株主総会の看板

写真拡大

この時期になると各社が集中して行う株主総会のラッシュが、終わりに差し掛かっている。建設的な意見だけではなく、突拍子のない意見も多々飛び交う経済の一大イベントでは、開催前から様々な情報が駆け巡り、投資家界隈を大いに賑わせた。

KADOKAWAの夏野CEOが「ABEMA Prime」に出演しすぎだと物言う株主が批判 今後はメディアへの露出を控えて経営に集中か

今年最も面白い株主提案として話題になったのが、いよぎんホールディングスに対するものだろう。社名を「いよぎん株主阿鼻叫喚(あびきょうかん)ホールディングス」に変更するとの株主提案は、普段株式投資や株主総会などになじみのない人にとっても、面白い出来事として捉えられている。同社の株主総会は26日に開催されたが、社名変更のお知らせなどのIRニュースは配信されていない。

もう一つ、面白いワードを株主総会で口にした人物がいる。ソフトバンクグループ(SBG)を率いる孫正義氏だ。恒例となっている孫氏によるプレゼンでは、AIに対する期待感、今後の計画に加え、SBGが保有する株式の価値について説明した。SBGをガチョウに、SBGが保有する株式を1兆円する金の卵になぞらえ、株主価値を説明した。SBGが金の卵を産んできたと語る孫氏は、「今から僕のことを孫ガチョウと呼んで、孫会長じゃなく…」と小ボケを挟み、会場では笑いが起きていた。

SBGとは対照的に、対決姿勢を前面に押し出した総会も当然存在する。KADOKAWAの経営方針をめぐっては、投資ファンドのオアシス・マネジメントが、株主総会において夏野剛CEOの解任議案に賛成するよう要請。ニコニコ動画の放置、夏野氏自身の不適切発言などを、KADOKAWAから去るべき理由として挙げた。この数日前にあったKADOKAWAの決算にて、不振の理由に「異世界系作品が多すぎた」というセンセーショナルな話題があったことから、会社の動向に注目が集まった。

だが、株主総会で最も盛り上がったといわれるのは、KADOKAWA元会長の角川歴彦氏が株主として質問した瞬間だった。今月中旬には、角川氏は夏野氏ら2人に対して合計2億円の賠償を求めて東京地裁に提訴しており、KADOKAWAの株主総会は2人にとっての前哨戦とも言える場に変わった。結果的にはオアシスが提案し、角川氏も賛同したとみられる解任議案は否決されたが、「再任に賛成」は60%を下回っている。あと1割が反対に傾いたら、夏野剛CEOの時代にピリオドが打たれていた。

日本経済新聞の報道によると、今回の株主総会では業績不振、不祥事を理由にした企業トップの選任案に対する反対票が相次いだという。実際、社長の娘がオフィスの一部をダンス練習で使用していると言われたペンタブレット製造のワコム、原発再稼働をめぐるデータ不正があった中部電力など、いずれもトップ人事は可決されているが、他の取締役と比較すると明らかに反対票が多い。ただ、少し毛色の違う反対票が入り乱れた会社がある。医薬品製造などの栄研化学だ。

同社は株主の約40%が投資ファンドになっており、その投資ファンド群の一つである「ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド」が、自分たちに関連する人物を取締役に入れるよう提案していた。残り約10%の個人株主らが賛成すれば議案は可決されるのだが、株主提案に対する論評を行う「議決権行使助言会社」の大手米企業が、ファンド側の議案に反対するよう意見を表明。賛成票は伸びることなく、取締役を送り込む作戦は失敗した。

フリーアナ兼株主が質問

株主総会のだいご味と言えば、一般の消費者が株主という立場になり、普段聞けないような質問をぶつけることができる質疑応答の時間がある。そこには悪ふざけであったり、自身の主義主張を押し通そうとしたりと、さながら総会屋のような動きをする人も少なからず存在するが、芯を食った真剣な質問をすれば、投資を続けるべきか否かの重要な判断材料を引き出すことも可能だ。

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドでは、年々値上がりするチケットなどの質問に対し、具体案を返答しなかったという投稿がX(旧Twitter)になされた。これに対し、公式リポストで「私の質問」と付け加えたのが、フリーアナの佐田志歩だ。松井証券が運営するYouTubeチャンネルで大ブレークし、昨年からはデイトレーダーとしても活動している佐田は「富裕層に向けた商品を増やすべきかと思いますが」という提案も行ったなどと付け加え、質問の真意と返答を明かしている。

同じくエンタメ領域で事業を展開するサンリオは、元常務による報酬の不適切な受領という不祥事を受けてか、例年華やかだった資料を簡素化して株主総会に臨んだ。厳しい質問だけが飛んでくる可能性もあったが、株主の一人から人気キャラ「ポチャッコ」の頭身に関する質問が寄せられた。着ぐるみで登場するポチャッコが三頭身から二頭身に変わり、抱きしめられる感覚が変わってしまったと語る株主に対し、社長の辻朋邦氏は「ショックな思いをさせて申し訳ない」「ポチャッコと話していきたい」などと回答したという。

なお、いよぎん株主阿鼻叫喚ホールディングスの株主提案に、どれぐらいの賛成が集まったのかはまだ明らかになっていない。「臨時報告書」という硬い表現の文書が開示されたら、一読してみるのも良いだろう。

文/池田聖人 内外タイムス編集部