妊娠、出産が怖い…分娩恐怖症『トコフォビア』に悩む当事者「きっかけは小学校の保健の授業」「スクリーンで叫び声や赤い血が出たのを見てショッキングだった」

先日、noteに投稿されたある記事が注目を集めた。「出産が怖い。出産への恐怖は過去のトラウマのせいです。出産はとても苦しそうで、自分には耐えられそうにない」。そう胸の内を綴ったのは、あまやどりさん、40歳だ。
【映像】「グロテスクさを感じ…」トラウマのきっかけとなった小学校時代の出来事(実際の映像)
投稿をきっかけに、あまやどりさんは自分が抱えている悩みに分娩恐怖症「トコフォビア」という名前があることを知った。妊娠や出産に強い恐怖を抱く症状で、人生設計にも影響を及ぼすことがあるという。日本では十分な研究が行われておらず、一人で抱え込み、悩み続ける当事者も少なくない。
なぜ出産への強い恐怖が生まれるのか。『ABEMA Prime』で当事者に話を聞いた。
■「そうじゃないって思うことも自然なのかな」名前を知って初めて感じた安堵

あまやどりさん(40)が出産への恐怖を抱くようになったきっかけは、小学校の保健の授業だった。「1学年100人くらいで体育館の大きいスクリーンで大音量で見た。叫び声とか赤い血が出たのを見てショッキングだった。怖い、自分にはちょっと無理だなという感情が強く出た。大人になれば薄れるかと思っていたが、あまり変わることなくずっと心にあり続けている感じ」。
トコフォビアという言葉を知ったことで、「同じように考える方が一定数いるんだなと分かった。ずっとポジティブな感想しか聞いたことがなかったので、そうじゃないって思うことも自然なのかなと思った」。子どもはとても可愛くて好きで、欲しいとも思っているが、「実際に出産を乗り越えられるのかはすごく不安がある」と続けた。
■「肩の荷が下りた」パートナーにも言えなかった葛藤

都内でカフェを営む高嶋みなみさん(40)も出産への恐怖を抱える一人だ。きっかけについて、「小学生ぐらいの時に出産・妊娠に関するエッセイ本を読んで、文字情報だからよりリアルに表現されていて、自分の体に起こることが具体的に想像できてしまったのがすごく大きかった」と明かす。
恐怖の核心は、妊娠そのものへの感覚にあるという。「妊娠自体が、自分の中に異物が寄生するというふうにマイナスの捉え方をしてしまう。お腹の中で動いたり蹴ったりを、妊娠している方は神秘的な現象として、愛情を持って捉えられると話しているが、私には怖い」。
結婚後も出産への恐怖を夫に打ち明けられなかった高嶋さんは、「子どもの頃から、結婚するなら子どもを産まなければいけないという固定観念を強く持っていた。出産したくないなら結婚しないと思っていたが、大人になって結婚したいと思える相手に出会い、覚悟を決めた」と話す。その後、夫が「子どもはいいかな」と言った瞬間、「肩の荷が下りる感じ」とともに、初めて自分の本音を打ち明けることができた。
しかし、「子どもが嫌い」というわけではない。「妊娠・出産された方にはおめでとうという気持ちが強くて、赤ちゃんが大好きで可愛くて仕方ない」。
■「いろんな選択を尊重していただける社会に」当事者が求めるもの

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長の海老根真由美氏は、トコフォビアについて「どの人も出産への恐怖心は持つと思う。医者が病気と判定するのは、そのことで日常生活に障害が出る場合だ。産むことができないとか、結婚もしんどいとか、そういう場合においてこの言葉が使われている」と説明。しかし、その実態は「外国の論文では13%程度と言われることはあるが、日本ではどのくらいいるのか分からない」という。
もし最初の出会い方が違ったら恐怖は変わっていたか。あまやどりさんは、「変わったと思う。例えば赤ちゃんの抱っこ教室とか、そういうところから入っていくアプローチがあれば」。一方で高嶋さんは「あまり変わらなかったと思う。感受性や想像力が豊かだとよく言われるので、どういう見方をしても、自分の中に子どもができると知った時点で感じ方は一緒だった」と答えた。
女性は子どもを産んで当たり前という社会的な空気について、あまやどりさんは「家族から言われることもあるし、結婚したらおめでとう、じゃあ子どもは?と続いていく。終わりがないところがしんどい」。
高嶋さんもSNSでの発信を通じて多くの人とつながった経験から、「子どもを持たない選択をしている人たちと多くつながったが、その中でトコフォビアの人は本当に1人2人ととても少なかった。子どもを持たない選択をしている人の中でも、妊娠や出産が怖いから産みたくないわけではない人がたくさんいると分かった」と語る。
そして現時点での自身の考えとして「トコフォビアを治療したところで子どもを持ちたくなるかといえばそうはならない。今の私は子どもがすごく欲しいとも思っていないし、子どもがいないことで人生に欠落しているとも感じたことがない。それであれば治療はしなくていいんじゃないか」との見方を示した。
あまやどりさんは「子どもを産む、産まない、養子を迎えるとか、いろんな選択を尊重していただける社会になったらいい。今までのこの気持ちに名前がついて、その付き合い方のヒントをこれからいろんな人と話す中でもらえるのかなと思う」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
