「夏バテの馬はこう見分ければいい」荒れる夏競馬&新馬戦、矢作調教師が特別に明かした「攻略法」

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今月から2歳新馬戦がスタートした。わかりやすく言えば、競走馬たちのプロデビュー戦。そして、翌年のダービーなどを目指す若駒たちの戦いである。

新馬戦のカギを握る「調教時計」

ただ、競馬ファンにとっては予想が難しいことでも知られている。レースを走ったことのない馬を調教時計(練習で走った際の走行タイム)だけで判断するのは難しいからだ。そうは言っても、新馬戦の判断材料として、もっとも重要なのが調教時計であることは間違いない。

全体の時計も大事だが、特に注目したいのは上がりの時計(レースの最後の直線で、その馬がどれだけ速く走れたかを表すタイム)だ。操縦性が良い馬は、ラストで伸びるから上がりの時計が速い。逆に途中で無駄な力を使うとラストが伸びない。もちろん古馬にも同じことは言えるが、新馬では調教からそれができているかどうかが大事なポイントになる。

じつを言うと、我々でも、入厩して自分のところで調教をするまでは、その馬が走るかどうかわからない。牧場で出す時計は1ハロン(約200m)13〜14秒程度、上がり3ハロンでせいぜい40秒といったところだ。

しかし、レース前の追いきり(最後の仕上げ)では、上がり3ハロン36〜37秒の時計を出すこともある。これを僕らの用語で「追っぱなす」という。追っぱなしてみて、はじめてその馬の力がわかってくるのだ。

のちに三冠馬となるコントレイル(矢作厩舎)は、1発目の追い切りで「桁が違う」とわかった。ただ、通常は1回追い切っただけでそこまではわからない。フォーエバーヤングも、「こいつは走る」とわかったのは、実際にレースに行ってからだった。

成長とともに馬は変わる。血統が活きてくるのは、そこだ。血統が良い馬ほど、大きく成長する確率が高い。

馬の夏バテは“人間の症状”とそっくり

新馬がデビューする頃になると、我々が頭を悩ますことがある。それは暑さだ。馬はとても暑さに弱い。だから、夏バテ対策として調教やレースの後に水や電解質を飲ませているし、体にもたくさん水をかけてやる。

厩舎の馬房内にもミストと冷風機を装備するなど、少しでも夏バテを防ぐ工夫をするが、最近の暑さは以前とは次元が違う。今年は4月中に熱中症の症状を見せた馬がいたほどで、この時期になると夏バテの馬だらけになる。

馬の夏バテの症状は人間と似ている。食欲が落ちる。肌ツヤが悪くなる。目の周りが黒ずむ。呼吸が荒くなる。これらは典型的な夏バテの症状だ。

牡馬の場合、睾丸が腫れて大きくなることがある。睾丸が目に見えて大きくなったら、完全な夏バテと考えていい。

【後編記事】『JRAが決めた猛暑対策《1日7レースに削減》に対するホースマンの本音…矢作調教師は「北海道での競馬を増やしてほしい」』へつづく。

矢作芳人(やはぎ・よしと)/調教師。'61年東京都生まれ、開成高校卒。'05年に厩舎を開業し、無敗の三冠馬コントレイルや年度代表馬のフォーエバーヤングなど名馬を多数輩出。海外遠征で多くの実績を残していることから「世界のYAHAGI」と呼ばれる

週刊現代」2026年7月6日号より

【つづきを読む】JRAが決めた猛暑対策《1日7レースに削減》に対するホースマンの本音…矢作調教師は「北海道での競馬を増やしてほしい」