【新「内部文書」入手】辞任理事長が明かした「職員理事への権力集中」…!千葉商科大クーデターの深層
辞任理事長が残した「告発文書」
千葉商科大学を運営する学校法人千葉学園で起きたクーデター騒動。
(前編こちら→『NHK元人気キャスターの学長が「理事全員辞任」を要求…!千葉商科大クーデターで起きた前代未聞の大混乱』)
理事会で過半数を握ったクーデター派に押し切られる形で、改革を主導してきた理事長・内田茂男氏は理事長・理事を辞任した。
これに対し、学長の宮崎緑氏と同窓会長の高橋伸治氏は理事会で「理事全員の辞任」と「理事会の刷新」を求めたが、多数派に無視された。
後任理事長にはクーデター派が擁立する瀧上信光常務理事の就任が有力視される一方、宮崎学長は制度上、理事を辞めることができず、理事会に残って対峙せざるを得ない状況に置かれている。
では、なぜ千葉学園ではこのような事態が起きたのか。
編集部では、評議員らに届けられた内田氏の「理事長辞任および早期の経営正常化について」という文書を入手した。
そこには、ハラスメント問題をきっかけに始まった理事会対立の経緯とともに、「職員理事への権力集中」「密室での意思決定」「ガバナンスの脆弱性」といった、大学統治の根幹を揺るがす問題が記されていた。
ハラスメントをめぐる「理事会政変」
まずは、経緯から振り返ろう。
クーデターが勃発したのは4月8日。
露崎洋事務局長と東海林真巳法人本部長(ともに理事)が理事長室に来て、突然、「ハラスメントの証拠がある」と語り、内田氏がやりとりしたメールや発言記録などを示したことが発端だった。
関係者によれば、「証拠」とされた資料には5年以上前のメールなども含まれていたという。
露崎氏と東海林氏は理事長室でハラスメントの証拠を突きつけて、内田氏に理事長を辞めるよう要求し、「辞任しないなら理事会で問題にする」と発言したとされる。
さらに、5月1日、露崎理事名での臨時理事会の開催要求を内田氏に送りつけ、ハラスメント問題の審議と内田氏の理事長および理事解任を議題にするよう求めてきたという。
規定では理事による理事会開催要求を拒否することができないため、内田氏は5月15日に臨時理事会を招集。理事長提案の議題として、今回のクーデターを仕組んだ露崎氏、東海林氏の理事解任を提案した。
13人の理事のうち、宮崎学長、高井宏章附属高校長、磯山友幸統括学長補佐、高橋同窓会長の4人は、内田氏を支持した。ところが、露崎氏、東海林氏ほか、中立とみられていた学外理事を含めてクーデター派が過半数を握っていることが判明する。
これに内田氏と改革を進めてきた高井氏と磯山氏は強く反発。抗議のため、相次いで理事辞任に踏み切った。
そのため、内田氏も理事会の中で抵抗するのは難しいと判断し、5月27日の理事会で、理事長・理事を辞任した。
理事会に先立ち開かれた評議員会では、「混乱の責任をとって理事全員が辞任し、体制を一新すべきだ」という声も出たが、その後も理事会刷新に向けた具体的な動きは見られていない。
消えた「被害者救済」
ハラスメント問題に端を発した今回の騒動だが、こうした経緯を見る限り、ハラスメント問題への対応と理事会内の権力構造の問題が複雑に絡み合っているようにも見える。
総務部長やその上司にあたる露崎氏は被害者とされる人物から相談を受けていたにもかかわらず、これまで内田氏に対してハラスメントの注意や警告は行っていなかったという。
同校の関係者によれば、こうしたハラスメントについては、本来「ハラスメント防止委員会」に被害を訴える事になっているが、この措置も取られてはいなかった。
ハラスメント問題が政争の具に利用されたのであれば、むしろ、コンプライアンス上、由々しき問題と言える。
「職員理事」という死角
さらに、ガバナンスの観点から問題なのは、事務局長と法人本部長の職員理事がクーデターを主導したということだ。
行政改革においてもしばしば事務方の反発が改革を後退させる例が散見されるが、大学においても職員理事の存在が改革の成否を大きく左右することが、改めて示されたことになる。
内田氏が辞任文書で問題視したのも、この「職員理事への権力集中」だった。
本来、理事会は大学執行部を監督する立場にある。ところが今回の騒動では、事務局長や法人本部長といった執行側の職員理事がクーデターを主導したとされる。
企業や大学を問わず、執行する側と監督する側の境界が曖昧になれば、組織運営は密室化しやすい。内田氏は辞任文書のなかで、自らがそうした構造を許してしまったことこそ、今回の混乱の根本原因だったと総括している。
千葉学園で起きた今回の騒動は、一大学の内紛にとどまらない。
2025年の私学法改正によって学校法人ガバナンスの強化が求められるなか、学校法人における職員理事の位置付けや、執行機能と監督機能の分離のあり方を改めて問いかける事例として、今後議論を呼びそうだ。
内田氏は、自らが身を引くことで、早期の経営正常化の第一歩になるというのが、辞任の真意だとしている。
その上で、ガバナンスの立て直しを訴えている。
次ページからは、内田氏が辞任の際に示した文書の全文を公開しておこう。
今回のクーデターの本質が見えてくるはずである。
理事長「退任文書」の全文
2026年5月27日
理事長辞任および早期の経営正常化について
この度、一連の混乱の責任を取り、千葉学園の理事長および理事を辞することを決めました。本日27日、理事会に辞任届を提出いたします。
すでに臨時理事会後に磯山理事、高井理事が辞任済みのため、私の辞任により、理事は寄附行為の定める下限(11人)を下回ります。理事会におかれては、早期に欠員の補充ならびに新理事長の選出を進めるよう要請します。
ご承知のとおり私は、本学園の生き残りをかけて連続改革を掲げ、改革を進めて参りました。その改革の担い手として招いた磯山理事、高井理事が辞任し、本理事会ではもはや私の改革を進めることは不可能であると判断いたしました。
私が辞任する真意は早期の経営正常化にあります。まずは最も重い責任を負う私自身が身を引くことこそ、その第一歩になると信じ、決意を固めました。
また、私個人として現在、一連の非違行為について、理事等を相手取った法的措置を弁護士と協議中です。そうした異常な状態では、理事会に留まって学園経営に当たることは不適切であると判断しました。
今後も、監事による正規の調査には引き続き全面的に協力することを重ねてお約束します。
2011年から常務理事として、2019年から7年弱は理事長として、多くの教職員の皆様とともに学園の発展の先頭に立てたことは、私の誇りとするところです。一時は経営危機に瀕した学園は今、大学・付属高校とも多くの学生・生徒を引きつけ、地域社会からも支持される存在になりました。不断の連続改革に取り組んでこられた関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。
同時に、教職員の努力を無にしかねない現在の事態を引き起こしたのは、ひとえに私の不徳の致すところであり、痛恨事です。振り返れば、職員理事への権力集中や密室での意思決定を許してしまったガバナンスの脆弱性について、私の認識不足と対応の遅れがあったことは否めません。
かかる事態を二度と招かないよう、今後の経営正常化のプロセスで、業務執行(教学・事務)と監督機能の明確化、評議員会による牽制機能の実質化、理事の定年制と在任期間制限の導入、理事及び理事長の選任プロセスの透明化など、開かれた先進的なガバナンス体制の構築が進むことを切に期待します。
最後にもう一度、関係者の皆様に心からお詫びを申し上げるとともに、長年のご厚情とご尽力にあらためて感謝いたします。
内田茂男
さらに『【内部文書入手】千葉商科大「クーデター」の全内幕…理事長が告発した“密室解任”で崩壊する私大ガバナンス』でも内紛の詳細を報じている。
