「鼻をかむ行為」の“NGな方法”とは?耳に現れる“初期症状”も解説!【医師監修】

耳・鼻・のどは「耳管(じかん)」と呼ばれる管でつながっており、鼻にかかった圧力が中耳にまで伝わる仕組みになっています。鼻を強くかむという日常的な行為が、実は繊細な鼓膜にダメージを与えるリスクをはらんでいることをご存知でしょうか。本記事では、そのメカニズムから予防法まで、わかりやすく説明します。

監修医師:
大津 和弥(医師)

三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。

鼻を強くかむと鼓膜が破裂するメカニズム

鼻をかむという行為は、日常的に繰り返されるごく普通の動作に思えます。しかし、その力加減を誤ると、耳の奥にある繊細な組織に取り返しのつかないダメージを与えることがあります。このセクションでは、鼻を強くかむことが鼓膜の破裂につながるまでの仕組みについて、わかりやすく解説します。

耳・鼻・のどはつながっている

耳と鼻は一見すると別々の器官に見えますが、実は内部で密接につながっています。鼻の奥と耳の中耳(鼓膜の内側の空間)をつなぐ管を「耳管(じかん)」と呼びます。耳管は通常は閉じており、飲み込みやあくびをしたときなどに一時的に開いて、中耳内の気圧を外の気圧と等しく調整する役割を担っています。飛行機に乗ったときに耳がつまった感じになるのも、この気圧調整がうまくいかないために起こる現象です。また、耳管は中耳の換気や分泌物の排出にも関わっており、耳の健康を維持するうえで重要な働きをしています。
鼻をかむとき、鼻腔(鼻の穴の内側の空間)には一時的に強い圧力がかかります。このとき、耳管を通じてその圧力が中耳にも伝わりやすい状態になります。通常の力でかむ分には問題が生じにくいのですが、両方の鼻を同時にふさいで強く圧をかけると、この圧力が一気に中耳へと流れ込む可能性があります。特に風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻の粘膜が腫れている場合は、耳管の働きが低下していることがあり、圧力の影響を受けやすくなると考えられています。
さらに、鼻やのどに炎症が起きている場合には、鼻の奥に存在する細菌やウイルス、分泌物が耳管を通じて中耳へ入り込むことがあります。その結果、中耳炎を引き起こしたり、耳の痛みや耳閉感(耳が詰まったような感覚)が生じたりすることもあります。小さな子どもは耳管が短く太いため、大人よりも鼻と耳の影響を受けやすく、中耳炎を発症しやすいことが知られています。
このように、耳・鼻・のどは独立した器官ではなく、互いに深く関係しています。そのため、鼻の症状だからといって耳への影響がないとは限りません。鼻をかむ際は片方ずつ優しくかむことを心がけ、過度な力をかけないことが大切です。耳の痛みや違和感、聞こえにくさなどの症状が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診して相談するようにしましょう。

強い圧力が鼓膜に与えるダメージ

鼓膜は、外耳道(耳の穴から中耳までの通り道)と中耳の境界に位置する、厚さわずか約0.1ミリメートルほどの薄い膜です。音の振動を受け取って内耳へ伝えるという重要な役割を持ちながら、その構造は繊細で傷つきやすい性質があります。

鼻を強くかむことで中耳内の圧力が急激に上昇すると、鼓膜はその内側から強く押される形になります。この圧力差が一定の限界を超えた場合、鼓膜に穴があく、いわゆる「鼓膜穿孔(こまくせんこう)」と呼ばれる状態が生じることがあります。鼓膜穿孔が起きると、突然の耳の痛みや聞こえにくさ、耳鳴り、場合によっては出血を伴うことがあります。こうした症状が出た場合は、自己判断で放置せず、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
また、鼓膜の破裂とまでいかなくても、繰り返し強い圧力がかかることで耳管やその周辺の組織に炎症が起きやすくなります。これが後述する中耳炎リスクの上昇にもつながっていきます。強くかむという行為が一見すると小さな習慣であっても、耳の健康に対して与える影響は決して小さくありません。

まとめ

鼻を強くかむという何気ない行為が、鼓膜の破裂や中耳炎といった深刻な耳のトラブルにつながる可能性があることをご理解いただけたでしょうか。正しいかみ方を身につけることは、耳と鼻の健康を守るための大切な一歩です。風邪や鼻炎の症状が長引いている場合や、耳のつまり感・聞こえにくさを感じている場合は、ぜひ耳鼻咽喉科への受診をご検討ください。日常の小さな習慣の積み重ねが、耳と鼻の健康を長く守ることにつながります。

参考文献

慶應義塾大学病院 聴覚センター「中耳炎」 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気