林家正蔵

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 2年ぶりに落語界最大の団体「一般社団法人落語協会」のトップが交代した。先代会長の柳家さん喬(77)の後任は九代目林家正蔵(63)で、先月30日に都内で行われた会見には大勢の報道陣が集まった。

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 芸能デスクが解説する。

「正蔵は2014年から10年以上も副会長を務めており、会長就任は半ば既定路線でした。1987年に林家こぶ平として真打に昇進し、05年には祖父が七代目を名乗った正蔵を襲名していました」

 記者たちを前に、正蔵は率直な心情を打ち明けた。

「神妙な顔つきで“私でいいのかな、という思いもありました。強烈なカリスマ性の人をねじ伏せるような名人芸にも至っていない。ただ、(理事会で)会長にと勧められ、それを断るとバチが当たるような気がしました”と語っています」(同)

 神様までも引き合いに、

「(自分は)“おやりなさい、という声に従う生き方をしてきたので、芸の神様が目の前に置いてくれたものをお断りすることは失礼になるだろう。やるだけやってみようという気持ちで純粋に引き受けました”と、覚悟を決めた経緯も口にしていました」(同)

「温厚な人柄で、人望が厚い」

 落語界には「落語協会」のほか、「落語芸術協会」「落語立川流」「五代目円楽一門会」「上方落語協会」という計5団体がある。中でも落語協会はおよそ350人が所属する大所帯だ。

林家正蔵

「昭和の歴代会長には桂文楽、古今亭志ん生、三遊亭圓生、平成にかけては共に人間国宝に認定された柳家小さんと柳家小三治(共に故人)など、時代を代表する名人たちが名を連ねています。正蔵は温厚な人柄で、うるさ方が多い落語界でも人望が厚いことで知られる。芸に真摯に向き合ってきたこともあり、落語協会の総会では、正蔵の就任を満場一致で認めたのです」(前出のデスク)

 もっとも、本人はかねて会長就任に向けた準備にも取り組んでいたようだ。

「読書家らしく“組織のリーダーはどうあるべきか、サッカーの監督や将棋連盟会長の本、英国の首相だったチャーチルに至るまでいろんな本を読んだりして学びました”と明かしました」(同)

 父は“昭和の爆笑王”の異名を取った初代林家三平で、弟は二代目林家三平(55)。息子二人も落語家で、長男は来年3月に真打昇進を控える林家たま平(32)、次男は昨年5月に二ツ目に昇進したばかりの林家ぽん平(29)だ。彼らを含めて8人の弟子を抱えている。

 落語協会関係者が言う。

「正蔵は会見で家族にも触れました。“(林家)一門の兄さん方は、おかみさん(母の海老名香葉子さん)=故人=が生きていたらねえって、ちょっと涙ぐんでいました。でも、親父もおふくろも生きていたら、私が会長になるとは想像もしていないと思います”と、しみじみ語っていた。私も目頭が熱くなりましたよ」

バラエティー番組への出演を封印

 正蔵は78年に高校に入学すると、実父の三平に入門した。体形が小太りだったことからこぶ平と名付けられたという。80年代にはテレビ界に進出し“いじられ役”としてお茶の間で親しまれた時期もあった。

「テレビCMにも起用される売れっ子でしたが、九代目林家正蔵を襲名した後はバラエティー番組への出演を封印しました。古典落語の修業に本腰を入れ、15年には文化庁芸術祭で優秀賞を受賞しています」(前出の関係者)

 ベテラン演芸担当記者も目を細める。

「会見では“落語家になりたかった。ほかの道を考えたことはない”と語る場面もありました。いまや落語一筋で、最近は古典の掘り起こしや若手育成にも熱心に取り組んでいます」

 副会長は近く決まる見込み。その候補には、さん喬の弟子・柳家喬太郎(62)や、柳家三三(52)らの名が挙がっている。

「週刊新潮」2026年7月16日号 掲載