「障がいがあるというだけで“怖い”と決めつけられてしまう」ダウン症児が身近にいた二人が問う「ふつう」と「障がい」の境界線――椎木里佳×こだま
 デビュー作『夫のちんぽが入らない』がドラマ化もされた作家・こだまさん。彼女が特別支援学校の寄宿舎で出会ったダウン症の青年“けんちゃん”との交流をもとにした初の創作小説『けんちゃん』に今、静かな反響の波が広がっています。

 女子高生起業家として話題を集めた実業家の椎木里佳さんも、『けんちゃん』に心動かされた一人。幼い頃からダウン症の従兄弟・俊太朗さんと共に育ってきた椎木さんは、小説の主人公・けんちゃんの描写に、従兄弟と重なる部分を見出したといいます。

 そんな二人が初めて邂逅。ダウン症児のリアルな日常の姿や、社会が抱く障がい者への偏見、スローガン化する「多様性」への違和感、そして誰かを追い詰めることのない「自立」のあり方まで、広く語ってもらいました。

◆好きなものにまっすぐで嘘がない。“けんちゃん”と“俊さん”の共通点

――『けんちゃん』を読んでの椎木さんの率直な感想はいかがでしたか?

椎木里佳さん(以下、椎木):小説の中のけんちゃんの姿は、私の従兄弟の俊さん(俊太朗さん)とも重なる部分が多くて、「そうそう、こういうところあるよね!」とすごく共感しながら読ませていただきました。

こだまさん(以下、こだま):ありがとうございます。椎木さんがInstagramなどにアップされている俊太朗さんとの写真を見ると、小さい頃から一緒に過ごして成長を共にしてきたことが伝わってきます。

椎木:けんちゃんはペプシやドリフが大好きですが、そういった独特のこだわりがあるところは俊さんそっくり。学生時代はファーのようなふわふわしたものが大好きで、見つけるとずっと触っていました。あとは、嵐の櫻井翔さんの大ファンで、曲の中の決めポーズをよく真似していますね。

こだま:え、本当ですか!? 実はけんちゃんのモデルとなった子も嵐が大好きで、自分の家計簿に、なぜか嵐の5人の収入と支出を勝手に考えて、家計管理をしていました。

椎木:嵐好きという思わぬ共通点が(笑)。けんちゃんも俊さんも、率直で嘘がなくて、好きなものにはまっすぐ。嫌なものは嫌だとはっきりしているところが似ていますね。私が難しく考えすぎてしまっているときに、「いいね」「楽しいね」とすごくシンプルな感情で肯定してくれる俊さんの存在に救われることもたくさんありました。人生のさまざまな局面で、周囲からの見方や扱いが変わっても、俊さんだけはフラットだったなと思います。

こだま:私が特別支援学校の寄宿舎で働きはじめたばかりの頃、なかなか周囲の輪に溶け込めずに一人で洗面所を掃除していたことがありました。そのとき、けんちゃんのモデルになった子がすーっと近寄ってきて、無言で一緒に掃除をしてくれたんです。無理に言葉を交わさずとも、黙って寄り添ってくれるだけで気持ちがすごく軽くなったのを覚えています。

椎木:社会や他人に対して偏見を持っていないからこそ、思わず自分をさらけ出したくなってしまうような魅力が彼らにはありますよね。

◆障がい者とのタッチポイントが増えれば、無知や偏見は減ると思う

――幼少期から一緒に育ってきた椎木さんが、俊太朗さんの障がいを初めて意識したのはいつ頃ですか?

椎木:俊さんが他の子と違うのかもしれない、と思ったのは、私が幼稚園の年長くらいの頃。水族館で体調が悪くなってぐずりはじめた俊さんを見て、すれ違う人から「やばくない?」「変わってるよね」といった奇異な視線を向けられたときでした。大きくなるにつれて、周囲からの「かわいそう」とか「見ちゃダメ」といった心ない言葉を耳にするようになって、世間からはそういう風に思われるんだ、ということを初めて知った感じですね。