日は公邸に戻ってからも家事と資料読みに追われていること、祝日の「海の日」には久々に5時間の睡眠がとれ、アイロン掛けや裁縫をしたことなどを明かした。
「いったい何のアピール?」
そう思わせるこの投稿が、ネット上での炎上に繋がってしまった。
そもそも、高市首相は「働く」という言葉をよく使う。
就任時に語った「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」は話題になり、首相のイメージアップにも一定つながり、その年の流行語大賞にもなった。懸命に働くことや多忙をアピールするのは、そこに首相にとっての信念と価値観があるからだろうが、これこそ炎上を起こした落とし穴だといえる。
自己犠牲型のリーダーが陥る「時間労力バイアス」
かつて、多忙は有能というイメージが強かった。昭和の時代なら、多忙は責任感が強く、真面目で、仕事ができて、周りから必要とされていることを表す一種のステータスみたいなものだった。多忙をアピールする人には、誠実に頑張っていれば周りから認められるはずという思い込みがあったし、自分はこんなに忙しいと認識することで、社会から求められているという自尊心を満たしやすい傾向もあった。世間には寝ずに働くことが美徳みたいな価値観が確かにあった。
今回のSNSを始め、これまでの首相の言動を見ていると、寝食を忘れて愚直に誠実に働くという姿勢を強くアピールしている。不眠不休で国政に向き合っているというコメントからは、自己犠牲的なハードワーカーであることを重要視していることがわかる。
たしかに、高市総理は自己犠牲型のリーダーだろう。こういうタイプのリーダーは、時間や労力を成果の質と同一視したり、時間や労力を多くかけたものほど価値が高いと判断してしまう「時間労力バイアス」がかかる傾向があるといわれる。だから多忙アピールを繰り返すのだ。
このタイプのリーダーは昭和や保守的な価値観では評価され、年配層には好印象を与えるが、現代の若者の価値観とは遠くなる。現代はどれだけ時間をかけたか、真面目に誠実に取り組んだかより、アウトプットやパフォーマンスで評価される。
国民の間では「働き方改革」や「健康管理」が強く意識されているのに、一国のトップが睡眠不足をアピールするようでは、自己管理ができているのか、重大な決断ミスを起こすのでは?と危機管理上の不信感も生じてくるだろう。
キャパオーバーで頑張ると起きること
さらに、SNSの投稿から高市首相の性格的な傾向をみると、完璧主義であり、お裁縫の箇所にはカッコで何をやったかまでコメントを入れるなど、ディテールにこだわるタイプだとわかる。
このタイプは、誰よりも努力して自分で責任を果たしたいという強い意志があり、努力したものほど価値があると思い込みがちだ。
また、なんでも自分で判断して決断しようとし、人に任せるのが苦手なことが多い。本人は誰にも頼らず抱え込み、1人で頑張って努力する姿を見せているつもりだが、すべてを把握しようとして背負い込むため、優先順位づけや選択するのも苦手。
主婦として細かな家事も一人でこなしたという投稿は、首相として庶民的で親しみやすい親近感をアピールする狙いがあったのだろう。だが、それらを強調することで、優先順位づけが不得意で、人に任せられる仕事まで自分で抱え込みやすいという印象がついた。
抱え込みタイプの人が頑張ろうとすると、自分の言動が他人にどう映っているのかという「視点取得が欠如」して、客観的に判断できなくなりがちだ。キャパオーバーになっても頑張り続けようとするため、世論や世間で潮目の変化が起きても気づけない。
高市首相は潮目の変化を読めていない、と特に思わされたのは、7月4日の「日本ジュエリーベストドレッサー賞」の表彰式への出席だ。
特別賞を受賞し煌びやかなジュエリーをまとって「このジュエリーの輝きのように、多くの日本にいらっしゃる皆さんが『日本の未来は明るい!』と、そう思っていただけるように一生懸命働いてまいります」とコメント。多忙にもかかわらず表彰式にも顔を出したのは、人気があってパワフルで優秀なリーダーを印象づけたいと思ったからかもしれないが、世間の受け止めは逆だった。
国会に出席する時間はないのにイベントには出る。優先順位がおかしいと批判を浴びた。このあたりから首相への批判や非難が増え始め、ついには内閣支持率が政権発足後最低を記録した。
政権への支持率が高い時は、多忙アピールや親近感のあるコメントもポジティブに受け止められるが、世論の目が厳しくなれば、国民が望む結果が出ていないとネガティブな評価に変わる。高市政権も正念場ということだろう。
