「検察はもっと戦わなければいけなかった」…「内田梨瑚」被告に「懲役27年」判決確定の波紋 裁判員は遺族に「申し訳ない…」
7月6日、旭川女子高生殺人事件で懲役27年の判決が下された内田梨瑚被告(32)の控訴期限を迎えた。結局、弁護側も検察側も控訴せず、内田被告の刑は確定。だが、ネット上では改めて「懲役27年では短すぎる」という声が上がっている。
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そもそも事件は2024年4月18日夜、内田被告らが北海道留萌市の当時17歳の女子高生を呼び出して監禁、車のトランクに乗せて連れ回し、殴る蹴るなどの暴行を加えた。翌日未明、旭川市の神居古潭(かむいこたん)にある神居大橋で、女子高生の服を全て脱がせた上で土下座をさせ、欄干に座らせて動画を撮影、「落ちろ」「死ねや」などと言って川に落下させて殺害したというものだ。犯行に至ったきっかけは、女子高生が内田被告の写真を無断でSNSにアップした、たったそれだけのことだった。社会部デスクは言う。

「公判で内田被告は『橋から落ちたかどうかは知らない。置いてきただけ』と殺人容疑を否認し続けたことで、裁判の行方は殺人の実行があったかどうかに絞られました。そんな中、内田被告と行動を共にしていた“舎弟”の小西優花受刑者(21)が『梨瑚さんが女子高生の肩甲骨を両手で押した』と証言したことで、内田被告は自分の罪を認めていないと非難されました。ちなみに、小西受刑者は事件当時19歳で、一度は旭川家庭裁判所に送致されたものの、家裁がいわゆる逆送を決定。旭川地裁に起訴され、懲役23年が言い渡されると控訴することもなく、すでに刑が確定していました」
旭川地裁は6月22日、殺人、監禁、不同意わいせつ致死の罪に問われていた内田被告に、検察の求刑どおり懲役27年の判決を言い渡した。
「弁護側は殺人罪と不同意わいせつ致死罪を否認していましたが、旭川地裁は全ての罪を認定しました。さらに『(女子高生が)自ら落ちても誤って落ちたとしても、被告の行為は殺害の実行行為と認められる』としたのです」(同前)
残虐性を見落とした
判決が言い渡された日、法廷内で「死刑やろうがボケ」などと言って暴れた男が逮捕されるというアクシデントもあった。
「男は『求刑に納得がいかず、抗議するために法廷に入った』と供述しているようです。だからといって法廷に乱入することは決して許されることではありませんが、ネット上でも懲役27年は軽すぎるという声が溢れました」(社会部デスク)
そう考えるのは素人だけではなかった。長年、犯罪被害者の支援に携わる高橋正人弁護士は、自身のブログにこう書き込んだ。
《懲役27年の判決はあまりにも「現在」の国民の規範意識からかけ離れている!》
やはり判決は軽いのだろうか。高橋弁護士に聞いた。
「これまでの裁判例に従えば、検察も最大限努力したと言えるかもしれません。殺人と不同意わいせつ致死、さらに監禁の有期刑を足し算すると、確かに有期刑の範囲内に収めるという限定であれば、最大27年になります。しかし、今回のような犯行の態様はこれまでなかったほど悪質だということを見落としています」(高橋弁護士)
犯行の態様ですか?
「平たく言えば殺し方です。動機は写真をSNSに使われたというだけで、服を脱がせて土下座させ、その動画を撮るなど、被害者の尊厳を踏みにじった上で殺害に及んでいるわけです。犯行の残虐性を見落とし、量刑評価を誤ったと言わざるを得ません。また、被告は女子高生を呼び出すにあたり、示談金名目で50万円を要求したと検察側の冒頭陳述にあります。強盗殺人の疑いも考えてもよかったかもしれません」(同前)
強盗殺人ともなれば、無期または死刑である。
裁判員の謝罪
「これだけひどい事件にもかかわらず、検察も裁判官も過去の判例にこだわるあまり想像力が働かなかった。想像力があったのは裁判員だけだったかもしれません」(高橋弁護士)
今回、判決後の会見で、裁判員の1人は「被害者の父親から『娘の望む判決を出してください』という切実な訴えがあったが、(その訴えとは)差がある内容で申し訳ない」と胸の内を明かしていた。懲役27年では軽いと言わんばかりだ。
「評議の内容は公開されませんからわかりませんが、無期懲役を主張した裁判員もいたはずです。それが今の国民の規範意識と言っていいでしょう」(同前)
なぜその主張は通らなかったのか。
「裁判員制度では裁判員6名と裁判官3名が合議して過半数、つまり9名うち5名以上の賛成があった判決が採用されるわけですが、裁判員5名が賛成しただけでは認められません。5名以上の賛成があったとしても、その中に裁判官が含まれていなければ評決は成立しないのです。ですから、裁判官は誰も賛成しなかった可能性があります」(同前)
かつて行われた裁判員へのアンケート調査では「裁判官が想定している“落としどころ”に導かれている」との回答があったという報道もある。とはいえ、検察が求刑したのは懲役27年。裁判所がそれを上回る判決を下すことなどできるのだろうか。
「もちろんできます。私自身、被害者側の代理人となった交通事故の裁判で、検察の求刑は4年6カ月でしたが、私は5年を主張し、その通りの判決が出たこともあります。それでも、まず検察が妥当な求刑をしなければ裁判員だって主張しにくいでしょう。そのためには検察が戦わなければいけないのです。そもそも検察は今回、共犯の小西受刑者に懲役25年を求刑しました。にもかかわらず、主導した内田被告に対しては2年しか違わない懲役27年を求刑しています。これでは整合性が取れません。せめて無期懲役を求刑すべきだったと思います。検察は前例にこだわるあまり、新類型犯罪の量刑基準の確立という好機をみすみす失ったのです」(同前)
デイリー新潮編集部
