ある解説について振り返った鄭大世。(C)SOCCER DIGEST

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「本田圭佑のような解説をしておけばよかった」

 そう後悔を口にしたのは、元Jリーガーで人気解説者の鄭大世氏だ。知識や戦術を語るだけでなく、時にはクラブへの思いを前面に出すことも解説者には求められる--。そんな考えに至ったきっかけを明かした。

 W杯日本代表戦での本田の解説について、鄭氏は次のように語っている。

「ジャーナリズムでもない、選手目線でも監督目線でもないような解説。全く違う角度からアッパーカットを食らった感じです。酒のつまみになる解説ですよね」

 かつての鄭大世氏は、解説では「絶対に中立でなければいけない」という考えを貫いていた。その姿勢が裏目に出たと振り返るのが、24-25シーズンのACLE決勝、川崎フロンターレ対アル・アハリ(アル・アハリが2−0で勝利)の一戦だった。

「この時、めちゃくちゃ叩かれました。それまで色んな放送局で解説をやっていたから、絶対に中立じゃないとダメという恐怖観念がありました。だから、チームに関係なく良いプレーをしたら褒めて、上手くいっていない川崎はこうしたほうがいいと言っていたら、炎上したんです」
 
 この試合については、「本田圭佑みたいな立ち位置でいくべきだった」と振り返る。

「アル・アハリみたいな金満クラブに負けてられない、くらいのテンションでやった方が良かった」

 批判を浴びたことで、自身の立ち位置について改めて考えさせられたという。

「叩かれて初めて気づくことはありますね。フロンターレはブーイングをしません。選手時代、どんな負け方をしてもブーイングを受けた記憶はありません。僕はこの時、初めてブーイングを受けた。いやあ、辛いもんですよ。

 そんな解説をすれば、フロンターレのサポーターは僕が憎いですよね。フロンターレ出身の選手が中立的に話して、フロンターレを応援しないスタンスを取れば、サポーターが気に入らないのも分かります。でも、僕にとってフロンターレは掛け替えのない存在。一生、心の中で生き続けるクラブです。だから、ブーイングを受けたのは本当に辛かったですね」

 現在も、その経験は心に深く刻まれているという。

「行き場を失った気分です。今、フロンターレについて『大好き』と言うとわざとらしく聞こえる。ブーイングを受けたからそう言っている、媚を売っているように思われてしまう。だからすごくやりにくくて、この傷はデカい。(ワンピースの)ルフィの胸の傷みたいに一生残ります」

 本田の解説から新たな価値観を学び、自身の失敗を振り返った鄭氏。中立を貫いた末に浴びたブーイングは、愛するクラブへの思いが強いからこそ、今なお癒えない傷として残っている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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