【南島 和久】「改修経費高騰で公立学校が建て替えられない」問題 重大事故発生を黙って見ているしかないのか

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各地で学校の外壁や天井の一部落下が相次いでいる。

いま全国の学校で何が起こっているのか。なぜ危機が広がっているのか。

南島和久・龍谷大教授(公共政策学)による解説をお届けする。

【前編を読む】全国で相次ぐ学校の外壁や天井の一部落下…子どもの重大事故は時間の問題!「改修経費高騰で公立学校が建て替えられない」が招く危機

資材高騰は予見できていても予算が追い付かない理由

自治体は国のさまざまな財政支援策を活用して学校施設老朽化問題に向き合っている。図はそのうちのひとつ、公立の学校施設の耐震化・老朽化対策・空調設備整備の予算をグラフ化したものである(公立学校施設整備費)。

この図から言えることが3つある。

第1に、「当初予算」が相当低い水準に抑えられているという点である。「当初予算」と最終的な「執行額」との間には5倍から8倍の乖離がある。ここで注目したいのは実際のニーズを反映したものが「執行額」であるという点である。すなわち、「当初予算」では到底実際のニーズには追いつけないということである。この「執行額」に追いつくため、「当初予算」に加え、「補正予算」や前年度から繰り越しされた予算が充てられている(すなわち「執行額」は単純に「当初予算」と「補正予算」を合わせた額にならない)。ならば、「当初予算」のほうをもっと積み上げればよいのではないかと思われるかもしれない。だが、国全体の財政規律の問題もあり、ことはそう簡単ではない。

第2に、「補正予算」の規模が「当初予算」よりも大きいという点である。「補正予算」と「当初予算」の差に注目すると、直近の差は`25年度で約3.7倍となっている。これは近年の建築費高騰を反映している。すなわち、「補正予算」で「通常予算」の不足分が補填される構造となっているということである。ただし、「補正予算」については、本当に措置されるのか、あるいはそもそも総額いくらになるのか、といった点が自治体にとっては不安である。自治体にとっては確実性が担保されないので動きづらくなるため、「補正予算があるからいいのではないか」ということにはならないのである。

第3に、そもそも表に現れる「執行額」はずっと以前に計画されたものであるという点である。自治体にとって学校施設の建て替えや改築は巨額の予算を要する大事業である。ゆえに、この事業の立案段階では事前にしっかりとした計画を組み立て、十分な調整がなされる。ここで問題となるのは「積算根拠」や「見積額」である。数年前に設定された「積算根拠」や「見積額」は、近年の建築費高騰に対応できていない。もちろん「積算根拠」や「見積額」は改定される。しかし、それが昨今の建築費高騰のスピードに見合っているかというと必ずしもそうではない。それが計画の後ろ倒しや見直しにもつながっているのである。

緊急事態に対応するのが政治の役目

建築費の高騰を見る際には、国土交通省の「建築工事費デフレーター」(建設工事費が時間とともにどの程度変化しているかを数値で示した指標)が1つの参考になる。これによれば、`20年度を100ポイントとしたとき、`25年度は121.9ポイントとなっている。`15年度は92.4ポイントなので、10年間での差は29.5ポイントにも及んでいる。見積時、契約時、支払時といったタイミングでの総額計算が予測の範囲内に収まればよいが、「あてが外れる」こともある。白紙撤回となれば10年単位での計画の見直しとなることもある。

繰り返しになるが、学校施設の老朽化対策にとって大きなボトルネックは建築費高騰である。この事態は「行政の論理」を超えて進んでいる。それでは解決策はないのか。ここで期待したいのが「政治の役割」である。

政治に何が期待できるのか。たとえば、特別な予算を講じるなど、まずは自治体における政治的リーダーシップが考えられる。自治体だけで解決できないならば、都道府県や国の補完行政にも期待したいところである。たとえば補正予算をさらにかさ上げする、通常予算でしっかりと措置する、新たな老朽化対策の加速化プランを打ち上げるなど、さまざまな方策が考えうるだろう。

昨今の建築費高騰があまりにも異常事態であること、それが行政の計画性を大きく超える展開を見せていること、そして何より子どもたちの安全安心につながる緊急事態であることを考え合わせれば、特例的な優先順位の変更は、あってもよいことではないだろうか。

【南島和久】龍谷大学政策学部教授。1972年福岡県生まれ。法政大学大学院社会科学研究科政治学専攻博士後期課程修了。博士(政治学)。政策評価審議会委員、食料・農業・農村政策審議会委員などを歴任。『政策評価の行政学』『科学技術政策とアカウンタビリティ』(晃洋書房)、『地方自治入門』『自治体政策学』(法律文化社)、『公共性政策学』(ミネルヴァ書房)など多数。

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