《鹿児島5歳男児不明・現場のいま》「お客さまは例年の3分の1に…」現場温泉施設が明かした苦悩と、あえて過剰な対策をしない理由「窓を出られないような固定化はしない」
「良いも悪いも一つの区切りになったのかなとは考えております」──そう胸の内を明かしたのは、鹿児島県霧島市にある温泉施設「かれい川の湯」のスタッフだ。
【写真を見る】現場となった温泉施設、湯船とほぼ同じ高さで設置されている窓、窓から下はおよそ2mの崖になっていた
6月21日から同施設で行方不明となり、懸命な捜索が続いていた5歳男児。7月17日に近くの天降川で発見された男性の遺体が、この5歳男児であると特定された。悲しい結末とはなったが、ご両親の「帰ってきてくれてよかった」というコメントも報じられている。
これまで懸命に捜索してきた地元消防団や、その行方を見守っていた地元施設はいま何を思っているのだろうか。身元特定の報道を受け、NEWSポストセブン取材班は現場の声を改めて聞いた。
「大きな損傷はなかった」消防団が語る安堵と発見現場
行方不明翌日から捜索に参加していた地元消防団の男性は率直な気持ちを明かしてくれた。
「発見されたのは、施設から700メートルの下流にある堰堤(えんてい)です。そこにゴミ除けの大きなロープみたいなのが張ってあるんですが、男児の遺体も引っかかっていたようです。
もちろん複雑な思いはあります。ご両親の気持ちを思うと……。ただ、ご家族の元に帰ってきて、ほっとしてはいます。遺体に大きな損傷などはなかったようですね。発見されて良かった、いまはもうそれだけです」
しかし、悲しい事故が起きた現場として、地元住民としての警戒感もにじませる。
「普段は水深も浅くゆったりとした川ですが、5歳の子供の行動は予測ができない。我々地元の人間も、あの川で遊ぶということはほとんどないし、夏休みでも子供が遊んでいることはありません。ただ、改めて気をつけないといけないですね」
温泉施設スタッフが吐露した「一つの区切り」とご家族への思い
一方、現場となった温泉施設「かれい川の湯」のスタッフは、冒頭のように「良いも悪いも一つの区切りになった」と複雑な心境を明かした。
「今までは(遺体が)特定されておらずご両親のコメントがなかったので、私が何かを言う立場にはありませんでした。しかし今回、行方不明の男児と特定され、お父様の『帰ってきてくれて良かった』という思いが報じられましたので、私としては良かったと思っています。ただ、『生きていてほしかったという思いがある』という言葉もあったので……。良いも悪いも、一つの区切りにはなったのかなとは考えております」(施設スタッフ、以下同)
取材のタイミングでは遺体の身元確認の最中で熊本と鹿児島を行き来する両親とは直接会えていないというが、ご家族に対してはこんな思いを抱いている。
「ご家族様は、動物園の帰りに旅の思い出として当施設を選んでくださったのに、このようなことが起きてしまい、最後までご家族の旅の思い出を堪能できませんでした。もし今後前向きな気持ちになりましたら、皆さまで改めて来て欲しい思いです」
客足激減も「窓を固定化しない」理由
施設は営業を再開しているが、一部では閉館したのではないかと誤解が広まっているという。
「男児特定の報道が出てから、『再開はいつですか?』という問い合わせが来ました。ホームページを見られていない方はずっと閉館していると思っているようです。お客様の数は例年と比べると3分の1まで減っており、まだ客足は戻っておりません」
現場となった個室風呂について、今後の安全対策として「窓から人が出られないように固定化する」ことなどは考えていないという。そこには、明確な理由があった。
「窓を開けられないようにすると、逆に火災などの際に困ります。本来は廊下側に非常口があるのですが、そちら側が火災で使えない場合には、お風呂側の窓から外に出るようにアナウンスするため、窓に関してはそのままで考えております」
また、転落を防ぐための注意喚起のアナウンスも控える方針だという。
「『お子様が窓の外に出ないようにして下さい』というようなアナウンスも考えておりません。今回の件はレアケースですし、お客様は当施設にリラックスをしに来ているため、アナウンスをすることで今回の事故のことを思い出してしまうと、お客様もリラックスできないかもしれない。我々としては、安全対策はできていると考えております」
窓の固定化などは行わない一方で、警察からの指導を受け、新たな防犯対策を検討しているという。
「警察からは『お客さんの出入りが把握できるように、防犯カメラを駐車場からお店の入り口にかけてつけたほうが良い』という声があり、それは検討しております。男児行方不明の際の初期対応に、スタッフが駐車場や倉庫などを探していたのですが、もし防犯カメラの映像確認ができればその手間が省けたかもしれません」
結末は辛いものだった。しかし、一つの区切りを迎えた行方不明事故。癒えない傷を抱えながらも少しずつ日常へと歩みを進めようとしている。
