「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「越える」の「越」。「超越」「越境」の「越(エツ)」とも読む漢字です。六月も終わりに近づいて、今年もはや、半分を越えようとしています。



「越」という字は「走」という字をへんにした「そうにょう」の上に、「戉(エツ)」と読むつくりを書きます。

この「戉」は、木の柄に幅広で大きな刃がついた道具、「まさかり」の形を描いています。

これは、木を切ったり削ったりするだけでなく、武器としても使うものです。

「そうにょう(走)」は、前に進む動作をあらわす部首。

その際、いにしえの人々はその「まさかり」を携えます。

「まさかり」は様々な役に立つだけでなく、霊的な呪力をも備えた道具。

そこで、まさかりの威力を身につけて困難な場所を越える、つつがなく越すことを意味する「越」という漢字が生まれました。

いにしえの人が旅に出るとき。

それは、命を懸けてでも、たどりつくべき場所があるときです。

木々の葉が生い茂って重なり合い、陽射しの届かない夏の闇。

その中を、若者が一心不乱に走ります。

手にしているのは、大きな刃をもつまさかりただひとつ。

腰のあたりまで伸びた草を刈り、垂れさがる木の枝を切り落とし、近づいてくる獣を威嚇しながら、前へ、前へ。

にぶい光を放つその刃を研いだ父の想いと、衣服に魔よけの刺繍を縫い付けた母の祈りとともに、進んでゆく。

無事に山を越える頃にはきっと、新たな自分との出会いが待っています。

ではここで、もう一度「越」という字を感じてみてください。

六月三十日は「夏越の祓(なごしのはらえ)」。

これまでの半年間で身についてしまった穢れを落とす年中行事です。

その中でも気軽に参加できるのが「茅の輪くぐり」。

神社の境内に茅(かや)で作った大きな輪がしつらえてあり、その中をくぐることで禊をする効果があり、お祓いができるというものです。

茅の輪をくぐるときは、輪の前で毎度一礼をし、左回り、右回り、左回りと八の字を描くように三回くぐり、こんな言葉を唱えます。

「はらへたまへ きよめたまへ まもりたまへ さきわえたまへ」(祓い給へ 清め給へ 守り給へ 幸え給へ)

または、こんな和歌を唱える神社もあります。

「水無月の夏越の祓する人は、千歳の命延ぶというなり」

身も心も清らかになりそうな言葉を唱えて願う無病息災。

梅雨や猛暑といった厳しい季節を、無事に越えられますように。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

6月30日(土)の放送では「宿」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年7月1日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/