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2022年に起きた安倍元総理銃撃事件。山上徹也被告は、母親が信仰する旧統一教会への恨みを理由に凶行に及びました。

【写真で見る】山上被告が銃撃事件を起こすまで 壮絶な半生を再現

事件に至るまでに山上被告がたどってきた半生とは。母親への独自取材も交えて迫ります。

(MBSテレビ「ガチの門」2026年1月28日の放送内容を記事化しています)

「生きているべきではなかった」山上被告が裁判で語った半生

今年1月21日、奈良地方裁判所。

(記者リポート)「山上被告に無期懲役が言い渡されました。繰り返します、山上被告に無期懲役が言い渡されました」

去年10月に始まった裁判。全16回の公判を通して山上被告は事件に至る経緯を冷静に淡々と語りました。

(山上被告)「山上徹也です。45歳です」「生きているべきではなかったです」

平穏な暮らしを送っていた一家に訪れた危機

1980年、大阪の比較的裕福な家庭に次男として生まれた山上徹也被告。

1つ年上の兄は病弱でしたが、家族4人で平穏に暮らしていました。母親のおなかには山上被告の妹がいました。

その母親は、国公立大学を卒業したのち自身の父親、つまり、山上被告の祖父が経営する建設会社に勤務。京都大学を卒業した山上被告の父親も同じ会社で働いていました。

しかし、そんな暮らしは長くは続きませんでした。

父親が仕事で悩みを抱えるようになり、酒に溺れる生活を送り始めたのです。アルコール依存症に加え、うつ病を発症。

そして1984年。父親は自ら命を断ちました。

大きく狂い始めた一家の歯車

妊娠中の母親と5歳の兄、そして、4歳の山上被告。一家の歯車はここから大きく狂い始めます。

父親の死後、一家は奈良県の祖父の家に移り住みました。

難病で入退院を繰り返していた兄。小学2年のころには持病が原因で右目を失明してしまいます。

母親は兄に付きっきりとなり、山上被告と妹の面倒は祖父が見るようになりました。

夫の自殺、長男の難病と失明…思い悩んでいた母親

当時、母親は何を思っていたのか。私たちは初公判を目前に控えた去年9月以降、母親と複数回にわたり面会。母親は当初、雑談に応じるだけでしたが、徐々に重い口を開き始めました。

(母)「(長男は)命に関わる病気だったから。右目の失明とか、頭の開頭手術とかね。そういうのをしているからそりゃすごくつらかったですよ。なぜ私の子どもを…って。自分の生き方がどうなんだろうって」

夫の自殺。そして、長男の難病と失明。母親は連続して起こる不幸に思い悩んでいたといいます。

そんな時、突然、母親のもとを若い女性が訪ねてきました。

(女性)「ご家族の方、お元気ですか?」
(母)「実は…長男がね…」
(女性)「心配ですね。それは、家系図を見たほうがいいですね」
   
女性は旧統一教会の勧誘員でしたがそのことを母親には隠していたのです。

「統一教会と明かさない状態での伝道活動を組織的に…」

旧統一教会の被害者救済を長年行ってきた紀藤正樹弁護士は、身分を隠しての勧誘活動は典型的な手法だと話します。

(紀藤正樹弁護士)「統一教会ってことを明かさない状態での伝道活動を、統一教会が組織的に全国的に行っていて。本人はむしろ社会勉強しているというような認識。自己啓発的なことを学んでいるという認識でしかない状態ですよね」

勧誘員は母親に3日以内に施設へ来るようにと促し、母親は言われるがまま足を運びました。

(母)「長男は病気で、夫も自殺して」
(勧誘員)「問題の原因わかりますか?人類の堕落です」

旧統一教会では、「人類の堕落」によってさまざまな不幸が起こると説かれています。そして、創立者の文鮮明氏がメシア=つまり人類を堕落から救い出す救世主であると信じられているのです。

約半年で5000万円を献金…原資は「山上被告の父親の保険金」

母親は1991年に旧統一教会へ入信しました。私たちの取材に、当時の心境をこう明かしています。

(母)「夫婦の不倫があったり、犯罪があったり、戦争があったり、色々するのは、神様から堕落した故にこうなってきたということを聞いて納得した。なぜ堕落したのかを、じゃあどうしたらいいのかを、解き明かしてくださったのが、メシア(=救世主)なんです」

入信すると、畳み掛けるように…。

(勧誘員)「お母さん、早速ですが2000万円献金しませんか」
(母)「わかりました」

母親はその翌年にも3000万円を献金。約半年の間に計5000万円が母親の手から旧統一教会にわたったのです。

その原資は、自殺した山上被告の父親の保険金でした。

専門家「財産を持つこと自体が家庭の不幸を生むと思い込まされていく」

母親はなぜ短期間にこれほど高額な献金をしたのか。背景には旧統一教会の教義があるといいます。

(紀藤正樹弁護士)「財産を持っていることが罪と教えられるわけですので。だんだん自分が財産を持っていること自体が家庭の不幸を生んでいるんじゃないかと思い込まされていく」

紀藤弁護士によると、旧統一教会は1980年代から「不幸を解消するためには献金が必要」などと不安をあおり、高額な壺や多宝塔を売ったり献金を促したりする「霊感商法」を、全国的に広げていたということです。

経済的に破綻する信者も多くいて社会問題化していきました。

信仰にのめり込んでいく、母親。当時、母親と同じ部屋で寝ていた山上被告の妹は法廷で母親の異変についてこう証言しています。

(妹)「母は教祖の写真を飾り、壺や多宝塔を置きだしました。統一教会と長男のことで頭がいっぱいで私には無関心でした。私が40度の熱を出したときも統一教会の活動に行っていました」

「家族のために」と献金を続ける母親。しかし、皮肉な事にその献金によって家族は崩壊していきます。

ストッパーになっていた祖父が急死 母親の信仰はエスカレート

当時同居していた山上被告の祖父は入信と献金に猛烈に反対していました。

しかし、祖父は山上被告が高校3年のときに急死。ストッパーになっていた祖父の死を境に、母親の信仰はさらにエスカレートしていったのです。

住んでいた家や、会社の事務所までもを売却し、手にした4000万円を全て献金にあてました。

祖父に代わって母親の献金を止めようとしていたのが、難病の末に右目を失明した山上被告の兄でした。次第に母親に対して、手をあげるようになっていきます。

(兄)「まだこんなことやってんの?お前の献金のせいで大学に行かれへん!」
(山上被告)「兄ちゃんやめて!」

山上家は完全に崩壊してしまいました。

紀藤弁護士は山上被告が育った環境を「虐待にあたる」と指摘しています。

(紀藤正樹弁護士)「これだけの家族破壊が起きているわけですから、その状態を子どもから見たときには、それは宗教的虐待と言ってもいいと思うんですね。本来は児童相談所が保護すべき事案だったものを、当時それを保護せずに児童虐待とも認識せずに、家庭崩壊を放置してしまった」

献金による経済苦で大学受験を断念 母からは何度も「金の無心」

奈良県で有数の進学校に通っていた山上被告でしたが、母親の献金による経済苦を理由に大学受験を断念。卒業後は海上自衛隊に入隊しました。

何度も、何度も、母親から金の無心がありました。

山上被告は兄や妹の助けになるならと当初は応じていましたが、献金を続ける母親の姿に、自身が「旧統一教会に間接的に利用されている」と感じ始めます。

やがて、連絡を無視するようになりました。

母親がついに自己破産 責任感じた山上被告が取った行動は

こうした中、2002年、母親はついに自己破産。妹のお年玉などを貯めていた銀行口座にも手を付けていて、残高はほとんどなかったといいます。
 
自分が金の無心を断ったからではないかと責任を感じ追い詰められいく山上被告。あることを思いつきます。

(山上被告)「自分も父のように自殺して、生命保険のお金を残せばいい。役割を果たせば、それでいい」

2005年ごろ、自らの命と引き換えに家族に保険金を残そうと服毒自殺を図ったのです。自殺は未遂に終わりましたが、山上被告は自衛隊からの除隊を余儀なくされます。

ですが、それをよそに母親は…

(弁護士)「そのときあなたはどこにいましたか?」
(母)「旧統一教会の修練会のために韓国にいました」
(弁護士)「修練会を打ち切って帰国しましたか?」
(母)「してないです。帰るな帰るなという声が聞こえてきたので。帰らないほうがいいかなと思って」
(弁護士)「(山上被告に)なぜ自殺しようとしたか聞きましたか?」
(母)「聞かなかったと思う」

その後、旧統一教会からの返金 明るい兆し…しかし

(山上被告の伯父)「あいつの自殺未遂は、教団のせいでしょう!」

この自殺未遂のあと、弁護士でもある山上被告の伯父が旧統一教会に返金を要求。

総額で1億円以上を献金していた山上被告の母親に対しては、その半額にあたる5000万円ほどが返金されました。

返金の一部は、山上被告の手にも。一人暮らしを始め人生を立て直そうと様々な資格を取得。ようやく、明るい兆しが見え始めました。

ところが、2015年、兄が自殺したのです。

長年にわたり母親の信仰と献金に苦悩していた兄は、自殺した父親と同じアルコール依存症になっていました。

山上被告は兄が自殺した当時の心境について、「助けてあげられなかった」「ショックだった」などと裁判の中で振り返っています。

「私が神様にお金を捧げ続けてきたから、お兄ちゃんは天国で幸せに」

人生に絶望した山上被告。生命保険の受取人を妹にして再び自殺を図ろうと考えていたといいます。

そんな折、母親は山上被告に電話でこんなことを告げました。

(母)「お兄ちゃんが生前に苦しんでいたのは、私が神様に捧げたお金が返ってきてしまったからなの。でもね徹也、私が神様にお金を捧げ続けてきたからこそ、お兄ちゃんは天国で幸せに暮らしているの」
(山上被告)「いい加減にしろ!お前が死んだらいい!」

裁判で山上被告は…

(山上被告)「ハッピーエンドじゃないですが、母が『これでいいんだ』というようなことを思っているのが感じられて」
(弁護士)「旧統一教会に今まで感じたことのない激しい怒りがありましたか?」
(山上被告)「そうです」

教団幹部を襲撃するために自ら「銃」を作り始める

兄が自殺をしてもなお旧統一教会への信仰をやめない母親。教団に対して、強く、深く、怒りを覚えました。

母を変えてしまった旧統一教会に復讐するため、山上被告は韓鶴子総裁をはじめとする教団幹部への襲撃を決意します。

【後編記事へ続く】

(2026年1月28日放送 MBSテレビ「今田・橋下とニュースショー ガチの門!!~ニッポン、このままで大丈夫なのかSP~」より)