長年、劇団で活動し、6年前から「耳の聞こえないアイドル」として活動を開始した中嶋元美さん。 元々、小さいころからバレエが好きでステージに立って活躍する事を夢見ていたが、中学生の時「感音性難聴」の診断を受け、高校生の時、完全に音を失った。そんな失意のどん底で出会ったのが手話だったという。

【映像】耳が聞こえていたときの様子(実際の映像)

「学校でも周囲とうまく話ができず、友だちもどう私に接すればいいか分からなくなって、次第に心も離れた。仲のよい友だちはいなかったけど、手話と出会い、意思疎通が出来るようになると、コミュニケーションが取れる素晴らしさに気づいた。完全に耳が聴こえなくなった事を逆に感謝したい。そんな気持ちになった」(中嶋元美さん)

 『ABEMA Prime』では、中嶋さんに自身の生い立ち、ステージにかける思い、手話でのパフォーマンスについてを聞いた。

■突然の失聴、そして手話との出会い

 中嶋さんの生い立ちについて、手話通訳としてマネージャーの蓮子さんを介して語られた。「生まれつきおそらく難聴だったと思うが、気づいたのは中学生のとき。健康診断の聴力検査で引っかかって、大きな病院で検査した方がいいと言われたのがきっかけだ。病院に行った時に『感音性難聴』と言われた」。

  そして、「そのときに初めて自分が聞こえづらいことを知った。それより前を振り返ると、耳鳴りとかは小さいときからあった。でも、みんな同じだと思っていたが、違うことに気づいた。中学生のときは、高い音が聞こえづらいレベルで、障害者手帳をもらうレベルではなかった。だけど、高校1年生のマラソン大会で、何かきっかけがわからないけど、頭痛がして倒れて、起きたら耳が聞こえなくなっていた」と振り返った。

 耳が聞こえなくなってからは、「頑張ってきたバレエの夢がなくなってしまったとき、母親から手話パフォーマンスの存在を教えられた。試しに講座へ行った際、初めてろう者に会い、手話で話しているのを見た。難聴のときは声で話していても聞き取りづらく、自分を押し殺していたが、手話を見て初めて言葉が見えた。言葉が伝わってきたし、これが言葉なんだと思った」。その後、ろう学校へ転校し、毎日友達と言いたいことを質問し合いながら手話を覚えたという。

■音のない世界でリズムを刻む

 耳が聞こえない中でステージに立つ中嶋さん。そのパフォーマンスについて、「幼少期からバレエ経験で、踊りのリズムが体に染み付いている。さらに大きくなってからは手話パフォーマンスに出会い、カウントという方法を学んだ。『12345678』という8拍子のカウントを、ステージの見える位置に立つスタッフから視野で捉えて踊るのがベースになっている」と説明する。 

 また、ミュージカルなどでキャストと共演する際は、周囲の歌う呼吸や肩の動きを見てタイミングを掴んでいるという。「新しい歌は練習が必要だ。何回か積み重ねて練習を覚えた後であれば、タイミングが分かってできるようになる」。 

 歌詞を手話で表現することについては、「日本語は曖昧に表現する部分が多いが、手話ははっきり表す言葉が多い。翻訳するときに意味をまず考える。J-POPなどの流行りの歌は、新しい言葉の組み合わせが多く翻訳しづらいが、歌詞を見て、手話で歌うように選んでいる」と明かした。 

■「前例がない」の壁を越えて

 しかし、社会的な壁も存在した。芸能活動においてオーディションで表現力を絶賛されても、「前例がない」「成功例がない」「その後どう売り出していけばいいかわからない」という理由で保留されることが続いた。日本にはまだロールモデルが少ないため、「ろう者だから無理ではないか」という固定観念を持たれることが多い。 

 そんな中、中嶋さんは劇団四季のメンバーなどトップクラスの舞台俳優が出演するミュージカルに抜擢された。起用を決めた演出家は「彼女は想像力や感じていることを表現する力が長けている。彼女の手話を見ているだけで音楽が聞こえる錯覚があるのは、彼女にしか出せない魅力だ」と評し、その役柄はろう者などではなく、他の出演者と同様いち役者として舞台に上がる。

 中嶋さんは「ずっと憧れていた。私は聞こえなくて手話を使うが、ろう者の役ではない。手話で自分の言葉として演じられるのが本当に嬉しい。これから見てもらう人にこういう方法ができるんだと示し、次に繋がっていけたらいい」と期待を込めた。

 最後にポジティブに進んでこられた理由を問われると、「すごく悩んで辛くても、人生もったいない。今の環境が変えられないなら、新しいやりたいものを見つけて、手話のパフォーマンスをやってみたいと目標を決めた。舞台に立つのが好きだという気持ちを持ち続け、バレエとは違う方法でも、自分ができるのならこれを目指した方がいい。未来に向かって頑張っていこうと思った」と答えた。 

(『ABEMA Prime』より)