By Daniel Rocal

アメリカ東部のセイラム村で少女が突然暴れ出し、その少女の周りにいた人々もまた異常な行動を起こすようになったことで、村人の魔女狩りが行われた一連の事件が「セイラム魔女裁判」です。無実の人々が拷問されるなどした痛ましい事件で、最終的に19名の村人が絞首刑に処されたわけですが、セイラム魔女裁判の原因は集団ヒステリーではなく「LSD」だった、ということを説明するムービーが公開されています。

The hallucinogens that might have sparked the Salem Witch Trials - YouTube

「セイラム魔女裁判」とは、1692年2月から1693年5月にかけてアメリカ・マサチューセッツ州のセイラム村で行われた「魔女狩り」のこと。



複数の少女が突然暴れるなどの行動を取り始めたことから魔女狩りが始まり、さらに総勢200名近くの村人が「魔女」として告発され、19名が処刑されるという悲惨な結果になりました。



一連の騒動は、集団ヒステリー、政治的敵対者の排除、あるいは行きすぎた清教主義が原因と言われています。



もし、「セイラム魔女裁判」に別の原因があるとすればどんなことでしょうか?



魔女狩りの原因は「パン」だったかもしれません。



1970年代に心理学者Linnda Caporael氏が、セイラム魔女裁判が起きたのは「麦角菌」が原因だった、と報告しています。



麦角菌はおもにライ麦から発見され、麦角菌を持つライ麦パンなどを食べることで、「麦角中毒」と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。



麦角中毒に陥った人は、手足の壊死(えし)や……



腸や腹部をつねったり刺したりするような、転げ回るほどの痛みを訴えます。このような急激な麦角中毒の症状は、セイラム魔女裁判の報告書にある「異常な行動」とも一致するとのこと。



そして、麦角菌が人体に与える影響は「痛み」だけにとどまりません。



強力な幻覚剤として知られる「LSD」は、麦角菌から合成されます。



LSDとして濃縮されていない麦角菌だけでも、幻覚作用があることが確認されています。セイラム魔女裁判の報告書では「煙突の中に小さな光を見た」と述べる男性がいたことも記録されているため、「魔女の魔法」として捉えられた現象は、幻覚として説明できるかもしれません。



さらに当時の村人は、告発された人物が魔女かどうか調べるため、ライ麦と"魔女の尿"を混ぜて作られた「魔女ケーキ」を犬に与えるという方法をとりました。



魔女ケーキを食べた犬がどのような反応を見せたかについてはあまり記録が残っていませんが、感染した犬がけいれんなどの症状を見せれば、「魔女である証拠」と見なされた可能性は充分に考えられます。



また、1692年はセイラム村がある地域で嵐が発生したことがわかっており、麦角菌の繁殖に適した条件がそろっているとのこと。



一年後に魔女裁判が終わったのは、1693年に干ばつが起きたことも麦角菌が死滅したことと一致します。



しかし、当時のセイラム村の人々の健康状態は良好で、麦角中毒を促進させるビタミン欠乏症になっていたとは考えにくいと言われています。そのため、麦角中毒がまん延する兆候は見られない、という説もありますが……



考えられる理論的な説は、健康状態の悪かった奴隷を介して感染が始まったというもの。村人と奴隷の少女が集まった時に、麦角が感染したと考えられます。



このように、「魔法の正体は麦角中毒である」という説を支援する学者は多いものの、最終的に村人たちを魔女裁判に送ったのは当時の社会だった、ということは忘れてはいけない事実です。