「最近エバース、ダサいなとは思われたくない」佐々木隆史が明かす、芸人として絶対にやらないこと
高校球児として甲子園を目指した経験を持つ、エバースの佐々木隆史。M-1との意外な共通点から「ダサいことはしたくない」という言葉の奥にある芸人としての信念に迫る。(前後編の後編)
【画像】エバースを「ボッコボコにしてやりたい」と言い放った芸人
佐々木が提唱する「日本人全員陰キャ説」
-かつて甲子園を目指していた佐々木さんにとって「M-1グランプリ」と「甲子園」の共通点って、どんなところにあるなって思われますか。
エバース・佐々木隆史(以下同) みんな本気でやってるってところでしょうか。甲子園も多分、日本の部活動の中では競技人口がかなり多いほうじゃないですか。だから野球やってる人は、甲子園が目指す場所で。それはM-1も一緒で、お笑いの中では一番競技人口が多い。一般の人も参加できますし。
-確かにそうですね、母数が多い。
甲子園は出てないけどプロで大成してる人もいっぱいいますけど、プロ野球選手も最初は甲子園を目指してますもんね。目指してない人は多分いないと思います。
「俺、甲子園とか別にどうでもいいから」って言ってプロになった人なんて、たぶんいないと思うんで、基本的に。そういう意味ではM-1も一緒で、全員がとりあえず目指す、芸人になったら目指すものって感じなんで。
-その中で、エバースは何を変えたことでM-1決勝の常連校になったと思われますか?
いや、もう逆に「変えなかったから」みたいな感覚かもしれないですね。変えずにやったからって感じだったような気はします。予選で落ちた時も「これじゃあ、来年どうしよう」っていう感覚はなかったんで。
「これでこれぐらいウケるんだったら、同じ感じでやってれば来年もっとウケるだろう」みたいな感じのまま決勝まで行けちゃったので。あんまり決勝に出るために何かを変えたっていう感覚はないですかね。
-佐々木さんは新刊で「自分は野球部の中だけでの陽キャで、本来は友達を作りづらい陰キャだった」と振り返ってます。なかなか本人的に認めづらいことだと思うんですが…。
そうなんですか。認めづらいか…。
-陽キャでもないのに陽キャぶって生きている方たちにアドバイスって何かありますか。
どうなんですかね、「日本人は全員陰キャなのでは」という説もありますしね。
-日本人全員陰キャ説。
あと陽キャの方がコミュ障だったりしますからね。飲み会とかでテンション高いのって、結局真面目にしゃべったら面白い話できないから、ノリでごまかしてるわけじゃないですか。
ってことは、ああいう飲み会とかでテンション高いとか、海とかクラブとかではっちゃけるっていうのって、結局コミュニケーション能力が低いからそういうことするのかなとも思うんで。そうすることで自分をちょっと守ってるところもあったり。表裏一体だなと思います。
「ダサいことはしたくない」
-なるほど。テンション高いのは、深いコミュニケーションをさせないための防御壁。
別にどっちがいいとかどっちが悪いとかいう話でもないんですけどね。
-佐々木さんは、自分の明るさが野球部の中だけのものだったとわかって、ショックはなかったですか?
うーん…NSCに入ってあんまり馴染めなかったりとか、大学でも思い描いてたようなキャンパスライフみたいな生活が送れなかった時に、「あれ?」みたいな感じは……ありましたね。でも家でゲームしてるのも楽しかったんですよ。
だから自分はそっちが好きでやってるんだっていうほうにマインドを持っていくというか。別に充実しているわけではないけど「俺、毎日家でゲームするの好きだし」みたいな感覚だったかもしれないですね。
-やっぱりその……生き方が上手ですよね。
あ、そうですか(笑)。
-そうした自分自身と折り合いをつけて生きるヒントをお持ちだと思いますが、佐々木さんが一番大事にしていることというか、これだけは絶対手放さないみたいに考えていることを教えていただけますか。
考え方、ですか。なんだろうな。でもあんま、ダサいことはしたくないなみたいな感覚ですかね。他の芸人とかが見て「最近エバースダサいな」みたいに思われるようなことはしないようにしようとは思ってるかもしれない。
-例えばどういうことがダサいですか。
たとえば、単独ライブやって自分たちのM-1のネタをいじったりとかして、それで配信の視聴数を伸ばそうとしたりとかは、ダセーなっていう感覚です。別にそれやってる他の芸人に対してダセーとは思わないですけど、自分たちがやるのはダサいかなっていう感覚ですかね。
-エバースというコンビだと、そういうのはちょっと違う。
そうですね。あと、なんだろうな、『相席食堂』のロケはM-1決勝に行ったら(王者を除くファイナリストが)みんな出るロケ企画があるじゃないですか。『相席食堂』のために、普段やんないような無理したボケ方するとか、そういうのもなんか恥ずいというか。
いや、普段からそういうことをしている人、それこそ(真空ジェシカ)川北さんとかは普段からあれだから違和感ないじゃないですか。でもそういうのを見て「こういうことやんなきゃ」みたいな感じで、無理して小道具を準備してボケてたりとかするとき、きついなと思うんですよ。
仕込んで、どっちかが坊主になってるとか、そういうのはやんないようにしようみたいな感覚ですかね。なるべく自然体で。
「こいつらに負けたくない」って思われるような先輩になりたい
-エバースに昔から目をかけていたというオズワルドの伊藤さんが「(エバースに)声なんかかけないで解散させときゃよかった」といったことをインタビューで話していました。「(M-1で)俺はもうボッコボコにしてやりたい」とも。そういう風にライバル視されることについては、どういう思いがありますか。
いやでも、ありがたいですね。全員にそう思われるのは一番いいなと思いますね。全部の芸人が「こいつらに負けたくない」って思われるような先輩になりたいし、後輩でありたいなって思います。
-M-1がもし甲子園だったらエバースは、もう仙台育英のような存在ですね。
いや、仙台育英ってほど常勝ではないんですけど(笑)。
前編「今も悔しくて見られない高校野球への思い」はこちらから
取材・文/西澤千央 写真/垂水佳菜
『ここで1球チェンジアップ』(太田出版)
佐々木隆史 エバース

2026年7月14日
1980円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4778341404
憧れの甲子園には届かなかった。でも、芸人という次の夢を見つけた--
『M-1』2年連続決勝進出のエバース・佐々木隆史の初エッセイ!
●宮藤官九郎 推薦!
「共感しかない」
エバースの漫才が大好きな理由が良くわかりました。
ここは世界の中心じゃないし、自分は主人公じゃない。
そう思って生きて来た人間の「恥ずかしい」に対する異常なまでの警戒心。
なるほどな。町田くんは、恥ずかしい世界に押し出された生贄なんだな。
『M-1グランプリ』2024、2025と2年連続で決勝進出を果たしたお笑いコンビ・エバース。
そのネタ作り&ボケ担当である佐々木隆史が、自身の半生を綴った初のエッセイ集が刊行。

