社会生活と株式市場は違う

 株式投資は非日常の世界であり、株式市場では社会的常識が通用しない―。この重要なポイントを分かっていない個人投資家が意外と多いので説明しよう。

 株式市場に一歩でも足を踏み入れるとわかることだが、株式市場は社会的常識が通用しない。すなわち、社会生活では「こうすることが正しい」という行動規範が、株式市場では「間違いになる」可能性があるということだ。社会生活で大きな間違いを起こさず生活しているごく普通の人が、株式市場では間違いを起こしてしまい、「こんなはずじゃなかった」ということが頻繁に起こってしまう。

人知を超えて動く市場に、多くの個人投資家はついていけない

 その最大の原因は、マーケットの動きが決してゆっくりしておらず、時には唐突に、時には衝動的に、しかも劇的な変化をしてしまうことに起因している。マーケットは人知を超えて動くので、それについていけないのだ。ついて行けずにじっとしているのならまだしも、焦ってパニック的な行動をしてしまい、返り討ちに遭ってしまうのだから始末が悪い。

 日常生活では、自分の身の回りに起こる変化はある程度予測できる。そして、それに合わせて修正を図りながら対応することで、たいていのリスクや失敗はおおむね回避できる。ところが、株式市場はそんな穏やかな世界ではない。だから、マーケットのダイナミックなボラティリティ(価格の変動)に対処できなくなる。

 具体的に言えば、売るべきところで売れなかったり、売るべきところを買ったり、あるいは買うべきところをカラ売りしたりして、自分にとって不利なポジション(自己保有した株式)を抱え込んでしまう。そして、そのポジションを守ろうとして、さらに間違った行動をする。「恥の上塗り」ならぬ「間違いの重ね塗り」をしてしまうのだ。

株式投資で一貫して成功できる個人投資家の割合は10%未満と少ない

 「投資で失敗している人たちは社会的には聡明な人たちであり、業界最高レベルのマーケットの分析者の大半が、思いつく限りの最悪のトレードをしている」と述べたのは、米国人の著名トレーダー、マーク・ダグラスである(彼の代表著作『ゾーン ― 相場心理学入門』は翻訳本があるのでぜひとも読んで欲しい)。私もこの意見に賛成だ。要するに、日常社会ではきちんと生活し、社会の秩序を守り、礼儀正しく、さらに言えば、誰からも好かれて尊敬されるようなタイプの人が株式投資で大きな失敗をやらかしているのである。

 私の個人的感想だが「マーケットにおいて一貫して成功する者の割合は10%未満にすぎず、30%〜40%は一貫した失敗者、残りは投資技術のない行きあたりばったりの投資家たち」という感じではないだろうか。

個人投資家のスキルをはかる格好の材料がコロナショック相場

「個人投資家にどれくらい投資スキルがあるのか?」をはかる格好の材料がある。コロナショック相場だ。当時の相場の動きを簡単に振り変えると、中国の武漢市で新型コロナウイルス感染者が大量に発生し、2020年1月下旬にいち早くロックダウンを実施。この時はまだ日本も欧米も他人事のように見ていた。それが「自分たちにも危機が迫っているのではないか?」という疑念が渦巻き、2月24日の NYダウは1031ドル安(過去3番目の下げ)となり、これをきっかけにコロナショックの世界的連鎖が起こった。

 結局、NYダウは36%安(2月21日の28992ドルから3月23日は18591ドルへ下落)、また日経平均は30%安(2月21日の23386円から3月19日は16652円へ下落)となった。相場のどん底である3月20日頃の1日あたりの新規感染者数は米国で5000人、イタリアで4000人、日本で200人、世界累計で25万人程度とごくごくわずかにとどまっていた。ここから急速に相場は戻ることになるのだが、一方で新型コロナの感染者数は相場の上昇に反して信じられないくらいに激増し、世界経済を震撼させることになる。

相場常識を理解することがパフォーマンスを上げる上で大事

 予想を超える急落局面では、まだ世界経済は順調で社会的常識では対応困難、そして予想を超えた反発局面では世界経済は壊滅的で社会的常識では対応困難だ。コロナショックという典型的な急落相場で個人投資家の対応は大きく分かれた。恐怖心から安値で売ってしまい損失だけ出した人や強制的に投げさせられた人がいる一方で、急落局面を味方に付けて安値で買い出動して高値で売れた人もいる。同じ相場状況の中にいながら、パフォーマンスの差は非常に大きかった。

 社会的常識による行動はマーケットでは「凶と出る」ことが多い。社会的常識とは異なる相場常識を知ることこそがパフォーマンスを上げる上ではとても大事であり、これからいろいろ話をしていきたいと思う。

(DFR投資助言者 太田 忠)