8月1日現在、巨人は45勝48敗1分で、3位のDeNAと3.5ゲーム差の4位につけている。7月こそ13勝8敗1分と勝ち越したものの、5月から6月にかけて球団ワーストとなる13連敗を喫するなど、なかなか勢いに乗れない戦いが続いており、2006年以来となるBクラスも現実味を帯びている。ここから巻き返し、クライマックス・シリーズに進出できるAクラスになるには何が必要なのか? 巨人OBの槙原寛己氏、鈴木尚広氏に聞いた。
※成績、記録はすべて8月1日現在のもの


鈴木尚広氏がキーマンに指名する長野久義

 まず巨人の今シーズンの戦いについて、両氏の見解を聞いてみた。

「13連敗したときもそうでしたが、投打のかみ合わせがよくないですね。投手がいいピッチングをしているときは打者が点を取れない。逆に、打者が点を取るときは投手が抑えきれない。今年の巨人に限っては、勝ちパターンが確立されていません。それがここまで苦しい戦いを強いられている最大の原因ではないでしょうか」(槙原氏)

「球団史上最多となる13連敗を喫したことはもちろん痛かったですが、それよりも広島に勝てないことの方が深刻だと思います。一度、苦手意識を持ってしまうと、なかなか抜け出せません。私も現役時代に中日に勝てない時期がありました。意識していないつもりでも先制されると後手に回ってしまいますし、リードしていても『いつか逆転されるのではないか』と不安になってしまう。今の巨人と広島の関係が、まさにその状況に近いと思います。まずは広島への苦手意識を払拭することが最優先でしょうね」(鈴木氏)

 鈴木氏が言うように、今シーズンここまで巨人は広島に対して4勝13敗と大きく負け越している。ちなみに、ほかの4球団には勝ち越しており、借金の要因が広島戦にあるのは一目瞭然だ。では、なぜ巨人は広島に勝てないのか。その理由を鈴木氏に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「明らかに力負けです。中盤まではいい試合をしていても終盤に引き離されてしまったり……戦力の厚みが違いますよね。投打ともに広島の方が力強い選手が揃っている印象があります。それに対抗するには、新しい戦力しかないのですが……なかなか出てこないのが現状です」

 今季、巨人の高橋由伸監督は開幕から岡本和真や重信慎之介を筆頭に、積極的に若手を起用してきたが、誰ひとりとしてレギュラーの座を獲得することはできず、気がつけば、中堅やベテランのいつもの顔ぶれが並んだ。槙原氏はこの現状に危機感を抱く。

「今シーズンは新戦力としてマギーや陽(岱鋼)が加わりましたが、やっぱりチームを根本的に変えるには生え抜きの若手が出てこないと……。高橋監督もシーズン序盤は積極的に若手を使ってきましたが、結局ものにならなかった。若手の突き上げがないと、競争にならないですよね。『もっと我慢して使うべき』との意見もありますが、チャンスは十分に与えたと思っています。戦力になれなかったということは、足りないものがあるということ。そういう状況だからチームに勢いが出ないし、野球自体も変わっていません」

 これまで巨人の野球といえば”ホームラン”というイメージが強かったが、現在、巨人の本塁打数は、セ・リーグではヤクルトに次いで少ない65本。かつての”一発攻勢”は鳴りを潜め、327得点も中日に次ぐ少なさで、明らかな得点力不足に陥っている。その現状を打破するためにも、チームとして走塁の意識を高めるべきと鈴木氏は力説する。

「今の打線は一発が期待できません。そんな状況にもかかわらず、昔と同じ野球をしている印象があります。私は、もっと足を使うべきだと思います。足を使うといっても、ただ盗塁を増やすとか、そういうことではありません。必要なのは隙を突いた走塁です。たとえば、ランナー一塁からヒット1本、もしくは2本で生還する野球ができるかどうかです。それを実践するには、打球方向、ポジショニング、相手野手の能力や動き方……など、そうした情報を把握しておかなければいけません。それを意識するだけでも、絶対に変わると思います。しかも足の速い選手だけがやるのではなく、チームとして徹底すべきです。これができるようになれば、得点力は上がりますし、相手も脅威に感じるはずです。接戦になればなるほど、そうしたアプローチが必要になってきます」

 最後に、Aクラス入りを果たすためのキーマンをそれぞれ挙げてもらった。

「菅野智之です。エースである彼が投げる試合は、絶対に落とせない。それに、ただ勝つだけでなく、チームに勢いをもたらすピッチングをしてもらいたいですね。菅野が勝てば、田口麗斗、マイコラスといった投手も楽になる。そうした相乗効果も期待できます。ここからは、菅野、田口、マイコラスの3本柱でどこまで貯金をできるかが重要になるでしょうね」(槙原氏)

「長野久義に期待しています。シーズン当初はまったく打てず、チームも低迷していました。今は2割6分程度まで上がってきましたが、これが2割8〜9分までくれば面白いことになると思います。身体能力の高い選手ですし、先程言ったように足が使える選手です。今は1番を打ったり、下位を打ったりしていますが、長野がうまく機能すれば間違いなく得点力は上がります。彼の出来が今後の巨人の命運を左右するといってもいいでしょう」(鈴木氏)

 果たして、巨人の巻き返しはあるのか。Aクラス入りをかけた熱く長い戦いは、いよいよ本番を迎えようとしている。

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