[7.2 W杯決勝T1回戦 スペイン 3-0 オーストリア ロサンゼルス]

 北中米W杯を戦うスペイン代表は2日、決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)でオーストリアと対戦し、3-0で勝利した。試合のマン・オブ・ザ・マッチには2ゴールのFWミケル・オヤルサバルではなく、右サイドで再三のドリブル突破を見せたFWラミネ・ヤマル(バルセロナ)が選出された。

 ヤマルはゴールこそなかったが、0-0だった前半の時間帯にDFコンラッド・ライマー(バイエルン)のいる右サイドを何度も切り裂き、先制につながる圧倒ムードを演出。もっとも、大勢の報道陣の前でインタビューに応えるヤマルの表情は固く、ある記者から「それほど笑っていないのはゴールを取れなかったから?」という質問が挙がるほどだった。

 ところが母国の大きな期待を背負う18歳はこの質問にも「もちろん幸せだよ。でも試合が終わったから次の試合のことを考えないといけないんだ」と応じ、堂々の振る舞いを見せていた。

 ヤマルはグループリーグ終了後、スペインのラジオ局に出演した際に「フランスはEUROから僕たちに勝っていない。僕たちよりは優れていない」というコメントを残し、大きな波紋を呼んでいた。

 インタビューでは明らかに先の発言を意識したのであろう「これからW杯を勝ち進み、決勝に進むことにどれくらい自信がある?」という質問も挙がったが、「全ての面で成長し続ける必要がある。でも自分たちの実力は示すことはできている。どのチームも恐れてはいない。僕たちはスペイン代表だし、それをピッチ上で証明しないといけないけど、自分たちのことを信じている」と淡々とやり過ごした。

 さらにラウンド16はポルトガル対クロアチアの勝者との対戦とあり、「クリスティアーノ・ロナウドと対戦することについてどう思う」とも聞かれていたが、表情を崩さずに「正直言ってあまり気にしていない」と返答。「代表でプレーするのはもちろん名誉なことだけど、試合に勝つことだけを考えていて、相手が誰でも関係ない」と話した。

 また今大会にかけるモチベーションに関する質問には「僕は思うんだけど、W杯より素晴らしいものは何もないよね」と大会を盛り上げる言葉も。続けて「子どもがサッカーの夢を見る時、やっぱり代表チームでプレーをして、W杯に出ることを夢見る。だから僕はここにいるんだ。次のラウンドに進み続けて、スペイン代表でW杯で優勝するという夢を叶えたい」と熱いコメントを残した。

 インタビューの中で唯一、ヤマルが表情を緩めたのは3歳の弟のケインくんに関する質問が挙がった時のことだった。ケインくんはオーストリア戦の観戦に訪れており、チームの3点目が決まった後、大喜びする姿がテレビカメラに抜かれていた様子。その写真を見せられたヤマルは笑顔で家族への愛を口にした。

「弟が幸せそうにしているのを見るのは感動的だ。それに母がずっと夢見てきた人生を過ごしているのも、友達がいるのを見るのも嬉しい。弟のことは息子のような存在だと思っていて、彼には深い愛情を感じている」

今年1月のヤマルとケインくん

 家族の存在は初のW杯を戦う重圧に対処するのにも役立っているようで、「家族とたくさんの時間を過ごすことがプレッシャーに役立つ。ありのままの僕を見てくれる唯一の人たちだから」とも語ったヤマル。最後は「(重圧を乗り越えるためには)楽しむべきだと思う。選手キャリアは短いし、18歳でW杯に出られるのも今だけだから」という達観した言葉も残し、取材エリアを後にした。

(取材・文 竹内達也)