ベリンガムにとっても苦い一戦。ガーナと0−0。現実に引き戻されたイングランドは、支配率78%の先に、何を作れるのか【W杯】
ガーナとの0−0は、イングランドにとって大惨事とは言えない。グループステージ第2節を終え、首位通過の可能性は十分に残されている。だが、ドイツ人指揮官のその仕草は、この試合の意味をよく物語っている。初戦のクロアチア戦で膨らんだ期待は、ガーナ戦で一度、現実に引き戻されてしまった。
クロアチア戦のイングランドは実に痛快だった。特に後半は、前線からテンポ良く仕掛け、プレミアリーグの試合を思わせるスピード感と強度で相手を押し込んだ。決定機を次々と作り、4−2で勝利した後、トゥヘル監督は「パブで観戦しているファンを興奮させる試合だった」と満足げに語った。
しかし、ガーナはクロアチアとはまったく違う問題を突きつけた。クロアチアは前から来た。だからイングランドには背後やライン間にスペースがあった。
ところがガーナは、深い位置で粘り強く守った。カルロス・ケイロス監督が率いるガーナは、イングランドにボールを持たせることを受け入れたうえで、自陣に強固な守備ブロックを築いた。イングランドのボール支配率は78%を超えたが、それは試合を完全に支配していたというより、ガーナの狙いの中でボールを持たされた数字に見えた。
この試合のイングランドは、ボールを握った。ただ、横へ、後ろへ、また横へと、中央を固めるガーナの守備ブロックの外側をなぞる時間が長かった。ハリー・ケインが下がって受けようとしても、周囲のスペースは消された。ジュード・ベリンガムが背後へ飛び出す形も、クロアチア戦ほど機能しなかった。相手を崩すための幅、テンポ、意外性が足りなかった。
スタジオ解説を務めたウェイン・ルーニーは、イングランドの問題点をこう指摘した。
「相手が低いブロックを敷いているなら、クロスを上げないと。守る側にとって非常に難しくなるからだ」
さらにルーニーは、もっとプレーテンポを上げるべきだったとも語っている。イングランドは19本のシュートを放ったが、決定的に相手を揺さぶった場面は多くなかった。
後半途中にブカヨ・サカが投入されると、ようやく攻撃に変化が生まれた。右サイドで仕掛けることで、イングランドは少しずつゴールへ近づいた。英BBC放送が「サカは途中出場ながら希望を与えた」と評したのも当然だろう。
サカはアキレス腱を痛めており、今大会は途中出場が続いている。アンソニー・ゴードンもノニ・マドゥエケも、この日は相手を外から破る怖さを十分に出せなかっただけに、サカのコンディションは決勝トーナメント以降の行方を左右する要素の一つになるかもしれない。
なおタイムズ紙は、トゥヘル監督がリバプールの17歳FWリオ・エングモハを代表メンバーに入れなかったことを「悔やんでいる」と伝えた。 この快速ウインガーは、少なくともガーナ戦で先発したサイドアタッカーたちに欠けていた大胆さと予測不能性を備えている。エングモハを招集しなかった判断が、今後どのような意味を持つのかも注目される。
ベリンガムにとっても苦い一戦だった。「22歳359日」で代表50試合に到達し、イングランド史上最年少記録を更新したが、内容は記念試合にふさわしいものではなかった。苛立ちが見え、ガーナの選手やスタッフとやり合う場面もあった。
タイムズ紙が「代表キャリアでも最悪級の出来」と厳しく評したように、この日のベリンガムは苦戦した。ただし、ベリンガム個人の問題というより、チーム全体が解答を見つけられなかったことの影響は大きいように見えた。
英メディアの受け止めも、単なる取りこぼしというより、優勝候補としての課題を示すものだった。
BBC放送は、ガーナのケイロス監督が「イングランドには解決策がなかった」と繰り返したことを紹介した。タイムズ紙は、交代選手を投入しても続いた苦しみを「支配しながらも仕留められない苦痛」と描いた。
テレグラフ紙は、トゥヘル監督が両手で顔を覆う姿を取り上げ、イングランドが優勝候補としての評価を下げたとした。スポーツサイトのアスレティックが「あまりにも見慣れた光景」と表現したのも印象的だ。初戦で期待を高め、第2戦で停滞する。近年のイングランドが大会で繰り返してきた光景が、また戻ってきたのである。
優勝候補という言葉には、それ相応の説得力が必要だ。前から来る相手を勢いで打ち破るだけでは足りない。深く守る相手をどう崩すのか。支配率78%の先に、何を作れるのか。
ガーナ戦は、その問いをイングランドに突きつけた。トゥヘル監督のチームが次に示すべき答えは、そこにありそうだ。
文●田嶋コウスケ
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