●『仮面ライダーゼロワン』から始まった俳優人生
映画『ブルーロック』(8月7日公開)で主人公・潔世一を演じる高橋文哉。2019年、『仮面ライダーゼロワン』(19)で主演を務め、本格的に俳優として歩み始めてから約7年。TBS『最愛』(21)、TBS『君の花になる』(22)、映画『交換ウソ日記』(23)、NHK連続テレビ小説『あんぱん』(25)など、話題作への出演を重ね、いまや作品の中心を担う俳優の一人となった。

その歩みを振り返ると、華々しい出演歴の裏で、高橋自身が芝居への向き合い方を少しずつ変化させてきたことが見えてくる。これまでマイナビニュースが伝えてきた本人の言葉から、その軌跡をたどってみたい。

高橋文哉 撮影:宮田浩史

○『最愛』で実感した「役者としての価値観」の変化

大きな転機となった作品の一つが、2021年放送のTBS系ドラマ『最愛』だ。高橋が演じたのは、吉高由里子演じる主人公・真田梨央の弟・優。事故による記憶障害を抱え、過去の事件にも深く関わる複雑な背景を持つ人物で、それまでの高橋のイメージとは異なるシリアスな役どころだった。

高橋は、吉高をはじめ、井浦新、松下洸平ら先輩俳優との共演について、「役者としての価値観も変わりました」と告白。作品が終わったときには大きく成長できているのではないかと、自身でも手応えを感じていた。特に吉高との芝居では、自分が想像していなかった感情を引き出される感覚があったという。そうした言葉からは、相手とのやり取りによって生まれる芝居の面白さを『最愛』の現場で実感していたことがうかがえる。

同年末には、翌年放送のカンテレ・フジテレビ系ドラマ『ドクターホワイト』(22)への出演も発表。当時20歳……『仮面ライダーゼロワン』でいきなり主演としてスタートした高橋が、さまざまな現場で先輩俳優たちと向き合いながら、“俳優として学ぶ時期”に入ったことがうかがえる。

○7期連続ドラマ出演 多くの役と向き合った20代前半

そこから高橋は驚くほどのペースで経験を重ねていく。俳優歴3年ながら7クール途切れることなく連続ドラマに出演。『最愛』に続き、『ドクターホワイト』、日本テレビ系ドラマ『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(22)など、異なる作品、異なるキャラクターに次々と挑んだ。

そして同年秋、大きな注目を集めたのが『君の花になる』だ。劇中の7人組ボーイズグループ・8LOOMのリーダー・佐神弾を演じ、俳優陣は実際にグループとしてデビュー。楽曲リリースやステージにも挑戦した。同年11月には『日経トレンディ』が選ぶ「2023年 来年の顔」に選出。高橋は「来年のお仕事により一層気合いが入る」と喜びを語った。前年の『最愛』で注目を浴び、その勢いを途切れさせることなく、俳優として一気に駆け上がっていた時期だった。



○恋愛映画初主演、そして「僕は芝居が好きです」

2023年には、映画『交換ウソ日記』で恋愛映画初主演を果たす。それまで“非日常的”な設定の役を演じる機会も多かった高橋にとって、同作で演じた瀬戸山潤は等身大の高校生。本人も当時、恋愛作品は経験が少なく、得意か不得意かも分からないほどだったと明かしている。主演決定時には、「新鮮な気持ちで楽しみたい」とコメント。新しいジャンルへの挑戦という意味でも、高橋にとって大きな作品となった。そして翌2024年、『交換ウソ日記』で第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。授賞式で語った言葉が印象的だ。

「僕は芝居が好きです」

デビューから約5年。『最愛』の頃には“芝居の楽しさと深さを学んでいる”途中だった高橋が、このときには、役を生きている時間こそ自分らしくいられるとまで語っていた。さらに、先輩たちが作り上げてきた映画界を「全速力で、エンジンフルで走り抜けて」、再びこの場所に立ちたいと宣言した。「芝居を学ぶ」段階から、「芝居が好きだ」とはっきり言える段階へ。高橋自身の言葉を追うと、その変化がよく分かる。

○「1人でも多くの人を救える役者に」

その思いは、さらに変わっていく。2025年2月、高橋は「エランドール賞」新人賞を受賞した。デビュー5周年を迎えた高橋は、それまでを振り返り、最初は芝居の右も左も分からなかったものの、いつしか「芝居というものが自分の人生の生きがい」になったと語った。

そして、今後について掲げたのは、「1人でも多くの人を救える役者」になること。俳優になったばかりの頃には“学ぶ対象”だった芝居が、やがて好きなものになり、さらに自身の人生の生きがいへ。そして今度は、自分が演じることで誰かに何かを届けたいという思いへと広がっていた。

●朝ドラ出演、企画プロデュースにも挑戦


○『あんぱん』では役を生きるため5キロ増、そして5キロ減

2025年、高橋はNHK連続テレビ小説『あんぱん』に初出演。北村匠海演じる柳井嵩の親友・辛島健太郎を演じた。高橋は健太郎を演じるにあたり、福岡から東京へ出てきた青年らしい雰囲気を作るため、まず体重を約5キロ増量。その後、戦争場面の撮影に向けて1週間で約5キロ落としたという。戦時中の食生活を意識し、実際に干し芋を1日1枚食べる生活を3日ほど試すこともあった。

「なるべくできるところはやろう」

そんな姿勢からも、役を外側から演じるのではなく、その人物が置かれた状況を少しでも自分の身体で理解しようとする、高橋の役作りへの向き合い方が見えてくる。また、北村との出会いについても「すごく大きい」と語り、芝居への意識や現場でのたたずまいなど、多くを学んでいると明かした。『最愛』で先輩俳優との共演によって価値観が変わったと語ってから約4年。キャリアを重ねてもなお、共演者から何かを吸収しようとする姿勢は変わっていない。

○主演だけでなく「作る側」へ

2025年には、さらに新しい一歩を踏み出した。縦型ショートドラマ『この恋は、理想形。』で主演を務めるだけでなく、初めて企画プロデュースにも挑戦したのだ。タイトルを考え、キャスティングに参加し、台本作りにも携わった。本人にとっては「何もかもが初めて」。それでも、スタッフやキャストに支えられながら作品と向き合う日々について、「自分は幸せ者」と語った。

役を与えられて演じる俳優から、自分自身が作品の形を考える立場へ。芝居をするだけでなく、タイトルやキャスティング、台本作りまで作品制作の領域へと関わりを広げたことは、高橋のキャリアにおける新たな一歩と言えるだろう。

2025年末には「GQ MEN OF THE YEAR 2025」のブレイクスルー・アクター賞を受賞。高橋は2025年について、朝ドラ初出演や初プロデュースなど「いろんな初めて」を経験したと振り返り、自ら掲げていた「挑戦の年」が形になったと手応えを口にしている。



○そして『ブルーロック』へ

そんなキャリアの先に待つのが、2026年8月公開予定の実写映画『ブルーロック』だ。高橋が演じる主人公・潔世一は、“ブルーロック”と呼ばれる施設でライバルたちとの熾烈な競争に身を投じ、世界一のストライカーを目指していく人物。物語の中で、自らの才能や“エゴ”を覚醒させながら変化していくキャラクターでもある。

振り返れば、高橋自身もまた、俳優として走りながら変化を続けてきた。2021年には「役者としての価値観も変わりました」と話し、芝居の楽しさと深さを知った。2024年には「僕は芝居が好きです」と言い切った。そして2025年には、芝居を「人生の生きがい」と呼び、「1人でも多くの人を救える役者」になるという目標を掲げた。

18歳で『仮面ライダーゼロワン』という大作の主人公に抜てきされた青年は、多くの役、作品、人との出会いを経て、25歳となった今、再び大きな作品の主人公を背負う。高橋文哉がこれまで積み重ねてきた芝居への思いは、潔世一という役でどんな形を見せるのか。『ブルーロック』は、俳優として走り続けてきた彼の現在地を映す一本にもなりそうだ。