今井晶也氏。営業支援会社「セレブリックス」で取締役/執行役員/CMOを務めつつ、セールス・エバンジェリストとして実践的な研究活動や情報発信を行っている

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営業というシビアな世界では、「売れる人」と「売れない人」という残酷な差が生まれる。しかし一方で、「なぜ、あの人だけが契約を取り続けるのか?」と周りから不思議に思われるトップセールスたちも存在する。
商品は同じ。価格も同じ。提案資料だって大差ない――。それなのに、一方は次々と受注し、一方は「検討します」で終わる。この差はどこから生まれるのか?トップセールスたちの現場を徹底分析すると、そこには“ある共通点”があった。

彼らは売り込まない。質問をする。しかも、その質問は相手の要望を聞くためのものではなく、相手も気づいていない“隠れた真実”を暴き出し、「このままではまずい」と自覚させるために質問を使っているのだ。

累計10万部突破のベストセラー『Sales is』シリーズの最新作『Sales is 2』では、そんなトップセールスたちが実践する「ファクトファインディング」という質問メソッドを公開している。「売れる営業」と「売れない営業」の商談は、根本的に何が違うのか。著者の今井晶也氏に教えてもらった。(以下は今井氏による寄稿です)

◆■「困りごと」を聞いても普通の情報しか得られない

私が所属する営業支援会社「セレブリックス」では、これまで1万2700点超の商品・サービスを支援してきました。そこから導き出された、「売れる人」と「売れない人」を分ける最大の差は、商談において相手に「何を問うか」です。

たとえば従来型の対話のように「今、どんなことでお困りですか?」と“困りごと”を聞き出していくと、どうなるでしょうか。この場合、お客様がすでにわかっている問題や、対応を始めている課題ばかりが浮かび上がります。つまり、すでにわかっている「顕在情報」しか触れられないのです。

その結果、セールスが得られるのは、すでにお客様自身が気づいている“過去の延長線上の課題”であり、本当のインサイトの発見には繫がりにくい。つまり、お客様の困りごとを起点にした「お困りごとドリブン」には限界があります。

だからこそセールスは、目の前にある「困りごと」をただ埋めようとするのではなく、あくまでお客様の「まだ見ぬ未来」を一緒に見つけにいくことが必要です。「どんな未来を迎えたいか」という理想を共に描き、そこから逆算して、今本当に取り組むべきテーマをあぶり出していく……。

この「未来逆算思考」を自分の中に据えられるかどうかで、あなたの発する言葉の重みはまるで変わります。

「理想を実現するためにどんなテーマに取り組む必要があるか?」
「その取り組みを進めるうえで、何が障害となり得るか?」

それらを商談の対話によって見つけていくことで、まだ見ぬ壁がはっきりと見えてきます。

◆■目線を変えて「事実を捉え直す」

そもそも、多くの企業にとって、「今困っていること」と「理想のために乗り越えるべき壁」は、まったく違う景色です。だからこそ、未来逆算思考という「新しい視界」を持ったあなたにしかたどり着けない真実があります。

具体例を挙げてみましょう。私がかつて、営業支援で「カーシェアリング」の法人営業を担当していたときの話です。

このサービスは、街中にあるステーションの車を、法人が必要なときにだけ「30分単位」などで利用できる仕組み。固定費をかけずに社用車をシェアできる、合理的なソリューションでした。

このとき、カーシェアリング会社は「月に一度、乗るか乗らないか」というお客様に対し、真っ正面から「お車のご利用で困りごとはありますか?」と尋ねていました。すると返ってくる答えは決まって「特にありません」のひと言。さらに「車は必要ですか?」と重ねれば、「ほとんど乗らないので、いりません」と、刺さる提案の糸口を見失っていました。