りくりゅう、五輪金で流した涙の“本当の理由” 「正直にお話しできなかった」今だから明かせる舞台裏
都内で引退会見
ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケートのペアで金メダルを獲得した“りくりゅう”こと三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)が28日、都内で引退会見を開いた。日本中を感動させた五輪の快挙から約2か月。当時は明かせなかった涙の背景を振り返った。
これが最後――。覚悟を持って臨んだシーズンの集大成、2人の頭には走馬灯のように積み重ねてきた日々が蘇った。
引退を検討し始めたのは昨年3月。世界選手権で2度目の優勝を成し遂げた後だった。「これが最後の世界選手権になるかも」。ふと浮かんだ思いを共有し、話し合いを進めた。練習拠点とするカナダ・トロント近郊に戻り、次のシーズンに向けて新しいフリーの振付を開始したが、「最後」という予感は強くなるばかり。振付師とコーチに想いを打ち明けた。
「最後になるかもしれないので、どうしても『グラディエーター』で滑りたい」
一度決まっていた曲を変更。関係者しか知らなかったラストシーズンが始まった。選曲については何度もメディアから質問を受けてきたが「本当のことは言えなかった」。木原は申し訳なさそうに振り返る。
目標は2月のミラノ五輪での金メダル。そのために一切の妥協なく毎日を送ってきた。練習はもちろん、食事管理や生活習慣も含め、「本当に全てスケートのために徹底して行動することができた」(木原)。迎えた最後の大舞台。最初の出番は団体戦だった。出場メンバーでうちわにメッセージを書き合う。「木原さんへの想いが溢れすぎて、泣きながら書いていた」。三浦が記した言葉はこうだ。
「私と組んでくれてありがとう。オリンピックの今が一番最強だよ。積み重ねてきたものを信じてやれば大丈夫。私たちらしいスケートをやりきろう」
まさかの5位発進で止まらぬ涙「この積み重ねはなんだったんだろう」
言葉通り、2人は最強だった。団体戦ではショートプログラム(SP)、フリーともに自己ベストをマーク。堂々の1位となり、日本の銀メダルに大きく貢献した。
だが、1週間後に事態は暗転する。
個人戦のSP。得意のリフトで珍しくミスが出て、まさかの5位発進となった。「この積み重ねはなんだったんだろう」。最後と覚悟を決め、一切のスキなく準備してきたつもりだった。その自負が大きかったからこそ、2人の涙は止まらなかった。
一方で、崩れた気持ちを立て直せたのも、積み重ねてきた日々のおかげだった。「まだ終わってない」。コーチやトレーナーらが何度も励ましてくれた。「自分たちが積み上げてきたものがあるから絶対大丈夫」。三浦も木原に言い聞かせた。1年間、いや、結成からの7年間を思い返す。私たちなら大丈夫。切り替えて臨んだ翌日のフリー。2人はまた、最強に戻っていた。
決意の「グラディエーター」。フリー歴代最高得点の158.13点をマークし、ミラノに伝説を刻んだ。「全てやり切った」。大逆転の金メダル。木原の涙腺は崩壊した。三浦は「も〜マジで泣いてばっかり」と笑った。
「正直にお話しできなかったんですけど、やっぱり最後だと分かっていたのも涙の原因でした」
引退を公表した今だからこそ明かせる涙の裏側。木原は会見でも再び泣いた。「本当に最高のパートナーに出会えた」。2人だから、ペアだからこそ乗り越えてこられた壁。ペアの魅力を日本中に広めるために、今度はプロとしてりくりゅうらしいスケートを披露する。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

