子どもの成人は人生の節目となる大きなイベントですが、子育てに翻弄される時間は、じつは残りの夫婦ふたりの人生の時間に比べたら短いのかもしれません。フランス文化研究者でフランス人の夫と日本で暮らすペレ信子さん(50代)は、子どもが巣立ってから、夫とふたりの時間を再構築している最中。そんなペレさんが、フランスの友人や人生の先輩たちの話を参考に、再び夫婦ふたりで楽しむ方法をつづります。

「寂しければ犬を飼えばいい」は本当?

フランスに限らず、夫婦の絆を深めるために犬を飼って一緒に愛情を与える対象をつくる、というのはよく聞く話。

【写真】散歩中の犬

たしかに家の中に生き物がいると温かい雰囲気ができます。犬が病気になれば心配し、懐いてくればかわいくて抱きしめたくなります。おもしろいことをして笑いを提供してくれることも。本当に子どものような存在かもしれません。

犬がいれば夫婦の会話が増えますし、2人の間の緩衝材になってくれる。ただし、犬自体が夫婦関係をよくしているのかは疑問です。子どもがいても離婚するカップルがいるように、犬への愛情と2人の関係は別物なのでは、と思うのです。

犬を飼っていたフランス人の友達夫婦は離婚をしたのですが、犬を溺愛していた奥さんが、別れたご主人と今でも会うのは、ドッグシッターをしに犬を迎えに行くときだけ、と聞いたことがあります。

社会や芸術について気にしてみる

今では共働きの家庭が多いと思いますが、50代以上の世代は夫が外で働き、妻が家庭を守る、という構図が一般的だったと思います。おもに会社で1日過ごす人と、家で子どもの面倒を見ながら家事をする人では、見るもの、会う人、心配事、うれしいことにかなりの違いがあることでしょう。

60代近くになって早期退職の話も頻繁に聞くようになりました。定年後はのんびり季節の移り変わりを感じる時間をもちたいと思う反面、完全にスイッチオフするのではなく、社会や世界で起こっていることに興味をもち続け、共通の話題を見つけたいと思います。

フランスでは小さいときから社会問題に興味をもっている人が多く、高校生くらいになると政治や世界情勢について自分の意見をもっています。ちょっと社会から目を離すと時勢はどんどん変わっていきます。置いていかれないように勉強しなければと思います。

また、私は時間ができたら、以前よりゆっくり美術館や博物館に出かけたりして、人生を豊かにしてくれる美しいものを鑑賞したいです。

心に栄養を与えてくれる美術館は、じつはフランスでは学生のデートの場でもあるんですよ。

お互いの「できない」「やるべき」を見直す

私のフランス人の年上の親友は、とてもすてきな夫婦関係を保っています。彼女は外国語に堪能で料理もうまく、気が利いて細かい作業が得意。彼は大工仕事がプロ並みで、税務上の手続きや法律にも詳しい。2人はお互いの得意分野を担当して仲よく暮らしていました。

ですが、退職して家にいるようになり、体調不良や病気などをするように。すると、若いときに分業していたやり方では暮らしに支障が出るようになってきたそう。

そんなときに、彼女からこんなことを聞きました。「自分がどんなに料理が得意でも彼がひとりでいるときのために料理を教えるべきだし、彼がいないときに私がひとりで釘を打ったり、庭の手入れの機械が使えるように教えてもらうべきだと思った」、と。

若いときは相手の存在に100%頼ることができても、歳を重ねると100%相手に依存するのはリスクがある場合も。暮らしに必要な技術はお互いにカバーし合えるようになるというのも思いやりなのですね。

2人が向き合って、よい時間を過ごせるように

何十年も一緒にいる夫婦には話題がないというのは、フランスでは少ない気がします。夫婦はなにかしらおしゃべりしている。長いつき合いの人生の相棒と、外の世界に興味をもちながら2人の時間を楽しめるようになりたいと思います。