【ラーメン現代Lab.】【金子 大輝】閉店ラッシュの伍福軒「やはり天下一品の代わりは荷が重かった」オープン直後から《低評価レビュー》目立った理由

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株式会社魁力屋の傘下にあるエムピーキッチンホールディングが運営する、「東京背脂黒醤油ラーメン」をウリにしたラーメンチェーン「伍福軒」が閉店ラッシュに追い込まれている。同社の発表によれば、関東10店舗すべてが今年6月で完全閉店するというのだ。

「伍福軒」と言えば、昨年6月末に「天下一品」の大量閉店が報じられた直後、その跡地に次々と入居したことで話題を集めたことで知られる。だが、その話題性に反して、オープン直後から《低評価レビュー》がつづいていた。後々の閉店にも関連することとなる「低評価が相次いだ理由」を、あらためて探っていく。

【前編記事】『「天下一品の後釜ラーメン店」1年足らずで全店ガラガラ閉店へ…「質問すべてお断り」運営会社もダンマリ』よりつづく。

どの店もGoogleマップでは「星3」どまり

背脂黒醤油ラーメンを軸にしたラーメンチェーン「伍福軒」。運営会社は、かつて「天下一品」のフランチャイズを手掛けていたエムピーキッチンホールディングス。つけ麺チェーン「三田製麺所」を展開する有名企業が満を持して新ブランドを立ち上げたかたちだ。

だが――2025年秋頃を振り返ると、どの店舗も開店からまだ半年も経っていない中、Googleマップ上での評価は芳しくなかった。当時、もっとも評価が低い店舗は★2.6、★3.8を獲得している店舗もあったが、軒並み★は3前後で推移していた。

あくまで筆者の主観になるが、飲食店のGoogleレートは他の口コミサイトのそれとは別基準で考えている。★4.6〜5.0は新店か身内の客で回している店、超高級店なので縁がない(と判断する)ことが多く、★4.3〜4.5くらいだと超人気店(予約の取りやすさと兼ね合い)、★4.0〜4.2くらいだと使いやすい人気店(予算次第)という印象で店を眺めている。

★4を下回るとなんらかの「至らなかった点」がレビューされているケースが多く、★3.8からそれが顕著になり、★3.6以下くらいから「他に選択肢があればそちらに行く」決断をするようになる。なお、逆に一部レビュアーの執拗なネガキャンにより不当に評価を落としている良店もあるので、いちばんレビューを読みこむのはこのレンジなのだが。

チェーン店はGoogleで高評価を得づらい。外国人従業員の接客や衛生面、混雑によるオペレーションのミスなど、ケチのつけどころはいくらでもある。だからレビューの判断基準も7掛けくらいで見るのが適切だと思うが、それにしても、伍福軒に対していささか辛口(低評価が多すぎ)なのではないか……というのが、筆者が最初に抱いた感想だ。その原因を推察するべく、筆者は池袋店(2026年5月29日閉店)を訪れた。

一見、マイナスポイントは無さそうだが…

池袋北口から歩いて程なくして到着する池袋店は、たしかに天下一品の跡地に軒を構えている。入り口でキャッシュレス(交通系、ID、タッチ決済など)に対応していることを確認した。これはキャッシュレス時代に抗い続けた天下一品との大きな違いである。また、製麺のトップブランドである〈菅野製麺所 特製〉の看板が立てかけられていた。

平日の11時台に入店したが、客は10人ほどでそこそこの入りだ。二次元コードで注文するのは天下一品と同じ。背脂黒醤油ラーメン(並)と黒ヤキメシがセットになっている黒ヤキメシ定食(税込1055円)を注文した。

10分ほどで定食が運ばれてくる。ラーメンにはチャーシュー2枚、メンマ、ネギ、そして背脂がトッピングされている。真っ黒いスープをすすると、見た目ほど風味やパンチは強くない。背脂もそこまで押してくるテイストではなく、スープと黒ヤキメシそれぞれから、やや強い塩気を感じた。

筆者が繊細な味覚を持ち合わせないためか、感じたマイナスポイントはそれくらいだった。想像していたよりもオペレーションは普通で、キャッシュレス決済も利用可能、セットで1000円をわずかに上回る「1000円の壁」に向き合う価格設定など、ポジティブに捉えていい部分も多いのではないだろうか。

オープン直後のオペレーションへのクレームを差しひいたとしても、このような評価に沈んでいるのはなぜなのか。伍福軒各店のレビューを読んでいると、ひとつが筆者と同じように、スープに「塩気の強さ」を感じる一方で「コク」不足を指摘している向きが多かった。

脳裏に浮かぶ「京都の名店」…差別化は

こうした指摘をするレビュアーの一部の脳裏にあるのが、おそらく京都の名店「新福菜館 本店」の中華そばとヤキメシのセットだろう。土日には2時間待ちにもなる京都ラーメン界の雄も、黒いスープと黒いチャーハンが印象的だ。伍福軒は「東京背脂黒醤油ラーメン」を名乗り一線を画すが、このセットをチェーンの軸にしておきながら新福菜館の存在を知らないと言うには無理がある。

京都の名店と新興チェーン店のスープを比較してしまえば、たしかに及ばないところもあるだろう。はっきり「東京」と銘打っていることも含め、着想だけ拝借したものではないと、差別化を打ち出す必要があったように思える。

またチャーシューの質と量について触れられるレビューも多い。これは輸入豚肉の高騰が止まらないことも影響しているだろう。チェーン店に限らず、原材料の価格高騰で閉店を余儀なくされるラーメン店は多い。

優勝劣敗が進むラーメン界で、勝ち残っている店とはどこか――というと、ひとつの勝ち筋は「中毒性」である。俗に言うG系ラーメンや「蒙古タンメン 中本」のような旨辛系、そして「こってり」系だ。

いま関東圏で強い勢力となっているラーメンチェーンといえば、濃厚豚骨スープが特徴の「山岡家」、京都発祥の「魁力屋」、そして味噌ラーメンで覇権を狙う「味噌らーめん専門店 麺場 田所商店」ではないだろうか。こってり度合いには濃淡があるが、いずれも「コク」を重視し、分量的にも満腹感の高い盛り付けになっている。

「天下一品の後釜」を務めるには力不足

伍福軒もスープの旨味と背脂(のコク)を打ち出しているが、病みつきになるかと言えばもう一歩足りていない印象があった。また公式サイトを比較すると、他のチェーンでは食材や工法への「こだわり」をやりすぎと言うほど打ち出している中で、伍福軒は「毎日食べたくなる、至福の一杯」と当たり障りのないコピーにとどまっている。

熱狂的なファンを生み、「天下一品芸人」まで話題になったチェーンの「後釜」を務めるのであれば、もう少し強くてもいいのではなかったのか。

喜多方ラーメンのようなあっさりとした醤油スープが持ち味の「ちゃん系ラーメン」、ホンビノス貝など貝の旨みを重視した貝出汁ラーメンもニュースタンダードになっている。また近年の街中華ブームで昔ながらの中華そばが見直されている部分もあるだろう。

チェーンから個人店まで、さまざまなジャンルのラーメンが街中にあふれ、日常的に食べ歩く人も多いーーつまり、かつてないほど「グッとくるラーメンを知っている」、つまり「舌が肥えている」人が増えている状況にあるのではないだろうか。

いわば下積みゼロでラーメン界という大舞台(しかも首都圏)でメジャーデビューし、ぶっつけで厳しい世間(レビュアー)の目に晒される。伍福軒の登場に冷たい洗礼が浴びせられたのは、このような要因があったのかもしれない。

新宿や渋谷、池袋といった超一等地に店を構えていること自体、「持たざる者」に対する大きなアドバンテージであり、改良がすすみ歯車が噛み合えば、伍福軒も確固たる地位を確立していたかもしれないが……。いまとなってはすべて後の祭りか。

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