『絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで』ダニエル・スミス (著)   小野智子 (訳)  片山美佳子 (訳)  /  日経ナショナルジオグラフィック社

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エアフォースワンが乗っ取られて、すわ大統領暗殺か! という内容の海外ドラマを見たのが、たぶんこれはドラマ用の内部設定なんだろうな、エアフォースワンの内部なんて公開したら危険だものなと思っていた。ところがどっこい、なんと書籍で公開されていた。

こ、公開してもいいんだろうか……と小市民ながらに心配になってしまったが、そんな重要な情報を惜しげもなく載せているのが、日経ナショナルジオグラフィック社から発売されている「絶対に行けない世界の非公開区域99」である。

エアフォースワンの内部の他に、旧KGB本部の中、ソマリアの海賊の町、ペンタゴン、エリア51、CIA本部、「契約の箱」の礼拝堂、ヘビ島、グーグルデータセンター、コカコーラのレシピ保管庫、ガザ地区の密輸トンネルなどなど、他の情報もやはり公開してもよいのだろうか? と不安になってしまうものばかりである。

若干ダークサイド要素が強い私は、99もある行けない場所の中でも特に、死体の損壊や腐敗状況などを調査するための場所である「法医人類学研究施設」の死体農場に釘付けになってしまったが、こちらの書籍の編集を担当された葛西さんがこれはおもしろい! と思った施設や場所について聞いてみた。

「『オーク島の巨大な竪穴』は初めて知りました。カナダで発見された竪穴です。発見されたものを見ると人為的なもののようにも思えますし、図解を見ると階層化した遺跡のようにも思えます。誰が何のために造ったものなのか、ぜひ本でご覧になって推理していただきたいです」
「また、『ヒトラーの地下壕』の現状も興味深いものでした。戦後完全に破壊されたと思っていましたが、この書籍の編集にあたることでそういえば詳しいことは知らなかった、と気づきました。地下壕は、戦後は東ドイツの管理下にあり、東西ドイツ統合後の現在は駐車場の下に隠れているとは、非常に意外でした。写真を見ると、本当に普通の駐車場です」

『オーク島の巨大な竪穴』の章を読んでみると、1795年に突然現れた竪穴があり、過去に何度も発掘が試みられたらしいが未だにその秘密は暴かれていないらしい。穴の底には海賊キャプテン・キッドの宝があるという説や、“黒ひげ”ことエドワード・ティーチの宝だという説もあるらしい。その他にも、テンプル騎士団の失われた宝物やマリー・アントワネットの宝石なんていう説も! 実際に何が埋まっているのか、推察したり、妄想するだけでときめきが止まらない。

また、ヒトラーの地下壕については、無知な私はてっきり歴史的施設として保管されているのかと思っていたが、ドイツ政府によってひっそりと葬り去られ、表面上は今ではただの駐車場となっているようだ。(書籍には駐車場の画像が掲載されています)

想像を掻き立てられる場所もあれば、そうだったのか……とその前後の歴史をついつい調べだしてしまう場所もあり、一冊ですごいお得感があるこちらの書籍であるが、もともと海外で発行されたものを日本で出版することになった経緯を葛西さんに聞いてみた。

「当初は、旅行ガイドの1冊として『絶対に行けない』ガイドというのは面白いのではないかという企画でした。ですが、本書の企画の少し前に『本当にあった 奇跡のサバイバル60』というノンフィクションを刊行しており、こちらがたいへん好評でした。これも読みやすいよう、図版が多く入っている本です。これと並ぶ、肩ひじ張らずに読めて、写真なども沢山入っている本として翻訳出版をすれば、同様に楽しんでいただけるのではないかと考えました」

確かに、この書籍はすべての章を写真つきで3ページ程度にまとめており、なぜ行けないのか? のポイントが端的にまとまっているので、「なるほどね〜」と、行けない理由と内容をすぐに理解して楽しむことができる。また、書籍で気になる場所を見つけたら、それについてまた自分で突っ込んで調べてみる、といった楽しみ方もできるだろう。
新たに得た知識を誰かに話して、話題のひとつにすることも楽しいだろう。気になる人に話してみたら、「あらやだ、博学!」と思われたりするかもしれない。

最後に、このワクワクドキドキする書籍をどのような方に読んでもらいたいか、葛西さんに聞いてみた。

「子どもの頃、宇宙人や秘密結社といった話をわくわくしながら読んでいた方にはうってつけと言えると思います。大人になった今でも、謎や未知のものに好奇心を持っているような方です。もちろん怪しい場所ばかりではなく、ナショナル ジオグラフィック本誌で取材した、ヒッグス粒子で話題のCERN(欧州原子核研究機構)や、メキシコやガザの密輸トンネルといった場所も掲載されています。本書では噂話で終わるのではなく、現状や社会背景が説明されていますので、童心に返って楽しみつつも大人の鑑賞に堪える内容です。難しい本ではありませんので、写真やイラストを眺めながら、息抜きに読んでいただければと思います」

そういえば子どもの頃、空を見上げて宇宙のはじっこはどうなっているのだろう? と考えたり、世界のどこかにあるだろう騎士団的な秘密結社にいつか入って王子様に会えたりするのだろうか? と思春期特有のこじらせ方をしていたが、そのときのこじらせ方が今の自分を作っている気がしないでもない。

小さい頃そんな妄想をしたり、つちのこを探しに行ったことがあったり、未知の世界に思いを馳せた方や、今でも都市伝説や謎についつい惹かれてしまう方には、ぜひ手にとっていただきたい一冊だ。きっと、ご満足いただける秘密と謎があるだろう。
(梶原みのり/boox)