VRの力で大型重機から作業員を守る! 労働災害を未然に防ぐVR安全教育システム「リアルハット」を体験

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建設現場では、クレーンやショベルカー、ブルドーザー、高所作業車など、様々な大型重機が活躍している。

こうした大型重機は作業には欠かせない存在だ。
しかし、重機は便利である反面、操作を誤れば、大きな事故になる危険もはらんでいる。

記憶に新しいところでは、2020年に開催される東京オリンピックの選手村工事で作業員が重機と手すりに挟まれて死亡したという痛ましい事件もあった。

大型重機や建設現場における事故を、どうやって防ぐか?

この問題を解決するために開発されたのが、
ここで紹介するVR体験型安全教育システム「リアルハット」だ。


■VR体験でわかる!工事現場は危険だらけ
今回、リアルハットで体験したのは、下記の3つ。
・バックホウ災害
・安全点検
・クレーン災害


VR体験型安全教育システム「リアルハット」を体験している様子


●バックホウ災害
バックホウ災害は、重機災害で最も労働災害が多いとされる「重機の挾まれ事故」を再現した体験だ。

体験のストーリーは、
・昨日まで左に寄っていた重機が、トラックの資材降ろしの関係から右に寄っている
・作業関係者(自分)は元請建設会社に呼び出され、急いで事務所に行こうとしている
・しかし先方との打合せ内容に気を取られた結果、重機とコンクリートの壁に挟まれるというものだ。

実際に体験では、
通路を歩いているときに重機とコンクリートの壁に挟まれてしまった。
安全だと思っていても、重機には死角がある。
安全だと思っている通路ですら、危険が潜んでおり思わぬ事故に巻き込まれる。また、事故を回避する方法を自分で考えるのが特徴だ。


●安全点検
「足場」は、建築や土木の躯体工事の現場に必ず存在する。
足場は、重機とは異なり動かないため、安全だと思われがちだが、実際には危険だらけの空間だという。

安全点検の体験では、足場を歩いて安全点検を行うというものだが、
実際に体験してみると、予想以上にチェックする場所や項目が多いことに驚かされた。

実際にチェックが必要だった項目は、
・開口部
・足場板のずれ
・幅止めの有無
・手すりの高さ
・標識の設置の有無
・単管パイプの有無
・クランプねじの養生
・プレース材の留め金
・突起物の養生
・工具の置き忘れ
など、現場での作業経験がない人だと、気がつかない項目も多くあった。


●クレーン災害
重機災害で、バックホウの次に労働災害の多いものが「クレーン吊荷の落下事故」だ。

体験では、
・クレーンの遥か奥の場所で型枠を製作する作業が行われている
・クレーンオペレーターは、発電機の陰に隠れている作業員が見えない
というシチュエーションで行われる。

周囲の確認を怠り型枠作業をしていると、
クレーンが旋回して荷下ろしをしる際、資材のロープが外れ、落下した足場板の下敷きになってしまった。

現場状況を確認することで、なぜ事故が起きたのか?どのような要因が考えられるのかを振り返ることができる。

リアルハットは、VR映像だとわかっていても、体験してみると、現実の世界に思えてくるほどのリアリティがあった。

工事現場での事故を防ぐという意味では、今までにない画期的な教育システムと言えるだろう。


バックホウ災害を体験しているところ



■MRの技術も取り入れたい
リアルハットはVRデバイスと3Dモデルを連動させることで、VR空間上でクレーン災害や重機との接触災害など、労働災害が発生した状況を体験することができる。




リアルハットの開発を始めたのは、
2015年、堤防を越流し湛水した地域での堤防改修の工事で、発注者から地権者にIT技術を使って分かりやすく事業の必要性を説明できる資料が欲しいと言われたことが最初のキッカケだったという。


西武建設株式会社 土木事業部 二村憲太郎氏


開発担当者は、事故をVRによって疑似体験させることで、事故防止の教育になるのではないか? そう考えたという。

リアルハットの特徴だが、ただ事故の体験をさせ、怖い思いをさせることでないという。それだけでは罰ゲームと同じとなるため、そうした方向にならないように配慮しているそうだ。


VR安全教育システム仕組図



リアルハットでの体験は、「気づき」を与えるコンテンツである。

こう語る開発担当者は、被災体験を被験者にさせるだけの製品であれば、いくらでも作れるという。危険行動をとってしまう背景や現場の状況を不自然さがなく再現することに注力しているという。そのため、コンテンツがなかなかできあがらなかったのが、悩みでもあったそう。


実際にリアルハット体験の反応は、体験者の職種によって様々だという。
例えば「バックホウ編」では、熟練者の場合、
オペレーターはバックホウの配置位置を見ただけで、その後、どのようなことが自分の身に起きるのかが分かってしまうので、ほかの被験者と全く違う行動をとるそうだ。

教育後のアンケートでも、それは同様で、作業員・監督者などのその人の置かれている立場によって様々な回答が寄せられるという。
紙媒体での教育に比べ、VR教育後のアンケートでは、少なくても1つ以上、多い人で5つ以上の意見が出てくるそうだ。

開発担当者は、2019年3月末までに全12コンテンツのラインナップを用意する予定だという。コンテンツの分割販売や機材込みでのリースなど、販売形式についても現場で使いやすい方法を検討しているそうだ。


執筆:ITライフハック 関口哲司