「宇野昌磨の頭の中」を覗かせて――本人にお願いしたら見えた、飾らない発言の根源「何も考えてないんです」
インタビュー前編、自身初プロデュースのアイスショー「Ice Brave」が11月第2弾
フィギュアスケートの元世界王者で、現在はプロスケーターとして活躍する宇野昌磨さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じた。自身が初プロデュースするアイスショー「Ice Brave」第1弾が成功に終わり、11月14日から第2弾の東京公演が行われる。競技の舞台からは離れ、アイスショーを作り上げる中でどんな思考が脳内に広がっているのか。宇野さんの頭の中を覗かせてもらった。(前後編の前編、聞き手=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)
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――競技引退から1年以上が経過しました。現役時代とは違った日々を過ごす中でどんな思考が生まれ、磨かれているのか、今回は「宇野さんの頭の中」というテーマで少しだけ覗かせてください。
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
――現役時代とは違う経験も重ねてきました。引退前後でのフィギュアスケートに対する考えの変化について教えてください。
「まず、競技者としてやっていたフィギュアスケートは『スポーツ』の認識でした。もちろんその中に自分のやりたいこと、やりがいはありましたが、一番の基盤として『競技であり、スポーツだ』という意識があったからこそ、最も点数になるものをやらなければいけない。
『スポーツ選手として素晴らしい結果』を得るためにやっていて、自分の目的、やるべきこととも一致していたんです。ただ、最後の1〜2年ですかね……世界で1位(22、23年の世界選手権を連覇)になることができて、その先を考えたとき、やりたいこととやるべきことの2つが枝分かれしてしまった。
そこから1年間続けてみて、2つがマッチしていた時より『ちょっと苦しいな』という思いもありました。いろんなことが重なり、ほかのスポーツ選手と比べるとかなり早いですけれど、引退をさせていただいた。引退したのちもこうしてアイスショーができていることは恵まれすぎていることではありますが、今はアイスショーを作ってみて良かったなって思えています」
――競技者として「最も点数になるもの」というとジャンプになるのでしょうか。
「そうですね。ジャンプの成否がいい演技、悪い演技と言われる部分。もちろん、それが難しいことであるからこそ大事ではあるのですが、僕が小さい時にどんなスケートを見て憧れたかを考えたんです。ゆづ君(羽生結弦さん)たちを見て、こんな凄い人間、スケーターになれたらいいなって思ったし、いつか同じ舞台で戦えるようになりたいと思っていました。
一方で、幼少の時に見て一番惹かれたスケーターは高橋大輔さん。表現力が唯一無二で、自分にしかできないと思えるスケーターになりたいという希望が、基盤としてありました。競技に身を置いているうちはジャンプだとか、結果を残すことに妥協ができず、貪欲にならないといけない。幼少の頃に憧れたものを目指し、技術をもっと伸ばしたいと思った時に、引退という選択を考えました」
――宇野さんは自分の気持ちを偽りなく、分かりやすく表現される印象があります。Xの投稿でも話題になりますが、発信する立場として考えていることはありますか。
「特に何も考えてないんです。ビジネス的な建前、自分の感情が本心じゃないものを話すのが苦手というか。できなくはないのですが『好きなようにしていい』という環境で育ててもらったからこそ、戸惑ってしまう。自分の本心の言葉じゃないときに、言葉に詰まってしまうことが多かった。その時々、いろんな変化があれど、自分が発信したいもの、本質をそのまま何も考えずにしゃべらせてもらっています。
インタビューも10回同じことを聞かれるより、会話のように話す方が好きだなって思います。SNSも、僕はインスタグラムの方が早く始めたのですが、もともとキラキラしている側の人間ではないので(笑)。ゲーム好きでインドア、仲間うちで笑い合える感じが性に合っている。どっちかっていうとツイッター(X)のほうがとは思いますけど、意図的にとか、そういうのはあまり考えてないです」
バズ状態が続くSNSは「本人です」「ありのままの感情をぶつけて…」
――注目されているXのアカウントが本人のものか、偽物なのかユーザーの間でも話題になりました。
「本人です(笑)。最初にちゃんと言っていたんですけど、なかなか……。もちろん僕を長く応援してくれた人は気づいていましたけど、初めて僕のアカウントを見た人は『確かに、本人か怪しい』って」
――Xを始めるきっかけはありましたか。
「YouTubeで始めたゲームの界隈で、ツイッターが(活動的なユーザーが)多いことは知っていて。最初は『この動画を上げました。ぜひ見てください!』みたいな感じのアカウントにするつもりだったんですけど、スイッチ(Nintendo Switch 2)の抽選で外れた時に、結構ムカついて(笑)。そのままSNSに乗せるようになってから面白くなってきて、その時のありのままの感情をぶつけさせてもらっています」
――自身初プロデュースの「Ice Brave」第1弾が成功し、11月から「Ice Brave 2」が開催されます。プロデューサーとして一番大変だったことは。
「スケーターあってのショーなので演者側も大変だとは思うんですけれど、やっぱりそれを支える裏方さんはすごく大変なんだなって思いました。何をするにあたっても、演者が伸び伸び、自由にできるようにいろんな予想とサポートをしている。僕も今回、半分そっち側に立たせてもらったからこそ、すごく難しかったです。
出演スケーターは真面目な人ばかりなのですごく楽な方であることに間違いはないのですが、全員に『これはこうする』という共通の認識を伝えるのも、人数が増えれば増えるほど大変。自分が『こっちに行くよ』って指をささないと、何も物事が動かないことが最初はすごく大変でした。
何をすればいいのか、何と声をかければいいのか。『頑張ってこの声をかけよう!』と思っていたんですけど、みんながしっかりしていたので。最後の方は結構みんなに甘える形で僕も伸び伸びやらせてもらっていながらも『これはこうしようか』みたいな感じで方向性を定めてきました」
――アイスショーを作り上げることは、選手時代とは全く別ものでしょうか。
「別ものですね。競技の時はやっぱり個人競技で、自分がうまくできるかできないかにかかってきますし、他のスケーターと関わる時も友達としてという感じなので。今回はもちろん競技じゃないことも大きいですけど、スケーターのみんなやお客さんと楽しさ、熱をその場で共有するっていうのはすごく楽しいなって思いました」
(後編に続く)
■宇野昌磨アイスショー「Ice Brave」
宇野さんが現役時代に滑ってきた数々の名プログラムを、新たな演目として昇華した自身初プロデュースのアイスショー。6月に愛知、福岡、新潟で公演を行って大好評となり、11月からは第2弾が開催される。90分間ノンストップ、本田真凜や本郷理華を含めた8人のスケーターが音楽ライブのような熱狂を生み出す。東京公演は11月14日から江戸川区スポーツランドで3日間開催。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

