妻の親友と不倫した46歳夫 「賢すぎて、なかなかつついてこない」妻との結婚は、32歳の誕生日に出されたビーフシチュー
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「いい不倫」と「悪い不倫」などあるわけもないのだが、実際に起きてしまった現象を見ると、「この関係はヤバい」というものは存在する。不倫相手と妻が親しかったり血縁関係にあるのは、バレたときに泥沼化するのは必至だ。
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「しかも妻が賢すぎて、なかなかつついてこないとなると、ますます危険ですよね」
塚原孝次さん(46歳・仮名=以下同)は、少しうつむきながらそう言った。思い返せばなかなかいい人生を送ってきたと思っていると彼は言った。東京近郊のサラリーマン家庭の次男に生まれ、小学生からサッカーに魅せられた。中学生になると本気でサッカー選手を目指して頭角を現し、強豪と言われる高校に推薦で入学した。だが、1年生の夏に大ケガをして選手としては断念せざるを得なかった。

「あのままいっても実際にプロ選手にはなれなかっただろうし、早めに切り替えができてよかったと思っています。もちろん、あのときは人生初の挫折感に見舞われたけど、挫折も早く知ったから、何があってもへこたれないという自信もついた」
挫折をもポジティブに変換できるタイプなのだろう。あるいは意図的にそう考える癖がついているのかもしれない。
もっとさばさばした女性はいないのか
サッカー選手をあきらめた後は他の高校へ編入、大学へと進学した。
「それでもサッカーは好きだから同好会でやっていました。学生時代はアルバイトをしては国内外を放浪していましたね。知らない土地を見て回るのが楽しくて」
それが高じて旅行関係の会社に就職した。同じ業界で2度、転職をしているが、どこに行っても「楽しくやれちゃうタイプのようで」と明るく言った。
男兄弟3人の真ん中で育ったため、「恋愛には疎かった」という。女性の気持ちがわからず、学生時代からフラれっぱなし。社会人になった年に、初めて恋愛らしい恋愛をしたが、「女の子ってめんどくさー」と思ったそうだ。
「話したければ電話をくれればいいのに、自分からはかけてこない。それでいて『どうして連絡くれないの?』って言うじゃないですか。いや、そっちだって連絡しないじゃんと言ったら怒られたり。もっとさばさばした女性はいないのかなといつも思っていました」
そんな「さばさばした」女性と知り合ったのが29歳のときだった。仕事関係のセミナーで知り合った郁美さんだ。3歳年下の彼女は知的で率直で、そして「さばさば」していた。
「3日連続のセミナーが終了したとき、有志で飲みに行こうという話になったんです。リーダーシップをとったのは彼女でした。行く人、手を挙げてと言って人数がわかると、すぐに近くの居酒屋を調べ始めた。まだみんなそれほどスマホに慣れていないころで、僕なんかガラケーを使っていましたからね。彼女はスマホを器用に使いこなして、居酒屋を予約してくれた」
「一目惚れです」
居酒屋でも彼女はさりげなく仕切ってくれた。飲み物の注文が終わると、「みんな一品ずつ選んで」とオーダーを言わせる。迷っている人がいると「じゃあ、あなたは焼き鳥ね。どうせシェアするからいいじゃない」と場を進めていく。その後は「みんな、自己紹介しよう」と提案した。
「それが『私が仕切る』という感じではなく、さりげなく誘導していくというか。なんて賢い人なんだろうと思いました。その日は彼女を観察しているのが楽しかった」
ようやく場がこなれてきたころ、孝次さんは郁美さんの隣に席を確保し、ビールを注ぎながら「おつかれさま。あなたの判断力と行動力はすごい」と絶賛した。彼女は孝次さんを一瞥、「そんな賞賛されるようなことじゃないでしょ」と言った。口調は普通だったが、顔を見ると笑っていたという。
「率直なんですよね。だから誤解されることもありそうだけど、僕は好感をもちました。だから『惚れた。デートしてください』と言ったんです。何も知らないのに惚れたのと聞かれ、『一目惚れです』と。さすがに彼女も声を出して笑っていました。『デートくらい、いつでもするわよ』って。かっこいいですよね」
絶品シチュー、そして…忘れられない誕生日
そこからつきあいが始まったが、お互いに仕事が忙しく、なかなか日時が合わない。ふたりとも出張も多かったので1ヶ月も間があいたこともあるが、それでもつきあいは続いていた。
「僕の32歳の誕生日、珍しく彼女が『うちに来る? 料理でもしようか』と。その代わりケーキは自分で買ってこいと言われましたが、彼女の部屋に行くのも久しぶりだったし、手料理なんて初めてだったから勇んで行きました」
料理はしないと聞いていたのだが、実は彼女は料理上手だった。孝次さんの好物であるシチューは絶品で、「親が作る市販のルーを使ったものが最高だと思ってたけど、彼女のビーフシチューはとんでもなくうまかった」と振り返る。2日かけて煮込んだのよと彼女は言った。
「その場で、『妊娠したの。どうしようか』といきなり言われました。どうしようもなにもない、妊娠したのなら産もうよと言いました。彼女はわかった、と。『結婚してくれるよね』と思わず問いかけてしまいました。郁美だったら、子どもは産むけど結婚しないと言いそうだったから」
郁美さんは再び「わかった」と言った。彼女からネクタイをプレゼントされ、その日は彼にとって忘れられない誕生日となった。
僕が普通で彼女が大雑把すぎる
翌日、彼は婚姻届をもって彼女の部屋を訪れた。結婚式はともあれ、婚姻届は早く提出したかった。親への紹介はあとにして、とにかく届を急いだのは、のちに生まれてくる子に、「おとうさんとおかあさんは結婚する前に妊娠したの?」と言われないためだった。そんなことを気にする必要はないと郁美さんは言ったが、孝次さんは子どもに不信感を抱かせたくないと思った。「細かいなあ」と郁美さんは苦笑したという。
「郁美とつきあってみて、彼女に比べれば僕は意外と神経が細かいんだとわかりました。というか、僕が普通で彼女が大雑把すぎるんだと思うけど。ただ、その大雑把さが僕には気楽でしたね」
その後、双方の親きょうだいに紹介するため一席もうけた。友人たちは結婚パーティを開いてくれたのだが、パーティをそれとなく仕切ったのはやはり郁美さんだった。
「自分たちの来し方を紹介したり、馴れそめとかつきあっている過程でのできごとなんかをおもしろおかしくしゃべり倒していました。僕の浮気疑惑なんていうコーナーもあったりして、些細なことから浮気を疑ったこともあったと。僕はそんな彼女の気持ちを知らなかったからびっくりしました。彼女の友人たちが披露するエピソードも、郁美はこう見えて繊細な心の持ち主だというものが多くて、僕は彼女をわかってないなと思った。でも結婚してからわかっていけばいい。楽しみが増えたと思うことにしたんです」
女3人に囲まれて
32歳のとき長女が、その3年後に次女が生まれ、彼は女3人に囲まれることとなった。郁美さんは仕事を続け、ふたりは多忙な日々を送ったが、そこは郁美さんがリーダーシップを発揮し、「うまく僕の母を巻き込んだ」そうだ。
「彼女は裏がないので、僕の母に『すみません。助けてください』と率直に頼む。母はおせっかいで頼られると断れないタイプだから、よく駆けつけてくれました。そうすると郁美は次の週末に母を招待して手料理を振る舞う。誕生日や母の日は、母に似合うスカーフやネックレスなんかをプレゼントしていました。母は娘がほしかったけど授からなかった。兄は結婚していましたが遠方にいたし、兄の妻とはあまり合わなかったみたい。弟は独身。だから母はすっかり郁美のことが気に入っていた。でも必要以上に介入させないのが郁美のうまいところなんですよ。そこはしっかり線を引いて、でも母には線を引いたとわからせずにうまくやっていた」
すごいなあと孝次さんはいつも思っていた。相手に嫌われずに頼みだけ聞いてもらう。もちろんそれに見合うお礼はするが、相手はそれを「お礼」というより彼女の誠意だと感じる。もちろん郁美さんは意図的に計算して、そうしているわけではなさそうだった。だから彼女としては誠意を尽くしているのだろうが、結果的には「人につけ込まれることをきちんと回避」している。そこに孝次さんは感動すらしたという。
「子育ても、ある意味、大雑把だったけど子どもたちはのびのび育ちました。彼女が公園で子どもを遊ばせているのを見ると、子どもが転んでも大きなケガがなさそうなら、見ているだけ。『こっちおいでー。おやつ食べよう』なんて言うわけです。子どもはおやつほしさに起き上がってくる。転んだことは帳消しになる。服をパンパンと手で払って、痛いところはないか確認して終わり。ことを大げさにしないというのかな、あらゆることにおいて彼女はそういうやり方をしていましたね」
よほどのことがない限り、事態を大きくせずに終わらせる。転んだ子は、転んだことなど忘れておやつを食べていた。些細なことをオーバーに表現する人もいれば、案外大変だったことをさりげなく流す人もいる。郁美さんは明らかに後者だった。孝次さんの目には、それが「かっこいい」と映った。
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ますます郁美さんに信頼を寄せる孝次さん。記事後編では、そんな妻の親友をきっかけに、孝次さんの心に生じた変化を紹介している。
亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。
デイリー新潮編集部
