「何で奴隷の国から入れるんだ」偏見と人手不足の狭間で…日本にやってきたアフリカ人技能実習生たちの素顔と彼らを取り巻く現実

農業や建設業の人手不足は深刻で、いまや多くの企業が外国人材を活用している。だが特に給料の低い地方においては、その外国人からも不人気職になりつつある。そこで鹿児島県の監理団体が目を付けたのがアフリカだ。
2024年、アフリカ人初の技能実習生がガーナから来日し、宮崎県の左官業者で働いている。さらに、北海道の建設会社が2025年、ガーナとケニアから新たに技能実習生を受け入れた。日本で働くアフリカ人たちの素顔を取材した。
■深刻な人手不足でガーナに着目する地方

鹿児島県大崎町に構える農業法人「高井田アグリ」。日本人の従業員は10人。特定技能・技能実習生の外国人の数はそれを上回る。特定技能は人手不足の分野で2019年から受け入れが可能になった即戦力となる外国人材だ。畑の手入れから収穫まで、いまや外国人の力は欠かせない。
「農業は特にかもね。日本人はやらないですから。まわらない。縮小すればいいけど」(従業員)
国籍はインドネシア、フィリピン、ミャンマー、ネパール。1カ国に集中させないのは、地方なりの理由がある。高井田アグリの加藤ちどり取締役は「ひとつの国になっちゃうと、あの子たちの日本人が知らないネットワークが多分あると思うので、ここの職場いいよ、お金高いよ、となると一気に「私も移動したい」ってなっちゃう。そうしたら一気にいなくなってしまうと、こちらも仕事がまわらなくなってしまう」と実情を明かす。
地方の農業や建設業は、都市部と比べて給料が低く、外国人からも敬遠されつつある。そんな危機感を抱いているのが、鹿児島県で技能実習生と企業の橋渡し役である監理団体を運営する、江田敦郎さんだ。
「ベトナムなどでも建設業といったら、ひとりも集まらないような状態。九州はもともと賃金が東京と200円くらい違うので、そうなると高いほうにいってしまう。(東京は)物価も高いけどその辺があの子たちにはわからない。もう限界、集まらないし無理かなと思って。本当にどこの国探そうかなという」(江田さん、以下同)
技能実習生を円滑に受け入れられるよう、日本はアジアの16カ国と覚書を交わしている。江田さんが目を付けたのはそのいずれでもなく、アフリカ・ガーナだった。
「知り合いがJICA(国際協力機構)でガーナに行っていて。アフリカの技能実習生はまだ来ていないので。コミュニティとかがないから。他の国に比べると失踪も防げるのではというのが一番。他の国(から来た実習生)は横のつながりで、地域の最低賃金だとか全部わかっているわけですから」
現地に送り出し機関を立ち上げ、日本語や文化を教育。ガーナ政府の推薦を得て2024年、オスマンさん(25)がやってきた。アフリカ人技能実習生第1号。受け入れ先は宮崎県の左官業者で、庭造りや家の外装が専門だ。職人は「真面目ですよ。真面目で几帳面。自分たちが方言だから難しいけど、結構、普通にゆっくり喋れば通じる」と評価する。
■月2万ドルを稼ぐガーナ人実習生の素顔と目標

25歳のオスマンさん。ガーナでは大学卒業後、英語教師として働いていた。趣味は暗号資産のトレード。月に2万ドル以上も稼ぐことがあるという。
「(Q.日本で働く必要ないのでは?)いや、1カ所にじっと座っているのが嫌なんです。1カ所に座って全然動かないでいると、間違いなくダメになってしまう。トレーディング以外に何かするのが好きなんです」(オスマンさん、以下同)
左官業での手取りは月およそ13万円〜。家族への仕送りはせず、貯蓄へ。週末は市内の図書館に通う。
「(Q.寂しく感じるときはない?)いやちっとも。私は全然寂しがり屋ではありません。ガーナでも一人暮らしをしていたし。ただ家にいて、ゲームして、トレーディングして、食べて、寝るだけ。もう慣れたよ」
淡々としているオスマンさん。ただ、お金を稼ぐことの先に見据えるものがある。
「(ガーナの)不動産に投資したい。孤児院を建てたいし、ホームレスなど助けが必要な人たちの役に立ちたい。それが私の最優先です」
北海道千歳市の「瀧建設興業」。オスマンさんのことを知り、自分たちもアフリカ人を採用したいと動いた。2025年、ガーナとケニアからあわせて6人の技能実習生を受け入れる。
この会社では、様々な国の人材を積極的に集めている。現在働いているのは、ネパール、スリランカ、タイ、インドネシアなど14カ国の人たちだ。国籍がバラバラなことで日本語が彼らの「公用語」となり、コミュニケーションがスムーズに。日本人社員にとっても多様な文化や価値観に触れられ、メリットは多いという。
「外国人の方が合っているときがある。頭がいい」(日本人社員)
ここに、アフリカ人が加わる。瀧雄一社長は「かつて中国がそうで、ベトナムがそうで、インドネシアが今そうであるように、またいつかインドネシアから切り替わるタイミングが来る。それがアフリカだったらいいなと思っている」「どこまで拒否反応なく付き合えるか。日本人が」と話す。
■ケニア人の採用と“送り出す側”の課題

アフリカ・ケニア。経済成長が著しく、先進国の企業が東アフリカ進出の拠点として注目している国だ。一方で治安には課題があり、政情不安から度々、大きなデモが起きている。
2025年6月、瀧建設の社長は受け入れる3人の技能実習生に会うため現地を訪れた。街の様子を見た瀧社長は「この(建物の)足場を見る限り、香港より立派な足場を組んでいる」と語る。
そして、3人の技能実習生と社長との面接が始まった。
「モリスさんは面接が終わってから勉強始まってるんですか?」
「はい」
「難しいですか?」
「練習と努力を続けているので、そんなことはありません」
「わかりました。うちの会社はたくさんの外国人の方がいるんですけど、東南アジアの子とかペルーもそうですけど、英語を喋れる子が少ないです。仕事のことを何か覚えてこようとかそういうことではなくて、日本語をしっかり勉強、最大限努力して入国して、北海道に来てもらえればと思います」
3人の面接はあわせて1時間ほどで終了した。
ケニアからの人材受け入れには、世界的な海運大手の商船三井も力を入れている。開発途上国のケニアでは若者の数が増える一方、大学を卒業しても就職率は半分以下と雇用不足が深刻だ。
「現状、ケニア人は主に中東に出稼ぎに行っている。中東はかなり働くうえでは条件が厳しい。日本で不足している分野、建設だったり、サービスとか運輸・農業でも活躍しているので、日本をこういったところに食い込めるようにできないかなと」(商船三井・大山幹雄 東アフリカ代表)
この流れに、ケニア政府も大きな期待を寄せている。「日本の企業や人材紹介業者はぜひ私たちと連携し、お互いにとって有益な関係を築いてほしい」(ケニア政府 外務・ディアスポラ省 アイリーン・カラリ担当局長)
しかし、瀧社長は「明らかに(日本に人材を送り出す)環境は整っていない。他の国の子たちは面接のときにちゃんと(日本語を)喋れている子も多い」「心配ではない。そういう風に思ったというだけで。結局来たら何とかはなるので。日本人のアプローチ方法を考える必要はある。それはどの国にもあるので」と話す。
■ケニア人実習生たちの決意と生活

面接した3人のうちのひとり、モリスさん(31)。首都ナイロビの郊外で妻と1歳の息子と暮らしている。共働きでベビーシッターを雇っていて、ケニアでは中流階級だ。
「ここに私のスペースを確保しています。インターネットもある」(自宅を案内するモリスさん)
ケニアには日本語学校がほとんどなく、言葉や文化を学ぶ環境は十分ではない。「カメラ売り場はどこですか?5階です」「お国はどちらですか?」とノートを手に持ち、日本語の練習に励む。
「私はケニアの建設会社で現場監督をしています。日本に行けてとても幸せです。ケニアでこんなチャンスを得ることは難しい」と語るモリスさん。現在の収入は日本円で月4万円ほど。日本ではその何倍もの稼ぎと経験が手に入る。
「ケニアに帰ってきても、十分な貯蓄があれば会社を立ち上げ、身に着けたスキルでケニアに還元することができるでしょう」(モリスさん)
もうひとりの実習生ジョージさん(31)。ナイロビから車で5時間のメルという街で家族と暮らしている。
「ささやかな自宅です」
「(Q.両親は別の部屋?)両親の家はあちらです。私たちメル族のしきたりで、私は両親の家には入れない。(Q.割礼した成人が?)そうです。儀式のあとは入れません」
母・サロメさんに話を聞いた。「(Q.ジョージさんが日本に行くことをどう思う?)大丈夫です。(Q.寂しく感じない?)だからといって私に何ができる?それに彼には仕事が必要です」
ジョージさんは現在無職。妻とは離婚し、2人の娘も妻の元にいる。
日本語の勉強はAIチャットとリモート授業で行う。手探りだが、焦りはない。「(Q.日本語は難しい?)少しだけ。でもなんとかなる。私の目標は自分の経歴になるように日本語を極めることです」。
■広がるヘイトと立ちはだかる「偏見の壁」

2025年9月、オスマンさんの元を訪ねた。「(Q.日本の夏はどう?)とってもとっても暑い。とってもとってもとっても暑い。冬のほうが夏よりもまだましだったんですね」と笑う。
宮崎で左官の仕事を学んで1年、ガーナ人のオスマンさんは現場になじんでいた。「ここがないでしょ。こいつもないでしょ、目地。この分開けなきゃいかん」とやり取りし、ため息をつきつつ笑い合う。職人らは「日本語がちょっとね、まだ…。仕事に関してはちゃんと真面目」「自分が好きな作業とかはもうすごい。休憩とかしないでやったり」と語る。
マイペースに今日も働くオスマンさん。一方、日本ではいま、アフリカからの人材受け入れに反対する声が強まりだしている。きっかけはJICAの「アフリカ・ホームタウン認定」。「日本が移民政策を進めようとしている」といった誤った情報とともに、アフリカへのヘイト発言がSNSを中心に広がっている。
実は、オスマンさんが来たときも、報道を見て非難する人たちがいたという。
「(匿名の電話で)『なんで奴隷の国から黒人入れるんだ』『覚せい剤とか持ち込んだらどうするんだ』という。なんでそういうことを言ってくるのか。外国人がいないと何もできないわけじゃないですか実際」(江田さん)
オスマンさん自身はどう思っているのだろうか。
「それは人間観の話。アフリカ人に可能性を見出す人は受け入れてくれるでしょう。互いにどう連携・協力していくかの問題です」
「アフリカ人は多くの問題を抱えている。信頼の問題もある。もし信頼関係を築けなければ、一緒に働くのは難しいだろう」
2024年末時点で日本で働くアフリカ人技能実習生、1人。特定技能、17人。いまは、まだ──。
1万キロの距離を縮め、人手不足と雇用不足という互いの悩みを埋めあえるのか。受け入れる私たちも、試されている。
「私の好きな日本語は『お疲れ様でした』。『よく働いてくれてありがとう』という言葉。誰かがあなたのために働いたときか、あなたが誰かのために働いたときに使う。相手に『良い仕事をした』と感じさせるねぎらいの言葉。だから好きです」(オスマンさん)
(鹿児島放送制作 テレメンタリー『行き着いてアフリカ』より)
※年齢は取材当時
