【中村 清志】「網交換サービス有料」の焼肉屋が急増している”致し方ない”理由…元焼肉店経営者「タダだった昔とはワケが違う」

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たかが網、されど網――焼肉に欠かせない要素

「網交換100円」――かつては無料サービスが当たり前だった焼肉の網交換。それがここ最近になって、有料化に踏み切る焼肉店がどんどん増えていると聞く。結論から言えば、近年の焼肉店を取り巻く環境を鑑みれば、この流れも致し方ないと筆者は思う。

現在、輸入肉は牛や豚、鶏すべての価格がとてつもなく高騰している。くわえて中東情勢の悪化でガス代・電気代などの光熱費も上がり続け、そこに人件費の上昇も合わさって、焼肉店を取り巻く環境は“最悪”の状態だ。今年1〜6月の焼肉店倒産件数が過去最多を更新したのも、自明の理と言えるだろう。

かといって、焼肉店も肉の品質を簡単には落とせない。すれば顧客離反を加速させるからだ。だから乾いたタオルを絞るように、その他の経費を削減して収益改善に努めている。そのひとつが、件の「網交換有料化」というわけだ。

たかが網、されど網。焼肉においてその価値を高めるのが焼き網だ。本来なら「無料が当たり前」と思われるが、経費の圧迫度に直結する以上、背に腹は代えられぬ、と有料に踏み切る店が出てくるのも当然だろう。とはいえ、消費者目線でいれば、網交換が“100円かタダか”では、その店の評価もかなり変わってくるはずだ。

そこで今回は、焼肉店にとって網交換はどれほど肝となる要素なのか、かつて複数の焼肉店を経営していた筆者の目線から論じてみたい。

なぜ網交換をすべきか、目安はどれくらい?

そもそも、網交換を行うことで、焼肉にはどんな効果があるのか、基本的なところから立ち返っていきたい。想像通り、網が焦げてしまえば、それは焼肉の風味に様々な悪影響を及ぼす。

たとえば、焦げ部分から発生する苦味によって、せっかくの美味しい肉が不味くなる。肉がなめらかに焼きあがらないというデメリットが生じる。肉がもつ風味が最大限に引き出せなければ、焼肉の価値は半減するといっても過言ではないだろう。

特にカルビなどの脂の多い部位や、味噌ダレなどでもみ込んだホルモンを焼く際には、より網が焦げ付きやすいことで知られる。もしこの時、適切な網交換をしなかったらどうなるのか。

風味もさることながら、不要な有害物質を発生させ、健康を害する懸念がある。くわえて煙が増えれば、いくら無煙ロースターを使っていたとしても煙を吸い上げられず、店内の客全体に迷惑がかかることが容易に想像できるはずだ。

ちなみに「網交換の目安はどれくらいなのか」もよく聞かれる話題だ。筆者の考えでは、一般的には開始20〜30分程度が目安。あとは肉の種類や焼く量によって調整されるものとしている。たとえば大概の人なら、塩タンからはじまって徐々に赤身系の肉に移り、ホルモンの順に焼いていく。この時、カルビやホルモン、それにタレ漬けの肉を焼いた後には、網を交換したほうがいいだろう。

少なくとも、濃いもみダレにしっかり漬かった肉を焼いた後に、あっさり系の肉に戻ったり、あるいは繊細な味の高級部位に移る際には、網交換が必須と言える。汚れた網では、せっかくの高品質な肉も台無しになってしまう。

網交換でケチる必要が無かった時代

焼肉において網交換がいかに重要かが分かったところで本題に戻ろう。そもそも、なぜ網交換はこれまで“半ば慣習的に”無料だったのか。そしてなぜ今、有料化の一途をたどっているのか。その答えは、時代とともに焼肉店における客層が広がり、網交換の要求が増加したことに行き着く。

筆者が焼肉の食べ放題店を経営していた2010年頃を振り返ると、為替相場は1ドル90円台の時代。店で使用するロース・カルビ・上ハラミ・タンといった主要食材は米国産から豪州産に代替され、安定供給されていた。だいたい100gあたり150〜180円と今の半分以下であり、原価率も30%未満と低かった。

おかげで、お客さんからは「安くて美味しい」と褒められながら、同時に粗利益もしっかり確保できていた。だから店もコスト的に余裕があり、他の経費にも回せたから、わざわざ網交換でケチる必要もなく、求められたら無料で対応するのが当然だったのである。

ところが15年前と今では状況は一変している。冒頭で述べた通り、原価そのものが高騰して、当時のままでは経営維持が難しいというが本音だ。何より筆者が経営していたような食べ放題スタイルは尚更厳しい。何せ食べ放題の焼肉店は質より量の確保を優先するから、相対的に低品質の肉が多く、味付けでタレへの依存度も高くなっている。その結果、網が焦げやすく汚くなりやすいというわけだ。

また、この手の安価をウリにする店には困ったことに、「どうせ無料だから」と必要以上に何度も網交換を求めてくる客も出てきやすい。かくして網交換がどんどん増え、それに比例してコストが膨らんでいくという負のスパイラルに陥ってる状況だ。

こうした経緯を鑑みれば網交換の有料化も、ある程度受け入れなければならない時代に来ているということだろう。けっして店側も安直なカネ儲けに走っているのでない。あくまで焼肉という体験価値を落とさないための“苦肉の策”だということをぜひとも知ってほしい。

【後編記事】『「焼肉の網交換は本当に無料であるべきなのか」広がる有料化に賛否両論…それでも大手チェーンがタダを貫くワケ』へつづく。

【つづきを読む】「焼肉の網交換は本当に無料であるべきなのか」広がる有料化に賛否両論…それでも大手チェーンがタダを貫くワケ